井手長官、ビザ緩和など訪日拡大に意欲-海外旅行振興も

  • 2012年4月22日

観光庁長官の井手憲文氏  観光庁長官の井手憲文氏は、4月20日に開催した就任後初の記者会見で、インバウンド対応の強化、観光産業の振興、観光業界内での連携強化の3点に取り組むことで、観光立国推進基本計画の実現をめざす考えを示した。井手氏は、「日本経済は中期的に冷え込んで停滞気味だが、観光分野は頑張れば伸びていく分野」とし、「『坂の上の雲』をめざし、観光分野の成長のために力を尽くしたい」と抱負を語った。

 井手氏は「東日本大震災からの立ち直りは道半ばと感じている」と述べ「(観光振興には)万能薬はない。いろいろな手段を組み合わせ、着実にやって行きたい」との考えだ。インバウンド対応としては、ビザの緩和について、外務省など関係省庁と連携し取り組んでいく考え。現在検討中の東北の被災3県での中国個人観光客に対する数次ビザ発給については、関係各所と調整の上、今夏から発給を開始する計画だ。

 また、海外メディアの招聘や海外旅行会社との連携強化を引き続き実施。ターゲット国に対し、需要ごとにセグメントを分けて個々にきめ細かい対応を行なっていく。特に回復が遅い韓国市場での対応を強化していく考えだ。

 さらに、井手氏は「観光産業全体を強くしていく視点が絶対に欠かせない」と、観光産業を強化していく考えを示した。そのためには観光庁をはじめ観光産業の組織力の強化が重要であり、「今まで以上にノウハウや知識を組織の中に貯めていく努力が必要」という。観光産業内での役割分担と連携も必要との考えで、たとえば観光庁と日本政府観光局(JNTO)でも、観光庁は企画を担当し、JNTOは海外事務所を通じた情報発信など実務的な分野を担当するなど、役割を分担して連携していく方針を示した。


▽アウトバンドへの取り組み継続、旅行産業振興へ

 井手氏は「インバウンドが観光庁の行政としてプライオリティが高いことは間違いはない」としながらも、貿易の振興や2wayツーリズムの観点からアウトバウンドに対する取り組みも続けていく考えを示した。「旅行業は売上、利益のかなりの部分をアウトバウンドで稼いでいる」とし、旅行業の振興のためにも取り組んでいく必要があると指摘する。4月に開催される旅行見本市・商談会「パウワウ2012」の参加を旅行会社に呼びかけており、審議官を現地に派遣し、現地旅行関係団体との階段も実施。アメリカへの海外旅行の促進をはかる考えだ。

 一方、井手氏は燃油サーチャージの値上がりに対し、「向かい風の状況」と懸念をみせた。ただし、航空運賃については「ここ20年安くなってきている。LCCも参入し、安価な運賃で旅行したいという層が確実に生まれている」と述べ、「アウトバウンドの手段としての航空についてはあまり心配していない」との考えだ。

 また、井手氏は若年層の旅行控えにも懸念を示した。旅行控えは若年層の雇用や正社員率の減少など、収入面の問題もあるとしながらも、「観光庁として、外国に旅行して新しいものを色々と見つけられる喜びを、啓蒙していく必要があるのでは」と意欲を示した。