現地レポート:ニュージーランド、プレシニアや若者層への魅力アピール
「安心」と「冒険」を両立するアクティビティで
プレシニアや若年層への魅力をアピール
ニュージーランドを訪れる日本人旅行者は、周遊型のパッケージツアーに参加するシニアが主流だ。そのため、ニュージーランドはシニアが行くデスティネーションというイメージを持つ旅行業界人もいるだろう。しかし、ここ数年はFITの若年層や好奇心旺盛なミドル世代以上のプレシニアも増えはじめている。彼らは、従来の「安心・安全」なパッケージツアーでは飽きたらず「自分だけの体験」を求める傾向にある。ニュージーランド政府観光局(TNZ)は、最大の観光素材である「自然」に触れるさまざまな「体験」を、シニア層はもちろん、より若い世代にも積極的にピーアールしている。自然のなかでのアクティビティのいくつかを、北島で体験した。
若年層が熱狂するアドベンチャー
プレシニアでも安心なアクティビティも
訪れたのは、北島の東側のホークス・ベイと、中央のタウポ。どちらもオークランドから国内線で所要時間は約1時間。ホークス・ベイの中心地ネイピアとタウポの間は、車で約1時間40分。舗装道路が整備され、快適なドライブを楽しめる。
タウポでは、ワイカト川の急峻に飛び込むバンジージャンプを体験できる。美しい峡谷を活かした、スリル満点のロケーションだ。また、体重を膝と足首だけで支えるバンジージャンプは少し不安、という人でも楽しめるのが、ブランコ型のスイングだ。座った姿勢でブランコ型のベルトに身体をしっかり固定するため、身体に負担をかけずバンジーと同等の重力を体感できる。プレシニアでも、バンジージャンプよりは気軽に参加できるだろう。
ワイカト川では、ニュージーランドでも有数の観光地となっているフカ滝の真下まで流れに遡って近寄るジェットボートがある。水しぶきを上げ、断崖ギリギリをかすめる蛇行滑走や、しっかりつかまらないと振り落とされそうな360度スピンは迫力満点。乗客の年齢によって、熟練のドライバーがスピンやスピードの具合を調整する。乗船場は「フカ・プラウン・パーク」というエビのテーマパークに併設しており、パーク内のエビ料理専門レストランでのランチを組みあわせた半日ツアーも可能だ。そのほか、トンガリロ国立公園では約1時間40分のラフティング、タウポ湖では約3時間のマス釣りを体験した。
すべてのアクティビティを通じて感じたのが、安全性を含めた観光商品としての質の高さだ。例えば、ラフティングでレンタルするウェットスーツやシューズは、きちんと手入れされ、清潔感がある。送迎はビニールシートを敷いたバスで、水ぬれや汚れを気にせず乗り込める。終了後には熱いスープと軽食が振る舞われ、希望者は車で約5分の天然温泉へ送迎する。すべての所要時間は4時間から4時間30分。時間に正確で、オペレーションがスムーズなので、パッケージ商品にも組み込みやすそうだ。
家族旅行や、世代を問わず楽しめる
カルチャー型アクティビティにも注目
体験できるのは、スリリングなアクティビティだけではない。ホークス・ベイは、北島最大、ニュージーランド第2位のワイン生産地で、受賞歴のある30以上のワイナリーを含め、約50のワイナリーを擁する。そのほとんどが、レストランや宿泊施設を併設した観光型ワイナリーだ。ホークス・ベイの中心地ネイピアからは、40分から60分ほど。ワイナリーによって、醸造設備やワインカーヴを見学できたり、簡単なレクチャーを受けられるなど、さまざまな趣向がある。いずれのワイナリーも、6種類から8種類ほどのワインをたっぷり試飲できる。ニュージーランドのワインは、ここ10年から15年ほど評価が高まっている。現在のところ、フランスのワイナリーのように、ワイン通を満足させるレベルには達していないが、初中級者が楽しむには十分だ。
