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現地レポート:サイパン−マリアナ・ツーリズム・アカデミー2009より

  • 2010年2月5日
座席数拡大、アクセス利便向上などで変化の兆し
サイパンマラソン誘致強化で新展開の可能性も


 2009年のマリアナ・ツーリズム・アカデミー(MTA)は12月8日から10日にサイパンで開催され、北海道から九州まで全国の旅行会社から約60名の参加者があった。北マリアナ諸島は同年6月1日にアメリカの連邦となり、11月28日には入国制度が変更になるなど、さまざまな法規が変更となるなかでの研修となった。期間中はセミナー、ワークショップのほか、現地視察が組み込まれ、参加者はそれぞれのテーマごとに現地の様子を見学。サイパンの魅力を再確認するとともに、課題を知る好機となった。
      
      


関空、成田発の増便に期待

 セミナーの冒頭、マリアナ政府観光局(MVA)局長のペリー・テノリオ氏は、北マリアナ諸島にはあらゆるターゲット層にアピールできる素材がそろっていることを強調し、魅力を語った。プレゼンテーションではMVA日本支社の旅行業界担当マネージャーである高久渉氏が登壇し、引き続き安定した座席供給を目標として掲げた。高久氏によると、日本人渡航者数は大阪、名古屋の減便を受け2009年10月には大きく落ち込み、前年比47%減となった。同年10月から12月にかけて、東京、名古屋、大阪の直行便の座席供給量は、前年比56%減となっている。

 とはいえ、渡航者数は上昇傾向にあるといい、12月18日からのアシアナ航空(OZ)の関空線デイリー化、2010年1月からのデルタ航空(DL)増便で数字を戻していけると予想する。ただし、供給座席数の安定が最重要として、今後も各ターゲット層に向けたキャンペーンやメディアへの露出をはかり、安定した送客につなげるプランを示した。

 また、マリアナは自治領であることに変わりはないものの、2009年6月1日にアメリカの連邦のひとつとなった。これにともない11月28日に入国制度が変更。グアム−北マリアナ諸島ビザ免除プログラムが施行され、入国審査料7米ドルが導入された。このほか、グアム、サイパン、ロタ各島はそれぞれ国内扱いとなり、行き来の際に出/入国審査が必要なくなった。このメリットとして、グアム/サイパン間を運航するコンチネンタル航空(CO)が、乗継が便利になったことを紹介。COは12月29日から大阪/グアム線が復便し、日本からは全9都市が発地となる。輸送力が向上し、アクセスしやすくなることをアピールした。

 また、DLは4月以降、成田発着は週21便、名古屋は週7便、使用機材はボーイングB757型機(ビジネスクラス20席、エコノミークラス162席)とし、3月までの運航スケジュールを継続させる予定だという。4月以降もOZ、DLの日本発直行便で週6000席超が供給される見通しで、グアム経由のCO便を加えて安定した送客ができそうだ。


特徴あるホテル立地、連邦化で禁煙法も施行

 ホテル視察は代表的な10軒のホテルを、南と北のコースに分かれてまわった。サイパン島のホテルは島の西側に集中しており、「北コース」では免税店(DFS)やショッピングモール、レストランが集中するガラパン地区周辺、「南コース」では空港に近いエリアのホテルを訪れた。

 ホテルはガラパン地区に近いほどラグジュアリー感があり、パームス・リゾート・サイパンやハイアット・リージェンシー・サイパンのように、チャペルやカフェなどが充実したホテルが多い。これに対して、ガラパン地区まで距離のあるエリアではパシフィック・アイランド・クラブやコーラル・オーシャンポイント・リゾートのようにウォーターパークやゴルフ場を備え、リゾート内ですべてがまかなえるホテルが集中している。エリアによってホテルの特徴が理解しやすく、買物好きな女性層やハネムーナー、観光を楽しみたいアクティブシニア層はガラパン地区に近いホテルを、子連れやゴルフ目当てなどリゾート内での過ごし方が明確な客層には空港に近いエリアのホテル、というような提案ができるだろう。

 また、9月28日には禁煙法が施行され、レストランなど公共の施設内での喫煙が全面禁止された。ホテル内でも禁煙/喫煙の部屋配分が定められ、喫煙できる場所にも規制が設けられている。宿泊施設では80%を禁煙、20%は喫煙可の部屋というが、視察時にはまだ徹底されていなかった。全室禁煙を検討中のホテルがあったり、ベランダでの喫煙について可、不可と判断が分かれているため、しばらくは確認が必要である。

 ちなみに、禁煙の場所での喫煙が発覚した場合、罰金は50米ドル。2回目なら100米ドル、3回目なら200米ドル、というように金額が上がっていくという。


マラソンで新企画、ロングステイにも

 研修中はホテル視察のほか、「ウェディング」「団体・教育」など、6つのテーマ別の視察も実施。今回は「マラソン・ウォーキング」に参加し、MVAが積極的にプロモーションを開始したサイパンマラソンのコースや各スポットを視察した。

 日本ではあまり知られていないが、サイパンマラソンは2010年にハーフマラソンで29回、10キロメートル走では24回の開催となる、サイパンではおなじみの恒例行事だ。5年前からフルマラソンを加え、全部で3つのコースで実施している。ホテルの集中するガラパン地区にあるアメリカンメモリアルパークをスタート/ゴール地点とし、整備された車道の片側を走る。フルマラソンでは公園を出て北方へ向かい、折り返してそのまま南方へ、また折り返して公園まで戻り、10キロメートル走とハーフマラソンは南方を走る。コース中には海岸沿いのルートがあり、道路沿いの緑の木々とその向こうに見えるマリアナ特有の青い海の景色が美しい。北方のコースは少々アップダウンがあるが、比較的なだらかでマラソン初心者にもペース配分がしやすそうだ。

 スタート時間はコースによって異なり、フルマラソンは午前4時30分、ハーフは午前5時45分、そして10キロメートル走は午前6時。早朝であるためか交通量が少なく、これまでに事故などの報告はない。2009年には前回の3倍となる約570名がエントリーし、その75%が日本からの参加者。87歳の参加者もあったといい、完走率は99%だという。大会前日には日本人による日本語のブリーフィングがあるので安心だ。

 開催は毎年3月(2010年は3月6日)。寒い冬場は日本を離れたいアクティブシニアをターゲットに、マラソン参加を目的に早期に現地入りし、練習しながらロングステイ体験という企画も考えられるだろう。スタート/ゴール地点となるガラパン地区には、ホテルや和食レストランがたくさんある。日本食材屋はもちろん、ホールセールのスーパーマーケット「コストコ」でも日本食材が売られているので自炊が楽だ。サイパンのコストコは会員証がなくても買い物ができ、一般のクレジットカードが使えるのもうれしい。

 参加者にとって今回の研修旅行は、マリアナのベーシックな魅力を再確認し、新たな素材を知るきっかけになっただろう。各旅行会社の顧客層にあった魅力を見つけ、マリアナを旅する理由とともに商品に反映していきたい。


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取材協力:マリアナ政府観光局、日本サイパン旅行協会(JSTA)、北マリアナ諸島ホテル協会
(HANMI)、アシアナ航空(OZ)、コンチネンタル航空(CO)、デルタ航空(DL)
取材:岩佐史絵