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取材ノート:肌で現地を知る大切さ、研修旅行でイメージを現実に

  • 2009年12月22日
 ジェットスター航空(JQ)は11月1日から4日にかけて、クイーンズランド州観光公社、ゴールドコースト観光局と共同で「JQメガファム研修ツアー」を実施した。現在ゴールドコーストへ成田と関空からデイリーで運航するJQは、日本向けに年間約20億円の広告予算を投入したプロモーションで消費者の認知度を向上につとめ、JQやゴールドコーストのイメージが浸透してきたという。今回の研修旅行の対象者は、そうしたイメージを持って店頭を訪れる消費者と接するカウンターセールススタッフ。消費者に植え付けたイメージを実際の渡航につなげられるよう、その仲介者となる販売スタッフに知識や情報を肌感覚で身につけてもらうのがねらいだ。


LCCのイメージからJQのイメージの転換ねらう

 JQ日本支社長の片岡優氏によると、現在JQの日本路線における直販比率は38%。国際線の市場では他の航空会社を大きく上回る数値だが、旅行会社経由も依然62%を占める。さらに、年末年始やゴールデンウィークなどのシーズンでは圧倒的に旅行会社を通じた予約が多いという。特に東京路線はまだ1年も経たない新しい市場であり、「カウンタースタッフの知識をつけることが大事」と今回の研修旅行のねらいを説明する。

 販売の拡大には、ゴールドコーストがオーストラリアを代表するデスティネーションであるとの認知と、格安航空会社(LCC)のイメージで終わらない“ジェットスター”ブランドの定着が必要との認識だ。大規模な広告展開の効果は着実に出ているものの、その一方で「JQにはどんなサービスがあるの?」「ゴールドコーストといえばビーチ」という消費者の先入観を払拭し、実際の渡航意欲に結びつけられるような情報やサポートを提供しなければならない。その役割、つまり「イメージ」と「渡航」を結びつけるパイプの役割をカウンタースタッフは担っている。片岡氏は、「日本人の場合、行き先を決めずに旅行会社のカウンターに訪れる人が多い」とし、「その場でリードできるような知識を身につけてもらいたい」という。

 今回の研修では、JQでの渡航はもちろん、現地研修でもオプショナルツアーを複数設定し、消費者と同じような体験ができるように工夫がされていた。初めてゴールドコーストを訪れる参加者には「ここは押さえたい」ポイントを、何回か訪れたことのある人には目新しいポイントを選んでもらい、肌感覚で知識を身につけることで実際の販売に活用しやすくなるとの考えによるものだ。


実際にサービスを体験する意義

 「座席が狭いのではないか」「機内食が出ない」――。「格安航空会社」や「LCC」という単語は少しずつ広まっているが、その印象は日本に多く就航するフルサービスキャリアと異なる部分が先行しているケースが多い。JQにとっては、提供するサービスを知ってもらうことが違和感や不安感を払拭できる方法であり、旅行会社にとってもその役割を果たすことが需要を取り込むチャンスになるといえる。そのためは、販売スタッフが実際に体験することが重要だが、JQの商品を多数販売していても、実際に搭乗するのは今回が初めてというスタッフも少なくない。

 実際、「ほかの航空会社とほとんど変わらない」、「シートも意外とせまくない」といった感想が機内に乗り込んだ瞬間から次々に聞かれた。シートの配列や広さ、機内全体の様子から機内誌にある日本語メニューに至るまで熱心に写真におさめる姿もあった。これは、帰国後に社内で勉強会を開催したり、レポートを提出したりするためだそうで、研修旅行の参加者だけでなく店舗全体の知識向上にもつながるようだ。

 参加者たちが注目していたのは、どんなメニューがあるのか、いくらで購入できるのかといった機内サービスについて。つまり消費者が気になるところだ。食事や毛布などのサービスは組み込まれていないので必要な人は持ち込みが可能。また、食事や飲み物をつける「フィード・ミー・パック」や毛布や耳栓、ヘッドフォンなどがついた「コンフォート・ミー・パック」などを販売するシステムだ。「何がほしいのか、本人の意思に任せるという選択肢を提供していると感じた」と話す参加者もおり、これもサービスの一環であると捉えられている。今回の研修旅行では各種サービスを提供して参加者自身が体感できるようになっていた。機内食のボリュームや味、毛布の質感などを確認し、ひとつひとつ写真におさめたり、メモをとる参加者もいた。


肌で現地を知る大切さ、実体験の楽しさを含めた提案が可能

 現地では、定番のコースや新しい観光スポットを巡るコースなど、約5種類のオプショナルツアーの中から各自好きなコースを選べるようにした。

 特に今回は、JQのゴールドコースト線開設により新しい観光スポットとして注目を集めるようになったエリアも紹介している。空港周辺や空港の裏側にあたる「ツイードエリア」で、これまでは知られていなかったものの空港の活性化にともない認知度が向上し、新たな観光素材として注目されている。

 ツイードエリアでは、マングローブが生い茂る運河でカニ採りを楽しむ「キャッチ・ア・クラブ」や、500種類以上のフルーツが育つ「トロピカルフルーツワールド」が代表的な観光スポット。キャッチ・ア・クラブではマッドクラブというカニを採ったり、ペリカンの餌付けをしたりと、体験型のアクティビティが豊富だ。そこからさらに内陸に進むと500種類以上のフルーツを栽培するトロピカルフルーツワールドがあり、その名の通りの見た目と味の「チョコレートフルーツ」をなど含め、数10種類のフルーツを試食することができる。いずれも日本では認知度は低いものの、ゴールドコースト線の開設により空港から近いエリア、海でも山でもない内陸の観光スポットとして活用できそうだ。

 「ゴールドコーストはできることが少ないイメージだった」という旅行会社スタッフも、オプショナルツアー参加後には「海と山だけでなくテーマパークも一日中いても楽しめる」と笑顔で話す。旅行は商品だがモノではなく、体験や気持ちが重要な要素となるからこそ、肌感覚で覚えることでその楽しさを含めて消費者に提案できる。片岡氏も「直販は増えているが、お金を出して旅行会社のスタッフに相談して決める“安心”を買いたいという人もいる」とし、今後も旅行会社スタッフの知識や情報を身に付ける研修旅行を継続して取り組んでいく意向だ。



取材協力:ジェットスター航空、クイーンズランド州観光公社、ゴールドコースト観光局
取材::本誌 秦野絵里香