ワイナリー見学と組みあわせるアクティビティは、サイクリングがある。自動車の通らないサイクル・ロードは、平坦な一本道。湿度の低い空気の中、どこまでも広がるブドウ畑を、風を切って進む約40分のサイクリングは、爽快な体験だ。
マオリ文化も体験できる。北島ではロトルアが有名だが、ネイピアから車で40分ほどの小高い丘の上にも、マオリ文化を体験できるステーションがあり、民族衣装を身につけたガイドが奇声を発する威嚇の伝統儀式、鼻と鼻をくっつけるマオリ特有の挨拶、歌と踊りの歓迎の儀式で迎えられる。植物の葉を編んで日用品をつくる実演を見たり、マオリの食文化も体験できる。太平洋を渡ってきたとされるマオリは、黒アワビやムラサキウニ、ウナギなどを食べる。生のアワビやウニは、西洋人にとっては珍しいようだが、日本人にはなじみ深い食材だ。場所を近くのカフェに移して、これらをマオリ風に調理した料理も味わえる。文化体験の所要時間は約3時間。ワイナリー見学と組みあわせることもできそうだ。
シニアが活躍する街、ネイピアで
アール・デコのクラシックな町並みを散策
ネイピアは海岸線沿いに広がる、小さくて美しいリゾート地だ。1931年に大震災が発生し壊滅的な打撃を受けたが、破壊された町を地元の人々が団結して再生。残った建物をリノベーションし、当時流行したアール・デコ様式をふんだんに取り入れ、まるで絵本のように可愛い現在の姿になった。
現在も町をあげて、1930年代当時のアール・デコな雰囲気づくりをめざしている。それを支えているのがシニアの存在だ。たとえば、いまや貴重なクラシック・カーでアール・デコの街並みをドライブし、食事とダンスを楽しむツアーがある。蝶ネクタイやロングドレスの古めかしい正装で宿泊施設へ迎えにくるのは、65歳以上のシニアばかり。ディナー後にダンスを披露するのも、シニアのカップルだ。そのほか、被災前の写真を見ながら町歩きをするウォークツアーのガイドも、全員がシニア。ネイピアのためにボランティアで働いている。彼らは、日本人を含め外国のシニアに対する好意と好奇心でいっぱいだ。「シニアが主役になれる町」と、同行した各国のジャーナリストは評価。町歩きのしやすいコンパクトな大きさで、治安もよい。シニアがくつろぎ、元気をもらえそうだ。
ホークス・ベイ、タウポ周辺には、シニア層はもちろん若年層をも惹きつける観光素材が豊富にある。それぞれの観光地は点在していて、車での移動は必須だ。日本人をはじめアジア人は現地でレンタカーを手配し、自力で動くことにそれほど積極的ではない。ここでは、パッケージツアーやオプショナルツアーに利がある。現地サプライヤーが提供する商品を組みあわせれば、さまざまな年代にアピールできるオリジナル商品造成の可能性がありそうだ。
プレシニアや若年層への魅力をアピール
ニュージーランドを訪れる日本人旅行者は、周遊型のパッケージツアーに参加するシニアが主流だ。そのため、ニュージーランドはシニアが行くデスティネーションというイメージを持つ旅行業界人もいるだろう。しかし、ここ数年はFITの若年層や好奇心旺盛なミドル世代以上のプレシニアも増えはじめている。彼らは、従来の「安心・安全」なパッケージツアーでは飽きたらず「自分だけの体験」を求める傾向にある。ニュージーランド政府観光局(TNZ)は、最大の観光素材である「自然」に触れるさまざまな「体験」を、シニア層はもちろん、より若い世代にも積極的にピーアールしている。自然のなかでのアクティビティのいくつかを、北島で体験した。
若年層が熱狂するアドベンチャー
プレシニアでも安心なアクティビティも
