ハワイ・マーケットトレンド:スポーツ市場への取り組み(後編)

  • 2011年5月26日

~ポスト“ラン”のスポーツツアーの可能性~

ポスト“ラン”のスポーツツアーの可能性
~ハワイ・スポーツ市場への取り組み(後編)~

ハワイでは爽快なサイクリングが楽しめる

 ハワイ州観光局(HTJ)は、今年のプロモーションテーマのひとつにスポーツを挙げ、主に4つのスポーツ、「ラン」「バイク」「ウォーク」「ゴルフ」にスポットをあてている。スポーツを目的とするSITとして、圧倒的な人気とシェアを誇るマラソンについては前編でお伝えした通り。後編では、ラン以外のスポーツについて、各社の取り組みを通して、今後の可能性を探ってみたい。

垣根の低いサイクリング(バイク)・イベント

ジャルパックのホノルルセンチュ
リーライド2010のパンフレット

 ハワイでサイクリング(バイク)のイベントといえば、やはりホノルルセンチュリーライドだ。自転車ブームがじわじわと広がるなか、都心では自転車通勤者のためのバイクステーションが話題になるなど、サイクリストは着実に増えている。

 「上期最大のスポーツイベントはセンチュリーライド」(ジャルパック海外商品企画第1部ハワイ・ミクロネシアグループのアシスタントマネージャーの若林崇浩氏)というジャルパックでは、マラソン同様きめ細かなサービスを付加した商品を造成している。50、60代の男性富裕層が多いというマーケットのなかで、応援の女性も参加しやすいよう、ボランティアコースを用意した。

初心者でも気軽に体験できるタンタラスの丘でのダウンヒル・ライドのツアー

 「大会の運営に関わり、パーティにも参加することで、サイクリストとともに一体感を味わえる」(若林氏)のが特徴で、参加者が感動を分かち合う「チームジャルパック」のコンセプトに通じる商品となっている。また参加者の意見を受け、アフターライド・サイクリングを設けるなど、サイクリストにとって満足度の高い内容も特徴だ。

 センチュリーライドは、実は参加しやすいイベントでもあるという若林氏。「タイムを競わず、自身の判断で距離を決めることができるファンランなので、自転車の種類も問わなければ、レンタルバイクもOK。いい意味で垣根が低い」。実のところ、航空機材の縮小による座席の減少やシルバーウィークと重なる開催時期が理由で、日本人参加者数は微減となっている。しかし、「日本航空(JL)の協賛が抜けた後もジャルパックとして育て続けたいイベントのひとつ」(若林氏)。今後は、400名の集客を目標にしている。

ハワイのウォーキングをツアーの目玉に

誰でも気軽に楽しめるダイヤモンド・ヘッドのハイキング

 ウォークに関しては、オプショナルツアーでハイキングを提案するにとどまっている旅行会社が多い。オアフ島では、ダイヤモンド・ヘッドのハイキングやマノア渓谷の熱帯雨林を歩くツアーが王道だ。そのほかにも、冬はホエール・ウォッチングもできるマカプウ岬のマカプウ・ライトハウス・トレイルや、ノースショアのハレイワにある自然公園内を歩くワイメア・トレイルなど、さまざまなコースがある。これらを紹介していけば、ハワイ=(イコール)ビーチ、オアフ島=(イコール)ワイキキの固定観念をくつがえし、新市場へのアピールやヘビーリピーターへの新提案につなげることもできるだろう。

 ツアーにウォーキングを取り入れているのはジャルパックだ。同社のオリジナル観光「ホクレア」に、ビッグ・アイランド(ハワイ島)のキラウエア火山でイキ・クレーター内約6.4キロメートルを歩く火口ハイキングを設定。上期の特別企画「五感で楽しむハワイ島&オアフ島6日間」では、ビッグ・アイランド(ハワイ島)のワイピオ渓谷を歩くウォーキングとオアフ島のダイヤモンド・ヘッド早朝ハイキングを組み込んだ。

ダイヤモンド・ヘッドの頂上からはワイキキが一望できる

 「ウォーキングのイベントがあれば取り組みやすい」と話すのは、近畿日本ツーリスト(KNT)ECC事業本部カンパニー第8営業支店の副支店長の三上徳隆氏。今後は、ウォーキングを取り入れたツアーを検討したいとしており、新しいハワイを模索する各社のウォークに対する関心は高い。健康志向をテーマに、幅広い年齢層にすすめられる“スポーツ”として、長い目で見て検討したい素材であるのは確かだろう。

ツアーでストレスのないゴルフを

今年HISが発売したネイバー
アイランドのゴルフツアー

 ウォーキングと同様、ゴルフもまた旅行会社の扱いではオプショナルツアーにとどまっていることが多いスポーツだ。しかしジャルパックでは、全島にゴルフのオプショナルツアーを設定。初心者には手配から送迎までセットされた「おまかせプラン」、旅慣れた人には「予約だけおねがいプラン」を用意しており、コースによっては2サムプラン(2人グループでのラウンド)も可能にしている。

リゾート・コースでのプレイもハワイならでは

 一方、ハワイのゴルフを推すことが隣島の需要喚起にもつながることから、エイチ・アイ・エス(HIS)では今年からビッグ・アイランド(ハワイ島)とマウイ島のゴルフツアーを造成した。旅慣れている人や英語ができる人ならFITベースで楽しめるゴルフ。しかし、「きちんと手配されたツアーでストレスなくゴルフが楽しめる。そんな信頼される商品をつくることで、アッパー層の顧客をつかんでいきたい」(HIS新宿本社営業所スポーツ・イベントセクション企画・販売セールスチーフの山田由紀子氏)という。

 ゴルフというと男性が主流のマーケットだが、近年は女性の間でもファッションを含めてゴルフ人気は高い。女性マーケットを取り込むことで、さらに男性をも引き込むことができれば理想的だろう。

担当者の熱意が集客につながる

気軽なハイキングなら幅広い
年齢層にアピールできる

 種目によって手配もサービスも異なるスポーツは、専門性の求められる分野といえる。そのため、「担当者の得意な種目を担当している」(山田氏)ことで、担当者の熱意がツアーに反映されやすい一面もある。「マラソンのスタッフは全員がフルマラソン経験者」(日本旅行の東京法人・コンベンション営業部スポーツイベント部の加藤絵理子氏)というように、その熱意は参加者に伝わり、リピーターを生み出していく。特に参加型の多いハワイでのスポーツツアーの発展には、ハワイでスポーツの楽しみを体験する機会を設けるなど、旅行業界内のファンを増やしていくことも重要だ。

 また、KNTのスポーツ・サイト「KNT! SPORTS」には、フィギュアスケートや競馬といった項目も並び、あらゆるスポーツがラインナップされている。「ウェブの特性を生かして多彩な情報を発信し、参加者が比較検討しやすい環境を提供するとともに、利用者の動向をマーケティングしながら手応えを探っている」(三上氏)。サーフィンもスポーツとして提案していきたいという声もあり、ハワイでのスポーツの切り口は実に多彩だ。HTJの「旅スポハワイ」プロモーションをきっかけとするハワイでのスポーツツアーに対する取り組みは始まったばかりであり、今後の発展を大いに期待したい。

今週のハワイ50選
ダイヤモンド・ヘッド(オアフ島)
マノア渓谷(オアフ島)
マカプウ岬(オアフ島)
ノースショア(オアフ島)
ワイピオ渓谷(ビッグ・アイランド<ハワイ島>)


取材・竹内加恵