現地レポート:西オーストラリア州(2)、ニンガルーコーストの陸の観光
世界遺産のニンガルーコーストの陸の観光
ケープレンジ国立公園と拠点のエクスマウス
7月29日に掲載した「西オーストラリア(1)世界遺産登録のニンガルーコースト」では、ニンガルーコーストでジンベエザメと泳ぐツアーを紹介した。ニンガルーコーストが世界遺産に登録されたことは同記事で紹介したが、その範囲は海洋域だけではない。登録を受けたのは、西オーストラリア州北西部の約60万ヘクタールにもおよぶエリアで、ニンガルー海洋公園に一方を面した「ケープレンジ国立公園」なども含まれている。ニンガルーコーストの楽しみは、「ジンベエザメと泳ぐツアー」だけではないのだ。今回は、ニンガルーコーストの玄関口となるエクスマウスの観光と滞在を紹介する。
ワイルドフラワー、ワイルドライフとの出会い
ニンガルーコーストの玄関口となるエクスマウスは、パースから北へおよそ1260キロメートル、南回帰線のそばに位置する。ジンベエザメが訪れる3月下旬から6月下旬は、南半球では秋から冬の季節だが、エクスマウスは比較的温暖で、今回訪れた6月下旬も最高気温が25度と、日中は半袖で過ごせるほどの暖かさである。
また、西オーストラリア州は「ワイルドフラワーステーツ」としても知られており、この地域では6月下旬頃から、ワイルドフラワーをいち早く楽しむことができる。世界遺産に登録されたエリアにある「ケープレンジ国立公園」は、冬の終わりから夏にかけて固有種を含め630種類を越すワイルドフラワーが、岩肌に咲き誇る。6月下旬はパースではまだ冬だがニンガルーコーストでは春到来の時期で、今回訪問した時は既にワイルドフラワーが咲き始めており、赤や黄、紫などで断崖や赤土の大地を彩るワイルドフラワーを楽しむことができた。ワイルドフラワーだけでも十分楽しめるが、この時期であればジンベエザメのツアーとあわせて、「ワイルドフラワー・ハンティング」を組み込むのも良いだろう。
ケープレンジ国立公園で楽しめるのは、ワイルドフラワーの季節だけではない。同公園は地形の隆起によって現れた断崖で、川の浸食で山の斜面が削られて多数の峡谷ができあがり、侵食が進むにつれて堆積した土砂が海岸線の平地を作り上げた。峡谷が点在しているなかに多くの野生動物も生息しており、カンガルーやワラビーなどと遭遇する思わぬ偶然が、旅をさらに楽しいものにしてくれるだろう。ケープレンジ国立公園の入り口はエクスマウスの中心地から約40分で到着するので、独特の地形がつくり上げた大自然の迫力とその営みを、気軽に楽しむことができるのもポイントだ。
夕陽や夜空、大自然の感動を気軽に体験
大自然に溶け込み、その魅力を肌で感じるなら、キャンプに勝るものはない。国立公園内は決められた場所でキャンプをすることも認められており、キャンプサイトはたくさんの人で賑わっている。日本からのツアーの場合、キャンプを組み込むのはなかなか難しいが、国立公園内でのサンセットディナーなら、ホテルに滞在する場合でもキャンプのように自然を満喫できる。世界遺産に登録された国立公園内で、夕陽と星空を眺めながら夕食をいただくシチュエーションは最高だ。
夕陽が沈む頃に海岸付近にディナーがセットされ、薄暗いなか灯されたキャンドルがロマンティック。夕陽が沈むと空一面に敷き詰められたかのような星空に、なんともいえない大きな感動を味わうことができる。前回はジンベエザメと泳ぐツアーをハネムーナー向けの素材としても提案したが、サンセットディナーもその組み合わせとしてぜひすすめたい。サンセットディナーは現地ツアー会社で手配が可能であるが、国立公園での実施は申請ベースとなるため事前の手配が必要だ。
また、西オーストラリア州を訪れたら、インド洋に沈む夕陽を必ず見ておきたい。エクスマウスの中心地から30分ほど車を走らせたところにインド洋を照らす灯台「ブラミング・ヘッド・ライトハウス」があり、そこから眺める夕陽は格別だ。夕陽が沈む頃になるとたくさんの人がこの場所に集り、その美しさに歓声が上がるほどである。
ホテルステイもひとつの楽しみに
エクスマウスの滞在を充実したものするためには、ホテルの存在も大きい。エクスマウス市街には、総客室数350室、ベッド数729があり、バジェットタイプからノボテルのように設備の整ったリゾートまで、さまざまな形態の宿泊施設がある。利用形態に応じて選択することが可能だ。
今回は、ノボテル・ニンガルー・リーフ・エクスマウスに滞在。同ホテルでは宿泊だけではなく、ホテルステイそのものを満喫できる設備が整っている。全ての部屋はマリーナに面しており、各部屋からは遠くに広がる海を一望。客室はとても開放的な空間となっており、テラスでお茶を飲みながらのんびり過ごすこともできる。そのほか、レストランやバー、プールやジムなど、ホテル内で一日過ごしても飽きさせない設備も整っている。今回の滞在でも、朝からジムで体を動かす人やプールで遊ぶ人、ホテルから海に続く道を散歩する人など、それぞれにホテルでの滞在を楽しむ人が多かった。
このほか、エクスマウス・エスケープ・リゾートは、ファミリーでの滞在におすすめしたい。メゾネット式の洗練された内装で3ベッドルームを備えている。テラスにはバーベキューコンロも備わっているので、近くのスーパーマーケットで好みの食材を調達し、調理をするのも楽しいだろう。
なお、エクスマウスへはカンタス航空(QF)が3月30日からパース発着で週3便の運航を開始しており、アクセス利便がよくなった。
ツアー造成のポイント
ジンベエザメと泳ぐツアーの予備日の素材も豊富
エクスマウスからジンベエザメと泳ぐツアーに参加する場合、天候や高波などの海のコンディションでツアーが催行中止になる場合もある。しかし、無料で他の日への振替が可能であるため、予備日を設けるなど余裕のある旅程での催行をすすめたい。その場合、予備日の旅程としてケープレンジ国立公園を基点にエクスマウス周遊を提案したい。
エクスマウスはダイビングをはじめシュノーケリングやシーカヤックなど、マリンアクティビティの拠点としても有名で、素材も豊富に揃っている。しかし、今回世界自然遺産に登録されたことにもわかるように、先述のケープレンジ国立公園など大自然も豊富で海洋域だけでない陸の魅力も体感してもらいたい。トレッキングや絶景ポイントからの眺望観賞など、アクティブ派にものんびり派にも楽しめる要素が大いにある。
また、今回訪れなかったが、ケープレンジ国立公園には複数の白砂のビーチがあり、人気の少ないビーチをのんびりと眺めたり、シュノーケリングを楽しむことが可能だ。国立公園の奥には「ヤーディ・クリーク」という小さな峡谷があり、川の周囲に姿を現すカンガルーやロックワラビーをみるミニボートツアーも催行されている。こうした素材を組み込みながら、西オーストラリアだからこそ楽しめるツアー造成につなげたい。
取材:本誌 福田えつこ