訪れたのは、北島の東側のホークス・ベイと、中央のタウポ。どちらもオークランドから国内線で所要時間は約1時間。ホークス・ベイの中心地ネイピアとタウポの間は、車で約1時間40分。舗装道路が整備され、快適なドライブを楽しめる。
タウポでは、ワイカト川の急峻に飛び込むバンジージャンプを体験できる。美しい峡谷を活かした、スリル満点のロケーションだ。また、体重を膝と足首だけで支えるバンジージャンプは少し不安、という人でも楽しめるのが、ブランコ型のスイングだ。座った姿勢でブランコ型のベルトに身体をしっかり固定するため、身体に負担をかけずバンジーと同等の重力を体感できる。プレシニアでも、バンジージャンプよりは気軽に参加できるだろう。
ワイカト川では、ニュージーランドでも有数の観光地となっているフカ滝の真下まで流れに遡って近寄るジェットボートがある。水しぶきを上げ、断崖ギリギリをかすめる蛇行滑走や、しっかりつかまらないと振り落とされそうな360度スピンは迫力満点。乗客の年齢によって、熟練のドライバーがスピンやスピードの具合を調整する。乗船場は「フカ・プラウン・パーク」というエビのテーマパークに併設しており、パーク内のエビ料理専門レストランでのランチを組みあわせた半日ツアーも可能だ。そのほか、トンガリロ国立公園では約1時間40分のラフティング、タウポ湖では約3時間のマス釣りを体験した。
すべてのアクティビティを通じて感じたのが、安全性を含めた観光商品としての質の高さだ。例えば、ラフティングでレンタルするウェットスーツやシューズは、きちんと手入れされ、清潔感がある。送迎はビニールシートを敷いたバスで、水ぬれや汚れを気にせず乗り込める。終了後には熱いスープと軽食が振る舞われ、希望者は車で約5分の天然温泉へ送迎する。すべての所要時間は4時間から4時間30分。時間に正確で、オペレーションがスムーズなので、パッケージ商品にも組み込みやすそうだ。
家族旅行や、世代を問わず楽しめる
カルチャー型アクティビティにも注目
体験できるのは、スリリングなアクティビティだけではない。ホークス・ベイは、北島最大、ニュージーランド第2位のワイン生産地で、受賞歴のある30以上のワイナリーを含め、約50のワイナリーを擁する。そのほとんどが、レストランや宿泊施設を併設した観光型ワイナリーだ。ホークス・ベイの中心地ネイピアからは、40分から60分ほど。ワイナリーによって、醸造設備やワインカーヴを見学できたり、簡単なレクチャーを受けられるなど、さまざまな趣向がある。いずれのワイナリーも、6種類から8種類ほどのワインをたっぷり試飲できる。ニュージーランドのワインは、ここ10年から15年ほど評価が高まっている。現在のところ、フランスのワイナリーのように、ワイン通を満足させるレベルには達していないが、初中級者が楽しむには十分だ。
ワイナリー見学と組みあわせるアクティビティは、サイクリングがある。自動車の通らないサイクル・ロードは、平坦な一本道。湿度の低い空気の中、どこまでも広がるブドウ畑を、風を切って進む約40分のサイクリングは、爽快な体験だ。
マオリ文化も体験できる。北島ではロトルアが有名だが、ネイピアから車で40分ほどの小高い丘の上にも、マオリ文化を体験できるステーションがあり、民族衣装を身につけたガイドが奇声を発する威嚇の伝統儀式、鼻と鼻をくっつけるマオリ特有の挨拶、歌と踊りの歓迎の儀式で迎えられる。植物の葉を編んで日用品をつくる実演を見たり、マオリの食文化も体験できる。太平洋を渡ってきたとされるマオリは、黒アワビやムラサキウニ、ウナギなどを食べる。生のアワビやウニは、西洋人にとっては珍しいようだが、日本人にはなじみ深い食材だ。場所を近くのカフェに移して、これらをマオリ風に調理した料理も味わえる。文化体験の所要時間は約3時間。ワイナリー見学と組みあわせることもできそうだ。
