ITソリューション特集:コラム<ITソリューションの有効活用>(3)

  • 2010年11月24日
ITソリューションの有効活用で旅行ビジネスが変わる
コラム第3回:SNSメディアの可能性


 mixiに代表されるソーシャルネットワーキングサービス(以下SNSと略)が台頭してから5〜6年が経った。最近ではTwitterが世を席巻、情報発信や情報収集の方法は多様化している。また、世界最大のSNSであるFacebookも日本国内でのユーザーを急速に増やしつつある。第3回では、これらSNSの特性を理解した上で、旅行ビジネスにおいて、SNSユーザーを取り込むためにはどうすればいいのか、その活用方法についてお伝えしたい。


<SNSの特性を理解しサイト集客に活用>

 SNSのユーザー規模としてはmixiユーザーは既に2000万人を超え、世界で5億人以上のユーザーを抱えるFacebookも、日本でのユーザー数が200万人ほどに増えてきている。Twitterも登録者数は増加、2010年7月時点でのユーザー数が前年の19倍に達し1000万人を超えたとも言われている。

 急激に拡大しつつあるSNSの特性として顕著なのが「情報を伝播する力」だ。その力は、ユーザー数の増加やSNSの機能が充実したことにより、一層強力なものになってきている。

 SNSでの情報の伝播の基本的なメカニズムは、クチコミビジネスと変わらない。ただし、クチコミサイトの場合、そこで得られるのは第三者が発信する情報であることが多いが、SNSでは友人や知人もしくは同じ興味や嗜好をもったコミュニティネットワーク間において情報伝達がおこなわれる。これは、小さなことにも思えるが非常に大きな違いである。

 全くの他人に薦められるのと友人・知人や同じ趣味嗜好をもった人に薦められるのでは、どちらが情報の信頼性をもって行動に移すきっかけになるだろうか?もちろん友人や知人などからの薦めを信頼して行動に移すという人が圧倒的に多いはずだ。つまり、ただ情報が伝わるというだけでなく、コミュニティネットワーク間において興味を持って魅かれるような、必要性の高い情報が伝わるという点においても、SNSの情報を伝播する力は強いと言える。

 このSNSの特性すなわち、情報を伝播する力を活用することにより、既存のバナー出稿やメルマガ、リスティング広告とは違ったかたちで自社のサービスや商品、キャンペーン情報を伝えることが可能だ。そして、使い方次第では自社サイトと連携をとることによりサイトの集客に繋がっていくのだ。

 では、具体的にはどうすれば集客に繋がるのか?SNSと言ってもサービスにより特徴が異なるため、今回は代表的なmixi、FacebookとTwitter、異なる特色をもった2つに分けて話を進めたい。


<活用法1:ユーザーに「伝道師」の役割を担ってもらいサイトへ集客>

 まず、ここでは、ユーザー同士の繋がりが深いコミュニティが存在するmixiとFacebookを活用する方法として紹介する。

 ユーザーに伝道師の役割を担ってもらうというのは、大々的に広告を打たなくともコミュニティ間もしくはSNSにおいてユーザーが発信者となり情報が伝わることを指す。特に、SNSの機能が充実したことで有効な手段となりつつあり、注目を集めている。

 充実した機能というのは、mixiの「mixiチェック」やFacebookの「いいね」という、他ユーザーにオススメやお気に入りと紹介する機能のことだ。この機能が登場したことで、SNSのビジネス活用に新しい道が生まれた。ポイントとなるのは、最近よく見かける下記のボタンだ。



 このボタンをサイト内に設置することで、商品やコンテンツを気に入ったユーザーがこのボタンをクリックした場合、SNS内におすすめ情報として表示される、という仕組みだ。ユーザーは各SNSにログインした状態であれば、ボタンをクリックするだけで共有が出来るということもあり非常に簡単に情報が伝播していくことが可能となっている。

 ボタンをクリックしたユーザーの先には多くの友人、さらにその先に友人の友人・・・と情報は伝わる。友人・知人がおすすめすることで興味の度合いも高く、商品の購買動向に好影響を与える効果が期待できるのだ。



