現地レポート:台湾 サイクリングで新需要開拓
台湾が新たな旅行スタイルを推進
サイクリングツアーでめぐる日月譚、台北の可能性
台湾ではここ数年、健康志向や地球温暖化への関心の高まりにより、空前の自転車ブームを迎えている。これにあわせ台湾交通部観光局では、海外からの観光客にもサイクリングの魅力を知ってもらい訪問者数の増加につなげようと、新たな取り組みを開始した。9月27日から10月1日には自転車業界の大手「ジャイアント」、チャイナエアライン(CI)とともに、サイクリングイベント「台湾騎跡2009自転車旅行」(Let’s Bike Taiwan 2009)を実施し、日本の旅行会社を招聘、ツアー造成や販売を促した。
「台湾騎跡2009自転車旅行」開催
イベントは南投(日月潭湖畔)を皮切りに、淡水河岸(八里〜漁人)、花蓮(七星潭〜鯉漁埠頭)、台東(池上〜関山)、屏東(大鵬湾)の5ヶ所で開催され、日本、韓国、マレーシア、オーストラリアなど世界各地から約500人が参加した。
日月潭での開会セレモニーには交通部観光局副局長の謝謂君氏、ジャイアント董事長の劉金標氏、CI副総経理の周国興氏が出席。謝謂君氏は台湾サイクリングの魅力を「都市部の公園や景勝地ではサイクリング専用道路の整備が進んでいる」とアピール。また、「ジャイアントに代表される高性能のレンタサイクルを多数提供でき、安心、安全なサイクリングが楽しめる。手軽に地方に足を伸ばし、地方ならではの文化にゆっくり触れるロハストラベルができる」と話す。今後も各地でサイクリングイベントを企画していく考えで、「サイクリングツアーには歓迎の横断幕を用意する」と表明するほどの力の入れようだ。ジャイアントのホームページで情報を発信していることも紹介し、「ツアー造成の際参考にしてほしい。ツアー中に1ヶ所でもサイクリングを組み込むなど、積極的にアピールしてほしい」と期待を込める。
サイクリングが付加価値を生み、格安商品から脱出
サイクリングツアーは、送客側の日本の旅行業界にとってもメリットが大きいはずだ。現在、ホールセール商品を中心に市場に出回る台湾ツアーは、各社が低価格競争にしのぎを削っている状況だ。そのため、時期によっては観光客が集中する台北でホテルがとりにくいという問題があるが、サイクリングを地方で実施することで、デスティネーションの分散化に繋がる。また、サイクリングを組み込むことでツアーに付加価値が生まれ、横並びの低価格競争から一歩抜き出すことも可能だ。旅行ニーズが多様化される中、新規旅行者の開拓、リピーターの確保も期待できる。
実際、今回のイベントに参加した旅行会社からは「安全面が確認できたので安心してツアーに組み込める」「サイクリングは世代が違う人々の共通ツールとして活用できる」「オプションとして活用したい」「台北の新しい楽しみ方として淡水サイクリングを提案したい」など、積極的な声が多く聞かれた。もともと台湾はサイクリング愛好家にとって、海外でのサイクリングとして最初にめざす人が多いという。そんな人々の憧れの地であるということも、ツアー造成や送客の追い風となるだろう。
ダイナスティーホリデーでは今回のイベントにあわせ、初の自転車ツアー「サイクリングパラダイス台湾 日月潭・湖畔のサイクリング4日間」を記念価格の3万7800円で発売。それ以降も、10月から12月までの設定で同様のツアーを7万5800円からで発売するなど、すでに定着化の動きもみられる。
ちなみに、サイクリングが人気の台湾では、CIとジャイアントが台湾発海外ツアーで、自転車に関して10キログラムまでの受託手荷物サービスを導入している。日本からの搭乗者にも今後、同様のサービスが提供できるよう検討中だ。
日月潭で湖畔の自然を満喫する
日月潭は台湾のほぼ中央に位置し、周囲約33キロの台湾最大の湖だ。風光明媚な景勝地で、湖畔には約10キロのサイクリング専用道路が整備されている。今回のイベントには約170人が参加。向山入り口を出発し、前半は紅茶で有名な梅荷園まで約4.5キロをゆっくり走った。
走行中、右手には湖の美しい風景が広がり、気分爽快。思わず自転車を止めて、シャッターを切る参加者が多い。休憩を兼ね、梅荷園で茶菓の接待を受けたあと、ホテルや土産物屋で賑わう繁華街を通り、終点の雲品飯店まで2.5キロを走ってここでサイクリング自体は終了。イベントの後半は雲品埠頭から遊覧船に乗り、対岸でサオ族の歌と踊りを鑑賞し、ラルー島を経て水社埠頭へ戻った。船中からは孔子らを祀る文武廟、蒋介石が母を記念して建てた慈恩塔などが眺められ、短時間ながらクルーズ気分が味わえる。体を動かして自然に触れるサイクリングとイベントでの文化体験や観光のバランスが良く、「今後もこのようなイベントがあれば、サイクリングにプラスアルファの価値が生まれ、ツアーがトータルで楽しいものになる」と期待する旅行会社もあった。
台北/日月潭間は高速道路の整備により所要時間が30分短縮され、片道約3時間30分ほどで到着する。研修ツアーの参加者からは「日常を忘れて自然にゆったりと浸れるコース。自然派志向の人々に最適」「日月潭滞在のオプションとして組み込みたい」との声が聞かれた。
淡水で貴重なマングローブの森を見る
淡水河河口にある淡水は、美しい水辺の景色と海鮮料理で知られる。イベント2日目はこの淡水が舞台。十三行博物館を出発し、前半は八里左岸公園を通って八里埠頭までの、約4.2キロのサイクリングだ。
