取材ノート:選ばれる企画へのヒント−人気番組のプロデューサーが語る
人気テレビ番組のひとつ「世界ふしぎ発見!」。放送開始から20数年以上もたつ長寿番組だ。国内外の“ふしぎ”を訪ね、テーマにあわせたレポートとクイズが同地への憧れを掻き立てる。昨年には、家族全員が一緒になって楽しめ、巧みな企画と構成で旅行への憧れを刺激し続けてきたとして、日本旅行業協会(JATA)のツーリズム大賞メディア部門に選出されたほど、旅行市場への影響力もある。今回はJATA世界旅行博の旅講座に同番組のプロデューサーとして登壇した岩垣保氏が語った、視聴率のとれる企画の立て方をまとめた。旅行商品の企画やプロモーションにも参考になる点が多い。
制作スタッフ全員の企画に傾向が反映
同番組の制作には、プロデューサーをはじめディレクターやリサーチャーなど30人が関わっており、12月に全員が自分の作成した企画を出すことからはじまる。全員が一度に企画を出すと、世間が何に興味があるのか、傾向がわかってくるのだという。ただし、現在は3ヶ月で人の動向が変わるため、もっと短い期間で企画制作をしているというが、各企画には世間で流行るものが如実に反映されている。
「“遠くに行ってみたい”という歌が流行れば南アメリカやアフリカの人気があがるし、東南アジアのブームがくればアンコールワットやミャンマーなどがウケる」と岩垣氏。かつては「行きたいところが見たいところ」であったが、視聴者が自ら旅行を気軽にできる時代に変わり、さらにバブルの崩壊以降は絶景モノが流行るなど、時代とともに傾向が変わってきているという。
ころころと変わる人の気持ちを量るのには番組の視聴率が役に立つ。「最近は冒険などがウケなくて残念」だが、昨年放送した英国のコッツウォルズ地方を取り上げた回では、歩く速度でしか川下りができないのどかな水路などを紹介したところ、16%というこれまでで一番の数字を示したという。そのことから「日本人は疲れている。ゆっくりと旅がしたいのだということがわかった」と岩垣氏。近年では視聴者の動向にあわせて、静かな旅や最近流行りつつあるスピリチュアル旅行、国内などにスポットをあてた番組制作をしている。とはいえ、「来年はどうなるかわからない。今年は政権交代があったので、動きのある内容がウケるかもしれない。フランス革命なんてどうだろう」と、またも視聴者の傾向が変化する予感にアンテナを張る。
世間にあわせてマイナーチェンジ
見せ方にも傾向がある。これまでは絶景なら絶景だけを、スフィンクスならその雄姿だけを見せればよかったが、今ではそこへたどりつく道程までもが見せるポイントとなっている。たとえば60回以上の放送回数というエジプトは、さまざまな仮説があり、その謎解きをするのが現代の流行だ。答えだけを出すのではなく、謎に迫っていくその過程までじっくり見せて初めて視聴率が上がるという。
ほかにも、同番組は家族向けに作られており、当初は演者にもそれぞれ「おとうさん」「おかあさん」の“役割”があったのだというが、「もはや家族で同じテレビ番組を観る時代ではなくなった」今、演者は同じでもその“役割”はなくしたという。「世間にあわせて常にマイナーチェンジをしている。そうして生き延びている番組」と、世間の動向をしっかり見極める必要性を説いた。
情報と傾向を読み取る力
世間の傾向はもちろん、世界中の“ふしぎ”にもアンテナを張り巡らさねばならない番組制作。番組制作のためこれまでに100以上の国や地域を取材してきた長年の経験から、岩垣氏はスタッフに対し、「常に本を読めといっています。映画や芝居、マンガなどあらゆるものを見て流行をチェックさせる」という。今は調べものもインターネットの時代だが、情報が雑多ゆえなにが事実かわからなくなる危険もある。情報の信憑性を探ることも大切なポイントだ。また、英語の文献も併せて読んでいくと情報量が一気に増えるので「英語も必要」とのことだ。
