【総評】需要回復を自信に、12年は復興とLCCがカギ
新年明けましておめでとうございます。今回は、金曜日にメールニュースの配信を開始したばかりですので、アクセスランキングは省略し総評のみ掲載します(金曜日の記事のランキングについてはページの右下にある「ランキング」欄をご参照ください)。2011年は、東日本大震災と津波、原発事故という未曾有の大惨事にみまわれましたが、旅行需要は海外旅行を筆頭に国内、訪日ともに予想を大幅に上回る回復を示しました。
2011年の始めの総評を読み返してみると、2010年に出国者数が2006年以来のプラス成長となったことに触れた上で、「2011年も余程のことがなければ昨年並み、あるいはさらなる回復が期待できそう」と書いていました。震災という「余程のこと」があったにもかかわらず、そして諸外国での政情不安や災害などの外部要因に左右されやすいはずの日本市場であるにもかかわらず、通年でプラス成長を達成する見通しであることは、日本市場の底堅さと潜在的な成長余力に自信を持てる事実でしょう。
2012年の出国者数も、財団法人日本交通公社(JTBF)によると2011年比で2.7%増の1740万人となる見込みです。もちろん現実の旅行需要が予測通りに推移しない可能性はありますし、不謹慎かもしれませんが何かしらの大災害がまた発生しないとも限りません。しかし、2011年3月11日以降の日々と通年でのプラス成長のギャップを思えば、恐れずに自信を持って取り組んでいって良いように思われます。
また、2011年の年間アクセスランキングでも1位になりましたが、2012年は「LCC」に関する動きもさらに活発になりそうです。去年の今頃はまだ、「LCCと旅行会社は共存しにくい」という認識が一般的であったと記憶していますが、ピーチ・アビエーション(MM)、エアアジア・ジャパン、ジェットスター・ジャパンという日系LCC3社が相次いで設立され、2012年内の就航をめざす中で、業界内の風向きもずいぶん変わってきました。
3社の旅行会社に対する意識は多少温度差があるようですが、大なり小なり旅行会社に頼る部分は出てくると思われます。であるとすれば、これから実際の就航に向けて旅行会社との間で様々な駆け引きがあるでしょう。旅行会社と日系LCCがどのような関係を構築し得るのか業界内の注目も高いと思われますし、今年も話題が尽きることはなさそうです。
金曜日に掲載した旅行関係各社の社長による年頭所感(リンク)では、来るべき新時代への対応を訴える内容が多くなっていますが、この中でも多くの方が震災復興やLCCに言及されています。震災によるダメージとそこからの復興に伴って変わりつつある日本の社会と、LCCによって様変わりする可能性のある旅行形態。2012年は、こうした事業環境の変化にどう対応していくかがカギになるのでしょう。
また、「備え」も2011年の教訓であったのではないでしょうか。原発事故によって「想定外」という言葉が耳につく機会が増えましたが、あらゆる可能性を想定しようとする努力をした上での想定外か否かの違いは大きなものです。「安心感」は旅行会社がお客様に提供できる最大の価値の一つであり、「安心感」は「備え」から来るものですから、今年はこうした取り組みも活発化する可能性がありそうです。
トラベルビジョンでは今年も、少しでも読者の皆様のお役に立てるよう邁進してまいる所存ですし、当然、震災復興やLCCといった重要なキーワードは特に重点的に取り組んでまいります。また、皆様のアイディアやモチベーションにつながるような情報もこれまで以上にご提供したいと考えていますので、今年も1年間ご愛顧を賜りますようどうぞよろしくお願い申し上げます。(松本)