WTTC、その意義と今後の課題-旅行業界の変革にむけて
4月16日から19日にかけて、仙台と東京で「第12回WTTCグローバルサミット」が開催された。主催者は世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)で、日本の復興やアジア市場の展望、政治経済など外部環境、航空産業、多様化する消費者ニーズ、環境問題などについて議論された。トラベルビジョンでは今後、これらの議論について複数回にわたって記事を掲載する予定だが、そもそもサミットにどのようなねらいが込められていたのか、どのような議論がなされ何が課題として見えたのかなどについて、サミットの実行委員長を務めたジェイティービー(JTB)代表取締役社長の田川博己氏の会見内容などから伝える。
■WTTCとは
世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)は1990年に設立された非営利団体で、旅行会社や航空会社、ホテルなど世界の主要な観光関連企業約100社の経営者層がメンバーに名を連ねており、日本ではJTBの田川氏と東日本旅客鉄道取締役会長の清野智氏がメンバーとなっている。
WTTCの活動方針は、「旅をする自由(Freedom to Travel)」「成長のための政策(Policies for Growth)」「明日へのツーリズム(Tourism for Tomorrow)」の3点の実現。
「自由」では、一般市民が国内、海外、ビジネス、レジャーを問わず、安全かつ効率的に旅行をできる権利と能力を広くめざし、「政策」では競争的な経営環境を通じて旅行産業の成長を実現するために各国の政府に働きかけ、「明日へのツーリズム」では持続可能な成長のため、社会や環境への責任を果たすことをめざしている。
■第12回サミットの概要
今回のサミットのテーマは、仙台会場が「日本の復興とアジアの展望」、東京会場が「波乱の時代のダイナミックな産業を率いて」。実行委員長としてサミット誘致に取り組んだJTBの田川氏は、2年前の北京大会で成長著しい中国市場の隆盛を目の当たりにし、2003年からビジット・ジャパン・キャンペーンを続けてきながら「正直にいってなかなか伸びて来なかった」中で、震災復興を含めて、日本の旅行産業発展の「きっかけ」をつくりたいという思いがあったという。
会場には世界53ヶ国から仙台で約700名、東京で約1200名が集まり、合計9つのセッションで議論を重ねた。各セッションにはJTB田川氏や日本航空(JL)の大西賢氏、全日空(NH)の伊東信一郎氏といった日本の観光業界のトップが登壇したほか、海外からも観光担当の閣僚や、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)などの持株会社であるIAG、キャセイパシフィック航空(CX)、スターウッド・ホテル&リゾート・ワールドワイド、ヒルトン・ワールドワイド、シルバーシー・クルーズ、TUIなどの経営者が来日し議論に加わった。
また、議論の合間には建築家の安藤忠雄氏やトヨタ自動車取締役会長の張富士夫氏らが講演したほか、17日の開会式には野田佳彦首相も参加している。