インタビュー:英国政観ディレクター キース・ビーチャム氏

-オリンピックに向けて、取り組みの現状はどのようなものでしょうか

ビーチャム VBはオリンピックそのもののプロモーションをしているわけではない。オリンピックを活用して、英国を諸外国に披露しようとしている。VBにとってオリンピックは、英国を照らし出すスポットライトのようなものだ。

 このような中で、旅行会社とは中長期的な視座で取り組みをしなければならないし、すでに始めてもいる。オリンピック期間中の訪英はむしろ難しいはずで、それよりも前、そして後に送客していただきたい。「GREAT」キャンペーンは4年という期間を設定している。この中で、アウトドア、遺産、文化などのテーマを打ち出して、旅行会社とともに需要喚起に取り組んでいきたい。

 すでに地下鉄駅や電車のラッピング広告で「GREAT」キャンペーンが消費者の目に触れているが、ミッション団の来日はキャンペーンの旅行業界向けの活動といえる。


-各国が観光局の予算削減を進める傾向が見られます

ビーチャム 日本は他国に比べて、観光局の事務所を設置するために必要なコストが非常に高い。他の多くの観光局と同様、我々も組織的なコスト削減のためにオフィスを移転しスタッフ数を減らした。これは日本に限った話ではなく、政府からの予算が削減される中での世界的な調整の一環だ。例えばフランスは、数百万人が毎年訪英しているが、現地には2名しか置いていない。

 これを終えた今、我々がめざすのは消費者向け、業界向けともにマーケティングのために正しく予算を投じ、日本とロンドンのスタッフとともに、我々ができる最高の仕事をすることだ。加えて、日本での旅行業界担当としてB2B&パートナーシップス・マネージャー(森井英二氏)を起用している。

 いずれにしても日本は重要な市場であり、しかも最初に触れた通りその重要度が増している。現時点で日本事務所に追加的な変更を実施する考えは一切ない。


-旅行業界へのメッセージをお聞かせください

VBが都内で展開した「GREAT」キャンペーンの様子

ビーチャム 鍵となるのは、「選択肢は消費者にある」ということではないか。日本の旅行業界は依然として消費者に対して影響力を保持しているが、商品に新しいアイディアを導入し革新していくことは困難と捉えているように思う。革新がなければ会社組織は時代遅れになっていく。

 2012年版の各社のパンフレットと、例えば2005年のパンフレットを比べてみても、90%はまったく変わっていない。そして各社が競っているのは質や経験ではなく、価格だ。消費者はおもしろいアイディアを欲しているはずだ。現在の日本の旅行業界で、オンライン専業の旅行会社はさほど大きくないかもしれないが、旅行業界がきちんと対応できなければ、今後はオンライン専業が台頭していくだろう。

 デスティネーション側の立場として、日本の消費者に興味を持っていただけると考える新しいアイディアを市場に提供し、旅行会社の利益に貢献したい。我々は消費者向けのマーケティング活動をおこない、新しいアイディアに対する消費者の理解を深めていく。こうした新しいアイディアを、是非とも商品に組み込んでいっていただきたい。


-ありがとうございました