チーム・カナダと各州観光局の方針、ランデブー・カナダ取材より

  • 2011年6月29日
チーム・カナダの説明会は、各国から大きな注目を集めた

 カナダ最大のトラベルマート「ランデブー・カナダ(RVC)2011」が5月16日から3日間、ケベック州のケベックシティで開催された。前日に開かれた15日の記者会見では、日本のカナダ観光局(CTC)を中心に在日各州観光局、ホールセーラー、日本旅行業協会(JATA)など業界関係諸機関が一体となって取り組む「チーム・カナダ」が新たなマーケティング・モデルとして注目を集めた。

 CTCおよびチーム・カナダの今後の方針としては、東日本大震災の影響で当初の目標数値30万人は修正を余儀なくされるものの、オーロラ観光やスキー、街の滞在といった冬期の販売、大阪を中心とする西日本地域への販促強化、さらに通常のパッケージ商品に1日、2日を追加し、10日間から2週間の長期商品の造成に取り組んでいくことを掲げている。

 この「チーム・カナダ」の目標をベースに、各州観光局ではさらに独自に各州のピーアールや素材提供もしていく。それぞれの方針をRVC会場で聞いた。


▽関連記事
ランデブー・カナダ2011開幕、チーム・カナダで震災リカバリーへ


BC州観光局の菊地友子氏

●ブリティッシュ・コロンビア州

ブリティッシュ・コロンビア(BC)州観光局
日本地区マネージャー
菊地友子氏

「山ガール」をターゲットに
自然と街を楽しむライフスタイルを提案

 BC州観光局では20代から40代の女性層を中心とした「山ガール」をターゲットに据え、「世界でもっとも暮らしやすい街」として1位に選ばれたバンクーバーを拠点とした町と自然を楽しむライフスタイル「City by Nature」を提案していく。

 同局サイト内に「気軽にGo Go Vancouver」のコーナーを設け、バンクーバーで山に触れたことで登山の魅力に目覚めたという、イラストレーターの鈴木みき氏のイラストやエッセイ、体験談を紹介しながら、「バンクーバーをはじめ、ビクトリア、ウィスラー、カナディアン・ロッキーなどへ広げていきたい」(菊池氏)。山ガール向け商品は今年から、エイチ・アイ・エス(HIS)やism(イズム)、毎日新聞旅行などが造成しており、BC州観光局では今後3年間、「山ガール」向けのピーアールをしていく予定だ。

 このほか、震災後もキャンセルが少なかったという教育旅行や、都市の魅力や整備されたインフラを押し出し、ミーティング、インセンティブの誘致もはかっていく。


アルバータ州観光公社の小西美砂江氏

●アルバータ州

アルバータ州観光公社
ディレクター
小西美砂江氏

カルガリー便通年就航めざし
スキーや癒しを軸に冬季販売を強化

 アルバータ州観光公社ではエア・カナダ(AC)とタイアップし、冬のカナディアン・ロッキーのキャンペーンを実施。テレビコマーシャルでスキーをはじめ、大自然の中でのヒーリング、アクティビティ、キャニオン・ウォークといった冬ならではの魅力を発信するとともに、送客実績を上げていくことで、現在夏期のみ運航するAC成田/カルガリー便の通年就航への足がかりとしたい考えだ。

 また2012年は、カルガリーで開催される同州最大のカウボーイ・フェスティバル「カルガリー・スタンピード」が100周年を迎える。同州観光公社ではこれを2012年の目玉イベントと位置づけ、今年から「カルガリー」と「スタンピード」の露出をはかっていく。

 具体的にはメディアの取材や、ブロガー数人によるレポート、コラムを同観光局サイト内で展開。ツアー造成も促進し、「来年に向けた話題づくりをしていきたい」(小西氏)としている。


オンタリオ州観光局の橋本厚氏

●オンタリオ州

オンタリオ州観光局 日本事務所
旅行業界担当ディレクター
橋本厚氏

トロントのシティライフを中心に
冬のキャンペーンを展開

 夏場以降は消費者が戻ってくるのでは、という見方が大勢を占めるなか、オンタリオ州観光局では、秋の紅葉シーズンを“勝負どころ”として位置づけている。ツアー商品造成を通して、認知度と人気の高いメープル街道を押し出し、まとまった送客数を確保したい考え。

 また今年もACとの「冬のトロントキャンペーン」を展開し、多民族都市トロントでの滞在をアピールしていく。「ナイアガラ観光やメープル街道観光など、トロントは交通の拠点とはなるが、実際の平均宿泊日数は1泊程度。都市の魅力は意外と知られていないので、まずは平均宿泊数2泊をめざしていきたい」(橋本氏)。

 またロングステイ・デスティネーションとしてオタワを提案していく。大使館があり、また首都としてコンドミニアムや長期滞在型のホテルが多いという同市のインフラや治安の良さ、英仏両方の文化が体験できるというカナダらしさがポイントとなる。


ユーコン・ツーリズム&カルチャーのマーガレット・グッドウィン氏

●ユーコン準州

ユーコン・ツーリズム&カルチャー
アジア・パシフィック・マーケティングオフィサー
マーガレット・グッドウィン氏

ひと足早い紅葉シーズンをピーアール
冬の目玉・オーロラ観光には一層尽力

 昨年ユーコン準州を訪れた日本人は約1200人。ほとんどが冬季のオーロラ観賞ツアー客だという。「人数としては小さいが、認知度は年々向上しており、今年の冬も期待できる」(グッドウィン氏)。

 一方、夏から秋にかけては同州のクルアン国立公園を訪れるハイキングや、内陸部のフィヨルドやゴールドラッシュの街を訪ねる列車ツアー「ホワイト・パス&ユーコン・ルート」を、旅行会社に紹介していく。特にクルアン国立公園は世界自然遺産に登録されている北米最大の国立公園で、カナダ最高峰のローガン山や世界最大の氷河をセスナで臨むといった、カナダらしい雄大な光景が楽しめる。

 また同州の紅葉シーズンは8月末から9月中旬と、東部のメープル街道とは時期がずれており、植生も異なっていることから、リピーターやSITをターゲットにアピールしていきたい考え。今秋はアルパインツアーサービス、ismなどがハイキングツアーを催行する予定だ。


ツーリズムPEIのロバート・ファーガソン氏

●プリンス・エドワード島

ツーリズムPEI
アドバタイジング&パブリシティ・マネージャー
ロバート・ファーガソン氏

農業・漁業ツアーを中心に
体験型素材をアピール

 プリンス・エドワード島(PEI)は2008年の赤毛のアン100周年以来、順調に日本人客数をのばしてきたが、昨年は減少。そこで2011年は主力の『赤毛のアン』に加え、PEIの主要産業である農業・漁業を観光に取り入れ、島の味覚やライフスタイルを体験する「PEIフレーバーズ・クリナリー・トレイル」もピーアールしていく。

 「PEIフレーバーズ・クリナリー・トレイル」は漁船に同乗してのロブスター漁体験やチーズ工房、ワイナリー訪問とテイスティング、農場でのジャム作りなどが体験できる、現地発着型のプログラム。5月から12月中旬頃まで実施されている。PEIを訪れる約30%のFITの取り込みをねらう。

 「自然の豊かな島で土地の味覚を存分に味わいながら、日々の生活の中で疲弊した心を癒してほしい」とファーガソン氏は語る。

取材協力:カナダ観光局
取材:西尾知子