現地レポート:フィジー、コンチネンタル航空の路線開設で新たな可能性

  • 2010年2月19日
新アクセスでフィジー旅行促進に期待
幅広い客層の受入整備進む


 コンチネンタル航空(CO)のグアム/フィジー線が2009年12月18日に運航を開始した。COの就航により、首都圏のみならず地方からフィジーへの新たなアクセスが確保されることになる。2009年3月にエア・パシフィック航空(FJ)の成田/フィジー直行便の運休で、陰りが見えていたフィジー旅行だが、新たな路線の誕生は市場の再活性化を促すとみられる。同路線の初便にあわせて実施した研修旅行に参加し、フィジーで高まる日本市場への期待感と、受入状況をレポートする。
    
    
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新フライトに現地の期待感

 グアム発の初便となるCO948便がナンディ国際空港に降り立つと、盛大な歓迎セレモニーが待っていた。到着7番ゲートの出口には歓迎隊が到着客を待ち構えており、ポリス・バンドが賑やかな音楽を奏でるなか、「ブラ!」の挨拶と共に一人ひとりに木の実でできた首飾りを掛けてくれた。入国審査と手荷物受け取りを済ませて到着ロビーに出ると、おしぼりとミネラルウォーターが配られ、フィジーの観光局や空港、商工会議所、コンチネンタル航空などの関係者が歓迎の挨拶をするなど、現地をあげての歓迎姿勢を表した。

 こうした歓迎ぶりの背景には、日本からの観光客への熱い期待がある。国の主要産業である観光の振興はフィジーにとって最重要課題のひとつ。しかし、このところ外国からの観光客数が伸び悩んでいる。フィジー共和国統計局によればフィジーを訪れた観光客数は90年代最後の1999年に40万人に達したものの、その後いったんは30万人台に逆戻り。2003年に43万人に戻り、以降2005年にかけて54万人と大きく数字を伸ばしたが、2006年と2007年は横ばいとなった。2008年に58万人に増えたが、世界的な経済危機や新型インフルエンザの影響が大きかった2009年は悲観的にならざるを得ないと思われる。

 日本からの観光客数も1995年の4万5300人をピークに漸減傾向で、2008年には2万1918人とピークの半分以下まで減少。さらに2009年3月にFJの成田/ナンディ直行便が運休となったため、2009年の日本人観光客数は1万5000人程度まで落ち込んだとみられる。

 ところがCOのグアム/フィジー線就航により、再び日本人観光客の増加への期待が高まった。日本人観光客の比率が比較的高いマナ・アイランド・リゾート&スパ総支配人の田中正男氏は「以前は日本のマーケットシェアが35%に達したこともあったが、現在は10%程度。CO就航で少なくとも20%程度まで引き上げたい」と需要拡大を見込む。現地側の歓迎ぶりにも熱が入るわけだ。


日本市場も再び注目

 COのグアム/フィジー線は週2便の運航。使用機材はボーイングB737−800型機でビジネスクラス14席、エコノミークラス141席の合計155席だ。現地の期待が高まる大きな理由は第一に日本全国9都市からフライトを運航するCOの就航である点だ。もし成田からの直行便が存在しても、地方からの利便性の点で比較すれば、地方発のフライトを豊富に運航する航空会社の経由便の方が便利であるケースは十分に想定できる。

 グアム/フィジー線は、成田、名古屋、大阪、福岡、仙台、札幌の6都市から同日乗り継ぎできる。金曜日の成田発の場合は、午後5時15発のCO0007便が午後9時55分にグアム到着。ちょうど1時間でナンディ行き午後10時55分発の便に乗り継ぎ、6時間35分の飛行で翌朝8時30分にはナンディに到着する。合計の飛行時間は10時間15分。乗り継ぎ時間を入れても11時間15分でフィジーに着ける。1時間の乗り継ぎで米国の入国審査を受け、トランスファーの手続きやセキュリティチェックを受けるのはややせわしないが、無駄な時間がない点では合理的だ。

 期待が高まる第二の理由は、安定した座席供給力だ。実際にはグアム/フィジー間の需要の大部分を日本人旅客が占めるとみられ、他国の旅行動向に左右されることなく、週間約300座席の供給を確保できる。現在、日本からフィジーへの旅行ルートとしては、大韓航空(KE)を利用したソウル経由や、キャセイパシフィック航空(CX)を利用した香港経由などもあるが、いずれの座席もソウルや香港発、および同地を経由する需要との兼ねあいがある。

