アクセスランキング、1位はANAセ稲岡社長、2位は新卒採用
[総評] 今週のアクセスランキングは、ANAセールス代表取締役社長の稲岡研士氏のインタビューが1位になりました。先週の総評で、全日空(NH)の話題がトップになることが多いと書いたばかりですが、相変わらずの注目度です。
稲岡氏のお話の中で、個人的に最も興味深かったのは、NHが出資したLCC「ピーチ」の商品化についてでした。確かに、ANAセールスはNHの戦略会社であり、NHグループにメリットがあるわけですから不可解ではありません。しかし、稲岡氏の「安価に大量ではなく、企画力に長けた高品質な商品」というご発言とは、一見すると整合性がないように思われます。
こうした疑問に対する稲岡氏のお答えは、「安く売らなければ勝てないという発想では、LCCの商品化は無理」であり、「多少高くても、付加価値をつけて商品化するという考え方」が大事、というものでした。また、「適正価格に見合った付加価値を消費者に理解してもらい、購入してもらう」とも話されました。
以前、エイチ・アイ・エス(HIS)いい旅研究室室長の染谷明彦氏にお話しをお伺いした際も同様のご発言があったことを思い出します。染谷氏の場合は、支払った価格に対する期待値と実際の満足度とのバランスが重要と指摘されていました(リンク)。
これらのお言葉が示すところはおそらく、価値と価格の適正なバランス、つまり真っ当な「value for money」が重要、と理解して良いでしょう。拡大解釈をすると、安売り競争からの脱却をはかる際はどうしても「安さ」の否定に走りがちですが、本当は価値に見合わない「安さ」を否定するべき、とも言えるように思います。
これまでも折にふれて書いていますが、私は日本では「良いものをより安く」が行き過ぎる傾向にあり、「安かろう悪かろう」「安いものにはワケがある」といった言葉が実態を表さなくなっているように思います。例えば洋服もそうですし、あるいは外食でも牛丼が場合によっては1杯250円で食べられる時代です。ですから、稲岡氏、染谷氏のご発言に対しては、このような時代の中で、旅行の「value for money」をどう説得するかが大きな課題であると感じます。
とはいえ、旅行会社の役割を考えれば、進むべき道はお二方のお話になった方向以外はほぼあり得ません。LCCなどからパーツを直接購入するよりも高くなったとしてもそれだけの「価値」がある、つまり「高いものにはワケがある」ことをお客様に納得していただけるよう取り組む必要があるわけです。5位に約款見直しの検討会の記事が入りましたが、できることであればこのような場を通して業界全体で取り組めると、効果もより期待できるのではないかと思います。
ただ、気を付けなければならないのは、「価値」が業界側の押し売りであってはならないということです。旅行会社が提供可能な価値は「安心感」「知識」「経験」など様々ですが、あくまでお客様にきちんとご満足いただける価値を基準としなければなりません。
なお、今週の2位には、旅行会社の新卒採用状況に関する記事が入りました。次世代の旅行業を担う彼らをどう育てるかも、旅行会社が提供する価値と関わってきます。稲岡氏は、人事異動の期間を長くして経験を蓄積させることも検討すると話されていましたが、是非とも旅行業界全体でこうした議論が活発化して欲しいと願っています。(松本)
▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2011年7月第5週、8月第1週:7月30日0時~8月5日18時)
第1位
◆トップインタビュー:ANAセールス代表取締役社長の稲岡研士氏(11/08/01)
第2位
◆旅行業界の12年度新卒採用は後倒しの傾向-採用なし、今後採用活動の企業も(11/08/02)
第3位
◆スターアライアンス、エア・インディアの加盟を保留-AIが条件満たさず(11/08/02)
第4位
◆日本航空、第1四半期は純利益127億円、顧客単価が2桁増(11/08/03)
第5位
◆約款見直し検討会第1回、取消料見直しの妥当性求める意見も(11/07/31)
第6位
◆タイ国際航空、11月就航の関空夕方便の限定運賃、3万円から(11/08/01)
第7位
◆UAとR&C、新パッケージ「ユナイテッドホリディ」-下期目標1万名(11/08/02)
第8位
◆チャイナエアライン、ゼロコミッションに-10月1日発券分から(11/07/30)
第9位
◆ANAグループ、第1四半期は81億円の営業損失-通期は700億円の黒字を予想(11/07/31)
第10位
◆エアアジア、関空就航へ、日本2路線目(11/08/05)