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トップインタビュー:アマデウス・アジア太平洋地区社長 ブレット氏

  • 2010年3月24日
旅行業界はまだまだ進化
旅行会社のグローバル戦略に勝機


 アマデウスが「GDS企業」から「ITソリューション企業」への転換を打ち出してから4年。日本の旅行業界では、大手旅行各社の店舗再編や日本航空(JL)の会社更生手続きといったニュースが続いており、航空券など旅行関連の商品やサービス、情報の流通における旅行会社の役割が大きく変わりつつある。一足先に「流通」を超えた役割をめざしたアマデウスは、現況をどう見ているのか。旅行業界はまだまだ進化が可能であり、それに伴って同社も発展していくとするアマデウス・アジア・パシフィック・プレジデントのデービッド・ブレット氏に話を聞いた。

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−昨年、アジア太平洋地域の航空旅客需要は2010年に2007年の水準まで拡大すると予測されていました(◆関連記事)が、日本市場についてはどのように分析されていますか

デービッド・ブレット氏(以下、敬称略)  市場ごとの反応に若干の差異はあったとしても、現在の旅行市場は私の予測が正しかったといえる推移をしていると思う。当社の業績も前四半期から年初にかけて良好な回復を見せている。日本経済はすでに成長しており、インドや中国などのような強い回復は望めず、短期間では2007年の水準には戻らないかもしれないが、回復傾向にあるとは感じている。


−2009年に日本市場もゼロコミッション時代に突入しましたが、旅行会社の置かれた状況をどう見ていますか

ブレット ゼロコミッションは日本だけではなく世界各国で共通の課題だ。確かに旅行会社がその影響を懸念しているのは事実だが、それを新しいビジネスの可能性を開拓する良いチャンスとして前向きにとらえて取り組んでいる旅行会社も多いと思う。より良いサービスをお客様に販売する機会になり、提供されているサービスをしっかりと認識してもらう機会にもなる。サービス志向の方向性が強くなってきたということなのではないか。そうであれば、それは逆に良いことだ。

 当社としても、それを支援するための様々な技術やツールを持ちあわせており、旅行会社が新時代の中で生き残り、課題を解決していくための支援ができればと思う。


−日本市場での業績はどのように推移していますか

ブレット 日本市場での成長に大変満足しており、マーケットシェアも継続して拡大できている。ただ、当社はマーケットシェアがどれだけ増えたかということよりも、全体図の中で自らの役割を見出したいと考えている。GDSとして最大手になった訳だが、大手になったからこそマーケットシェアでどのようにリードするかよりも、業界のリーダーとして何ができるのかを考えていきたい。いうなれば日本の、あるいは世界の旅行業界のリーダーとしての役割を果たしたい。

 つまり、業界の方々と協力しあいながら、業界の将来図を描いていきたい。今必要なものだけを単に提供するのではなく、将来を見据えて必要な技術を開発し提供していくことが我々の希望だ。旅行業界はまだまだ進化する余地があると考えており、当社としてもそのために力を最大限発揮していく。


−大手航空会社(FSC)が付加サービスの有料販売を開始する一方、格安航空会社(LCC)がサービスを上質化してビジネス需要をねらっているとも聞きます。航空会社のビジネスモデルは今後どのように変化していくとお考えでしょうか

ブレット それぞれの垣根がより低く、曖昧になっていく状況が今後も続くだろう。そのなかで重要になるのは技術だ。LCCが台頭した頃、LCCとFSCとの違いは、FSCが予約やITなどすべてにおいて自前主義を取っていたのに対し、LCCはそれを外注した。近年は、世界各国のFSCがアマデウスのシステムを活用しており、必要な時に必要なものを柔軟に活用するという姿勢が一般化している。今後、FSCが外部のサービスを有効活用するようになれば、逆にLCCに対する優位性を確保できるようになるのではないかと考えている。


−日系航空会社がアマデウスの製品を「外注」する可能性は

ブレット 日系航空会社とはとても良好な関係を構築しており、定期的に話しあいもしている。それ以上のことは機密事項であり話せない。しかし、例えば当社はスターアライアンスの共通ITプラットフォームを提供しており、ワンワールドでもブリティシュ・エアウェイズ(BA)やカンタス航空(QF)、キャセイパシフィック航空(CX)など多くの航空会社が我々の製品を導入している。これらは何かしらを暗示しているといっていいのではないか。技術的なプラットフォームの共通性は、アライアンスを構築する上で重要な要素になる。


−日本市場での今後のアマデウスの業績について見通しをお聞かせください

ブレット 需要は上向いている。旅行業界は他の業界に比べてIT技術の活用が遅れている部分があったが、今は活用したいという意欲が旅行会社から強く見えてきている。IT技術を活用すれば効率性向上やコスト削減だけでなく、様々な製品の拡販や顧客サービスの充実も可能だ。

 加えて、当社は製品を提供するうえで“技術ありき”ではないと考えている。人がいて、人が培った経験値があって、その経験値のもとに生まれた知恵がある。これらは、人がそこに介在しない限りは構築しえないものだ。技術先導型で、素晴らしい技術を送り込めばいいだけかというとそうではない。最終的に人が介在し、その人がお客様の声を聞いてソリューションのなかに組み込むことができるかどうか。我々はそれを日本を含めて各地域で実現している。

 さらに、大手旅行会社がアジア戦略、グローバル戦略を進めているが、まさにそこが当社の強みになる。日本から世界に進出しようとする旅行会社に対して、進出先ですでに地盤を築いているアマデウスの人材力や経験値は最大限活用できるだろう。


−航空会社の直販増加は旅行会社にとってビジネスチャンスの縮小を意味しますが、双方に製品を提供することがどこかで矛盾をはらむ可能性はないのでしょうか

ブレット 当社のビジネスは最良のITソリューションを旅行業界に提供し続けることであり、我々の製品をどう使いこなしていただくかは最終的には企業側にかかっている。矛盾やジレンマはない。旅行会社、航空会社ともにより良いサービスを実現でき、効率性の向上にもつながるような製品を提供し、そこに価値を見出していただくようにしていきたい。

 旅行会社についていえば、今までなかなかお客様にテーラーメイドのサービスを提供できなかったことが苦戦の一因ではないかと思う。しかし、それは逆にいえば事業を強化する余地は十分に残されていることを意味する。例えばそれを可能にするような、最良の技術を業界に提供し続けていく。


−ありがとうございました


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