JATA、約款改正要望書を観光庁に提出−企画旅行の取消料収受90日前から

  • 2011年3月24日
 日本旅行業協会(JATA)は3月23日、観光庁長官の溝畑宏氏に対し、「標準旅行業約款の改正に関する要望書」を提出した。近年、世界的にホテルや航空の仕入れ環境が厳しくなり、旅行業者にとって旅行契約解除時の取消料、払戻手数料などの支払いリスクが拡大している点など、旅行業を取り巻く環境の変化への対応をめざしたもの。旅行業法は消費者庁との共同所管となっているため、3月末までに消費者庁長官へも提出し、早期の改正の実現をめざす。

 要望書では、募集型企画旅行のうち海外旅行の取消料について、旅行開始日の前日から90日前から41日前までの取消料を設定し、旅行代金の10%以内を収受できるよう要望する。その他の区分は下表のとおりだが、特に海外旅行における航空会社などの取消料・違約料制度の変更に対応するため、取消料表の区分と取消料率の継続的な見直しがおこなわれるよう求める。

 また、移動や宿泊、食事、催し物などサービス提供機関側の取消料・違約料の合計額が、現行標準約款の取消料を超過するケースにも対応。あらかじめパンフレットなどの取引条件説明書面に、サービス提供機関が定める取消料や違約料、その他費用の金額を明示した場合には、明示した金額の合計額以内の額を取消料とする案を加えた。これまで個別認可方式をとっていたクルーズも、サービス提供機関と同様に捉え、一定条件のもとで標準約款で扱うようにする。

 受注型企画旅行では、海外旅行の取消料について募集型企画旅行と同様の変更を要望。ただし、サービス提供機関の例外ケースへの対応案を、クルーズ関連を除いて国内旅行にも盛り込んでいる。


▽取消料など諸条件の明確化も

 要望書ではまた、募集型、受注型ともに、取消料の適用条件を明確化するため、取消料表の備考欄で「旅行開始後」を定義。これは「旅行開始」のタイミングを、現行の特別補償規定で定められた「サービスの提供を受けることを開始した時」と同一とするもの。「サービス提供を受けることを開始した時」自体も、添乗員や社員による受付がなく、かつ最初に利用する運送・宿泊機関が航空機である場合について、「乗客のみが入場できる飛行場構内における手荷物の検査等の完了時」に変更。これは、現在「搭乗手続きの完了時」としているもので、WEBチェックインが普及してきている現状に合わせた。

 また、企画旅行における「不可抗力事由による旅行者の解除権」でも、解除権の範囲を明確化。旅行日程に含まれる都市や区域に、天災、戦乱、暴動などにより旅行の安全かつ円滑な実施が不可能、あるいは不可能になる可能性が極めて大きいと「客観的に認められる時」とした。このほか、暴力団排除条項の導入による旅行会社側の解除権も求めた。


▽改正に向けた課題

 JATAは、要望書提出に向けて約款合同検討会を立ち上げ、これまで会員に対するアンケート調査や検討を重ねてきていたところ。要望した変更点は、旅行会社にとっては過剰なリスクの軽減を期待できるものとする。今後は、改正が実現すればホテルや航空仕入れの環境変化に対応できるようになり、より魅力的な旅行を提供できるようになる点や、手配の確実性が向上する点を訴える方針だ。

 また、要望書では、出入国税や空港税などの税金、公的施設使用料などが増減した場合にも、増減を反映して旅行代金を変更できるよう要望しているが、税金などが下がった場合には旅行代金を減額することになるため、この柔軟性も消費者利益の向上と訴えられる可能性がある。