 このボタンを、ユーザーが「紹介したい」と考えるであろう商品や写真、スタッフの声などの近くに設置する。旅行業界で考えると、キャンペーン内容、パッケージツアー詳細、ホテル、現地情報、スタッフコメントなどが当てはまる。これによりユーザーは、お気に入りの記事をSNS内で共有したり、「このホテルが気になる」などの情報を友人などのコミュニティネットワークに広く知らせることができる。

 旅行業界ではまだあまり見られない機能だが、クチコミサイトのフォートラベルでは各クチコミ記事にmixiチェックボタンとTwitterボタンを設置している。ANAの「GO!GO!女子会 冬の旅ガール。」キャンペーンサイトでも、mixi、Facebook、amebaブログ、Twitterで紹介できるよう、ムービーにボタンが設置されている。





 この方法で重要なのは、非常に基本的なことではあるが、まず自社サイトにユーザーが「いい」と思う情報があるか?「いい」と伝えたい見せ方が出来ているか?という点である。専門性を活かした現地のおすすめ情報でもいい、おすすめホテル情報でもお得なキャンペーン情報でもいい、ユーザーが人に薦めたい情報が必要なのだ。

 このように、ユーザー発信で情報が広がる仕組みがmixiやFacebookには備わっているため、ユーザーを伝道師のようにして情報を伝えることも可能なのである。そしてその力は「ボタンの新設」という機能の充実により、注目すべきものとなった。是非活用してサイト集客に繋げたい。


<活用法2:Twitterでファンを増やしサイト集客に活用>

 一方、mixiやFacebokに比べ気軽にコミュニケーションできるTwitterを使い、その特性を利用してユーザーと直接の交流を図る方法もある。Twitter内に公式アカウントを開設し、自社のファンを増やすことが狙いだ。

 これには、ユーザーがフォローしてくれれば、自社の情報発信が常にそのユーザーのマイページにあるメッセージ一覧に載るという機能を活用する。この機能を使えば、キャンペーン情報や新商品に関する情報、現地情報などをユーザーに直接届けることが出来る。 実際に多くの旅行関連企業が公式アカウントを開設し、キャンペーンや商品情報などを発信している。



 ただし、ここで気をつけたいのがユーザーのモチベーションである。企業Twitterの多くは、広告・宣伝的な内容になっていることが多い。そして自身のマイページにそのような広告・宣伝が多数掲載されることに嫌悪感を示すユーザーは少なくない。

 そしてTwitterというのは、比較的軽くてゆるいトーンが好まれる世界でもあり、重くて堅苦しいつぶやきは若干場違いに感じる場合もある。そのあたりの表現などには工夫が必要だ。企業とユーザーという構図ではなく、あくまでユーザー目線で楽しめる内容でなければ受け入れられないことが多い。

 例えば、旅工房やエイチアイエス(HIS_navigation)のように、おすすめの現地情報やホテル情報をつぶやくのは旅好きのユーザーに対して有効だ。

 このように旅好きの人向けに現地の旬な情報を届ける、ダイビング好きな人向けに対して海に潜りたくなるような情報を届ける、など目的を明確にしてユーザーに必要とされる情報が展開される必要がある。それが実現すれば、単純な企業とユーザーという関係を超えた「旅のプロフェッショナルとファン」という強固な結びつきを作りあげることも可能になるのだ。

 私自身もTwitterでいくつかの企業アカウントをフォローしているが、不思議なことにユーザー目線でつぶやく企業に対しては親近感や興味の度合いも増していく。そして有益な情報を教えてくれる企業はずっとフォローし続けている。人肌感のコミュニケーションともとれるこの関係性が続けば、その企業のファンとなり距離は縮まるのだ。

 このようにSNSの特性を理解した上で活用すれば、今までにはない新たな自社サイトへの集客の手段となる。そして、ここで掴んだ見込み客とも言えるファンからの情報を活用し、有益な情報を発信することが、次なる商機へと繋がるのである。



執筆:森田亘(株式会社山敷広告制作所 ディレクター)
http://www.yamako.jp/index.shtml

 旅行検索・比較サイト「AB-ROAD」での制作業務を経て、
山敷広告制作所に入社。ディレクターとして旅行業界関連の
広告制作のみならず、ウェブ上のサービスやコンテンツの企
画を担当し、旅行商品の販促強化を目的としたサービスの企
画・提案から運用まで幅広く携わる。