 マナ・アイランド・リゾート&スパのビジネス開発部長である松本裕司氏は「ほぼ日本市場だけで使えるグアム/フィジー線は、ホテルにとっても日本市場にアピールしやすいし、旅行会社にとっても売りやすいはずだ。実際にCO就航が発表されてから旅行会社からの問いあわせが増えており、日本市場がフィジーに再び目を向けはじめた実感がある」と話す。

 それを証明するような出来事に、マナ・アイランド・リゾート&スパで遭遇した。研修旅行に同行していたフィジー政府観光局日本支局長の川端郁代氏に、日本人旅行者から声がかかった。先日北海道で開催したフィジー・セミナーに参加したエイチ・アイ・エス(HIS)琴似ダイエー営業所の川口麻夕さんとその仲間で、休暇を兼ねてセミナーで紹介された観光スポットやホテルを見学に来たという。研究熱心な川口さんに帰国後に話を聞くと「マナ・アイランド・リゾートはエクスカーションで訪問しただけだが、きれいな海とビーチが印象的。スパも日本人スタッフのサービスが行き届き大満足だった」との感想で、「北海道の旅行者に自信を持ってフィジーを勧められることを確認できた」と話してくれた。


アップマーケットにアピールするホテル群

 マナ・アイランド・リゾート&スパは、ナンディ郊外のデナラウ・マリーナから船で約1時間30分。離島リゾートとしては最も規模が大きく、152室の収容力がある。日系企業がオーナーとあって全室にエアコン完備など、日本人のニーズに応える設備を整えている。客室タイプはカップル専用のハネムーン・ブレやビーチフロント・ブレから、ファミリーにも使い勝手のいいメゾネットタイプのオーシャンフロント・スイートなど全部で7タイプあり、さまざまな客層に幅広く対応できる。また、フィジーでも5本の指に入る「ザ・マナ・スパ」は、日本人のスパ・マネージャーが接客全般に気配りをしており、行き届いたサービスに定評がある。人気が高いので日本出発前の予約が安心だ。

 一方、離島と比較すると、本島の海とビーチはそれほどでもないというのがこれまで一般的な認識だったが、その認識を覆しつつあるのが本島南西部のナタドラビーチ。本島では珍しく白砂のビーチと透明度の高い海に恵まれ、2008年に「フォーブス」誌の世界のビーチ上位25選にも選ばれたほど。しかし本格的なリゾート施設がなく旅行客にはその存在が知られていなかった。ところが2009年6月にインターコンチネンタル・フィジー・ゴルフ&スパが開業して一躍注目が集まった。

 全216室の客室およびスイートは最小の客室でも65平方メートルと十分な広さを確保し、ビーチフロント・スイートは85平方メートル。テラスにバスタブを備えた部屋もある。4つのプール、5つのレストランとバー、スパ、キッズクラブに18ホールのゴルフコース、24時間ルームサービス対応と最上級の設備とサービスを誇り、さらに9月にはクラブインターコンチネンタルの開業も予定している。「リゾートの中のリゾート」のコンセプトで、専用プールまたはスパを備えた55棟のヴィラとラウンジエリア、共用プールで構成される予定だ。

 また、ナンディ国際空港から車で20分ほどの、ママヌザ湾に面したデナラウ地区にはソフィテル・フィジー・リゾート&スパをはじめシェラトン、ウェスティン、ヒルトンなど複数の国際級ホテルが集まる。ホテル群から5分ほどの距離には18ホールのチャンピオンシップコースと10面のテニスコートを備えた「デナラウ・ゴルフ&ラケットクラブ」もあり、効率的にリゾートライフを楽しむには最適な環境だ。エクスクルーシブな環境で美しい自然を満喫するならナタドラビーチ、効率よくアクティビティを満喫するならデナラウ地区と、旅行者の目的にあわせて滞在場所を選べるのも、ナンディの良さのひとつにあげられる。


取材協力:コンチネンタル航空(CO)、フィジー政府観光局
取材:高岸洋行