バリアフリー基準は旅行者にあり−JATAセミナーで送客側、受入側が講演

  • 2011年2月16日
 日本旅行業協会(JATA)のバリアフリー旅行セミナーで、NPO伊勢志摩バリアフリーツアーセンター理事長の中村元氏とチックトラベルセンターのハートtoハート課長である松本泰守氏が講演した。観光地側と送客側の視点であるが、障害の程度は人によって異なるため、それを踏まえた対応が大切であることは共通で、その具体的な方法を説明した。

 中村氏は、障害のある方が旅行をする際に、障害のある方のクチコミ情報を重視していることを説明。障害のある方に伊勢志摩内の調査を呼びかけ、その情報を公開している。その際、障害のある方のバリアフリーに必要な設備がさまざまであることが判明し、基準がお客にあるという「パーソナルバリアフリー基準」を設定。旅行者が行くような場所の段差や入口、客室などを調査し、その結果を伝えることでお客に判断してもらうようにしているという。

 また、旅行の問い合わせの対応時は「障害の状況に合わせて何ができるのか」よりも、「何がしたいのか」の目的を重視。それに合わせてバリアフリーの程度の異なる複数の旅行の提案をし、旅行者に選択肢を与え、それが満足度向上につながっていると話す。

 松本氏も、「できないと思っているのは旅行会社。実際に判断するのは本人と、安全性の観点でアトラクションなどのスタッフ」と話し、旅行に参加できるかどうかの判断をお客様ができるようにしている。例えば一般ツアーへの参加を希望する場合、「バスの乗り降りが1日あたり8回ある」「集客数45名で添乗員が1名」などの情報を提供し、その上で催行者に参加者の状況を伝える。自分で判断するため、クレームにならないという。

 また、旅行者の障害の程度がさまざまなので、わからないことは正直に聞くことが重要と説明。それにより、信用が得られるといい、最初の対応の重要さを強調する。さりげない会話から、受け入れ可能かどうか判断できる場合もあるとして、実際の会話から参加者の本音がうかがえた例を紹介した。

 このほか、バスの乗り降りといった介助の注意点や、高齢者、車いす利用者にすすめられる国内観光地などを紹介。ただし「バリアフリーの設備状況ばかりにこだわると、面白みのない旅行になることもある」と、ツアー造成のポイントも語った。