シニアが活躍する街、ネイピアで
アール・デコのクラシックな町並みを散策
ネイピアは海岸線沿いに広がる、小さくて美しいリゾート地だ。1931年に大震災が発生し壊滅的な打撃を受けたが、破壊された町を地元の人々が団結して再生。残った建物をリノベーションし、当時流行したアール・デコ様式をふんだんに取り入れ、まるで絵本のように可愛い現在の姿になった。
現在も町をあげて、1930年代当時のアール・デコな雰囲気づくりをめざしている。それを支えているのがシニアの存在だ。たとえば、いまや貴重なクラシック・カーでアール・デコの街並みをドライブし、食事とダンスを楽しむツアーがある。蝶ネクタイやロングドレスの古めかしい正装で宿泊施設へ迎えにくるのは、65歳以上のシニアばかり。ディナー後にダンスを披露するのも、シニアのカップルだ。そのほか、被災前の写真を見ながら町歩きをするウォークツアーのガイドも、全員がシニア。ネイピアのためにボランティアで働いている。彼らは、日本人を含め外国のシニアに対する好意と好奇心でいっぱいだ。「シニアが主役になれる町」と、同行した各国のジャーナリストは評価。町歩きのしやすいコンパクトな大きさで、治安もよい。シニアがくつろぎ、元気をもらえそうだ。
ホークス・ベイ、タウポ周辺には、シニア層はもちろん若年層をも惹きつける観光素材が豊富にある。それぞれの観光地は点在していて、車での移動は必須だ。日本人をはじめアジア人は現地でレンタカーを手配し、自力で動くことにそれほど積極的ではない。ここでは、パッケージツアーやオプショナルツアーに利がある。現地サプライヤーが提供する商品を組みあわせれば、さまざまな年代にアピールできるオリジナル商品造成の可能性がありそうだ。
ニュージーランド航空、新シートをお披露目
「ロマンチックシート」と好評
ニュージーランド航空(NZ)は、ボーイングB777-300ER
型機に、新シートを導入する。「TRENZ(トレンツ)
2010」の会期中にオークランド空港の格納庫で、世界各
地から集まったジャーナリストに現物のシートを披露し
た。
新シートはエコノミークラスの一部に、3席を2人で利
用してフルフラットシートになるエコノミースカイカウ
チを設置。前の席の背もたれ部分まで水平になるように
設計している。さらに、プレミアムエコノミー、ビジネ
スプレミアのシートも刷新する。プレミアムエコノミー
は並び席に角度をつけ、他人同士なら互いを気にせず、
同行者なら食事時など肘掛けを中心に向かいあえるよう
にした。ビジネスプレミアは食事時などテーブルセッテ
ィングをした場合、2人が向かいあって座ることができ
る。
導入は2010年11月を予定しており、オークランド/ロ
サンゼルス/ロンドン線から順次、長距離方面に導入す
る。日本市場へは、1年半から2年以内程度で導入したい
といい、2012年になる見込みだ。オークランド/ロサン
ゼルス/ロンドン線の販売は、すでに開始している。
NZでは、小さな子供連れのファミリーやカップル、夫
婦、友人同士など幅広い利用を想定している。参加した
ジャーナリストは「ロマンチックなカップル向けシート」
「ハネムーナーなど、ターゲットを絞ってピーアールし
ていくべき」とし、「航空会社にはあり得ない、ロマン
チックな挑戦」と、新シートへの期待を話した。
▽関連記事
◆ニュージーランド航空、エコノミーにも「水平シート」−機内設備を刷新へ(2010/01/27)
取材協力:ニュージーランド政府観光局(TNZ)、ニュージーランド航空(NZ)
取材:江藤詩文