テレビは大変影響力の強いメディアであるため、逆にトレンドを作ることができないかとの問いには、「それも考えたことがあったが、消費者はそんなに甘くない。こちらの思い通りには決してなってくれない」とのこと。タイミングや世間の空気というものがあり、それを見誤るとどんなに内容がよくてもウケないということもある。やはり必要なのは情報量と傾向をしっかり読み取る力に限られているということだ。
制作スタッフ全員の企画に傾向が反映
同番組の制作には、プロデューサーをはじめディレクターやリサーチャーなど30人が関わっており、12月に全員が自分の作成した企画を出すことからはじまる。全員が一度に企画を出すと、世間が何に興味があるのか、傾向がわかってくるのだという。ただし、現在は3ヶ月で人の動向が変わるため、もっと短い期間で企画制作をしているというが、各企画には世間で流行るものが如実に反映されている。
「“遠くに行ってみたい”という歌が流行れば南アメリカやアフリカの人気があがるし、東南アジアのブームがくればアンコールワットやミャンマーなどがウケる」と岩垣氏。かつては「行きたいところが見たいところ」であったが、視聴者が自ら旅行を気軽にできる時代に変わり、さらにバブルの崩壊以降は絶景モノが流行るなど、時代とともに傾向が変わってきているという。
ころころと変わる人の気持ちを量るのには番組の視聴率が役に立つ。「最近は冒険などがウケなくて残念」だが、昨年放送した英国のコッツウォルズ地方を取り上げた回では、歩く速度でしか川下りができないのどかな水路などを紹介したところ、16%というこれまでで一番の数字を示したという。そのことから「日本人は疲れている。ゆっくりと旅がしたいのだということがわかった」と岩垣氏。近年では視聴者の動向にあわせて、静かな旅や最近流行りつつあるスピリチュアル旅行、国内などにスポットをあてた番組制作をしている。とはいえ、「来年はどうなるかわからない。今年は政権交代があったので、動きのある内容がウケるかもしれない。フランス革命なんてどうだろう」と、またも視聴者の傾向が変化する予感にアンテナを張る。
世間にあわせてマイナーチェンジ
見せ方にも傾向がある。これまでは絶景なら絶景だけを、スフィンクスならその雄姿だけを見せればよかったが、今ではそこへたどりつく道程までもが見せるポイントとなっている。たとえば60回以上の放送回数というエジプトは、さまざまな仮説があり、その謎解きをするのが現代の流行だ。答えだけを出すのではなく、謎に迫っていくその過程までじっくり見せて初めて視聴率が上がるという。
ほかにも、同番組は家族向けに作られており、当初は演者にもそれぞれ「おとうさん」「おかあさん」の“役割”があったのだというが、「もはや家族で同じテレビ番組を観る時代ではなくなった」今、演者は同じでもその“役割”はなくしたという。「世間にあわせて常にマイナーチェンジをしている。そうして生き延びている番組」と、世間の動向をしっかり見極める必要性を説いた。
情報と傾向を読み取る力
世間の傾向はもちろん、世界中の“ふしぎ”にもアンテナを張り巡らさねばならない番組制作。番組制作のためこれまでに100以上の国や地域を取材してきた長年の経験から、岩垣氏はスタッフに対し、「常に本を読めといっています。映画や芝居、マンガなどあらゆるものを見て流行をチェックさせる」という。今は調べものもインターネットの時代だが、情報が雑多ゆえなにが事実かわからなくなる危険もある。情報の信憑性を探ることも大切なポイントだ。また、英語の文献も併せて読んでいくと情報量が一気に増えるので「英語も必要」とのことだ。
テレビは大変影響力の強いメディアであるため、逆にトレンドを作ることができないかとの問いには、「それも考えたことがあったが、消費者はそんなに甘くない。こちらの思い通りには決してなってくれない」とのこと。タイミングや世間の空気というものがあり、それを見誤るとどんなに内容がよくてもウケないということもある。やはり必要なのは情報量と傾向をしっかり読み取る力に限られているということだ。
取材:岩佐史絵