井手長官、訪日外客数「楽観できない」-韓、仏の回復遅れに懸念
観光庁長官の井手憲文氏は、5月24日に開催した定例会見で、訪日外客数について「戻ってはきたが、前途は楽観できない」と厳しい見方を示した。
日本政府観光局(JNTO)によると、4月の訪日外客数は震災の反動で11年比153.9%増の78万800人と大きく増加。通年で過去最高の861万人となった2010年と比較しても0.9%減まで回復した。井手氏は「4月単月では何とか10年に近い数字まできた」と評価。しかし、1月から4月の累計では11年比で31.8%増だが、10年比では4.0%減の269万2100人となったことから「1年の3分の1が経過して4.0%減というのは結構痛い」との考えだ。
市場別では、台湾、タイ、中国などの市場で回復が顕著となっており、タイは単月として過去最高。台湾、中国も過去最高に迫る数であるという。一方、訪日外客市場でもっとも大きい韓国は2010年比で19.6%減と2ケタ減、フランスも16.9%減の1万4500人となり、放射能汚染や大地震への不安、円高などの影響で依然として回復が遅れている。
こうしたなか、観光庁では5月3日、国土交通大臣政務官の室井邦彦氏がソウルに訪問し、福島への渡航自粛制限の見直しや、ソウル/茨城便、福島便再開など、訪日韓国人旅行者数の回復に向けた働きかけを実施するなど、韓国に対する働きかけを実施。また、6月以降には訪日の主要市場でトラベルマートへの参加やキャラバンを実施し、東北と北関東を重点においたプロモーションも展開する計画だ。
さらに、JNTOウェブサイトでは地図を活用し、日本の主要都市の福島第一原発からの距離と放射線量を掲載。福島県内のいわきや会津の放射線量も距離とともに説明することで、外国人によりわかりやすい形で安全性を訴える考え。ニューヨークやパリ、ベルリン、シンガポール、香港、北京、台北、ソウルの放射線量との比較も実施しており、今後も引き続き数値を日々アップデートしていく考えだ。