自転車専用道路が整備され、レンタサイクルで走る人々が多く、台湾の自転車ブームを肌で感じた。まるで海のような河口の風景を楽しみながらのんびり進むと、やがて八里埠頭に到着。そこから自転車ごと対岸の金色水岸へ船で渡る。レストランや土産物屋でにぎわう一角を走りぬけ、再び専用道路へ。このコースでは海水と淡水が混じっている土壌に植生する、貴重なマングローブの森が間近に見られる。またバードウォッチング用の高台もあるなど自然観察の宝庫だ。
夕焼けに染まりはじめた河口を走ること約8キロ、終点の漁人に到着。一部歩道と自転車道が共通の場所があり、走行に注意が必要だが道は走りやすく、各所にレンタサイクルの設備が整っている。淡水の観光、海鮮料理、自然観察を含め、台北を基点に半日コースの観光におすすめだ。近くの新北投温泉でサイクリングの後の汗を流せば、いつもの台湾旅行とは違う感覚を抱くだろう。台北から淡水までは地下鉄のMRTで40分。サイクリング愛好家のみならず、サイクリングという新しいテイストを台湾旅行のリピーターにも推薦したい。
サイクリングツアーでめぐる日月譚、台北の可能性
台湾ではここ数年、健康志向や地球温暖化への関心の高まりにより、空前の自転車ブームを迎えている。これにあわせ台湾交通部観光局では、海外からの観光客にもサイクリングの魅力を知ってもらい訪問者数の増加につなげようと、新たな取り組みを開始した。9月27日から10月1日には自転車業界の大手「ジャイアント」、チャイナエアライン(CI)とともに、サイクリングイベント「台湾騎跡2009自転車旅行」(Let’s Bike Taiwan 2009)を実施し、日本の旅行会社を招聘、ツアー造成や販売を促した。
「台湾騎跡2009自転車旅行」開催
イベントは南投(日月潭湖畔)を皮切りに、淡水河岸(八里〜漁人)、花蓮(七星潭〜鯉漁埠頭)、台東(池上〜関山)、屏東(大鵬湾)の5ヶ所で開催され、日本、韓国、マレーシア、オーストラリアなど世界各地から約500人が参加した。
日月潭での開会セレモニーには交通部観光局副局長の謝謂君氏、ジャイアント董事長の劉金標氏、CI副総経理の周国興氏が出席。謝謂君氏は台湾サイクリングの魅力を「都市部の公園や景勝地ではサイクリング専用道路の整備が進んでいる」とアピール。また、「ジャイアントに代表される高性能のレンタサイクルを多数提供でき、安心、安全なサイクリングが楽しめる。手軽に地方に足を伸ばし、地方ならではの文化にゆっくり触れるロハストラベルができる」と話す。今後も各地でサイクリングイベントを企画していく考えで、「サイクリングツアーには歓迎の横断幕を用意する」と表明するほどの力の入れようだ。ジャイアントのホームページで情報を発信していることも紹介し、「ツアー造成の際参考にしてほしい。ツアー中に1ヶ所でもサイクリングを組み込むなど、積極的にアピールしてほしい」と期待を込める。
サイクリングが付加価値を生み、格安商品から脱出
サイクリングツアーは、送客側の日本の旅行業界にとってもメリットが大きいはずだ。現在、ホールセール商品を中心に市場に出回る台湾ツアーは、各社が低価格競争にしのぎを削っている状況だ。そのため、時期によっては観光客が集中する台北でホテルがとりにくいという問題があるが、サイクリングを地方で実施することで、デスティネーションの分散化に繋がる。また、サイクリングを組み込むことでツアーに付加価値が生まれ、横並びの低価格競争から一歩抜き出すことも可能だ。旅行ニーズが多様化される中、新規旅行者の開拓、リピーターの確保も期待できる。
実際、今回のイベントに参加した旅行会社からは「安全面が確認できたので安心してツアーに組み込める」「サイクリングは世代が違う人々の共通ツールとして活用できる」「オプションとして活用したい」「台北の新しい楽しみ方として淡水サイクリングを提案したい」など、積極的な声が多く聞かれた。もともと台湾はサイクリング愛好家にとって、海外でのサイクリングとして最初にめざす人が多いという。そんな人々の憧れの地であるということも、ツアー造成や送客の追い風となるだろう。
ダイナスティーホリデーでは今回のイベントにあわせ、初の自転車ツアー「サイクリングパラダイス台湾 日月潭・湖畔のサイクリング4日間」を記念価格の3万7800円で発売。それ以降も、10月から12月までの設定で同様のツアーを7万5800円からで発売するなど、すでに定着化の動きもみられる。
ちなみに、サイクリングが人気の台湾では、CIとジャイアントが台湾発海外ツアーで、自転車に関して10キログラムまでの受託手荷物サービスを導入している。日本からの搭乗者にも今後、同様のサービスが提供できるよう検討中だ。
日月潭で湖畔の自然を満喫する
日月潭は台湾のほぼ中央に位置し、周囲約33キロの台湾最大の湖だ。風光明媚な景勝地で、湖畔には約10キロのサイクリング専用道路が整備されている。今回のイベントには約170人が参加。向山入り口を出発し、前半は紅茶で有名な梅荷園まで約4.5キロをゆっくり走った。
走行中、右手には湖の美しい風景が広がり、気分爽快。思わず自転車を止めて、シャッターを切る参加者が多い。休憩を兼ね、梅荷園で茶菓の接待を受けたあと、ホテルや土産物屋で賑わう繁華街を通り、終点の雲品飯店まで2.5キロを走ってここでサイクリング自体は終了。イベントの後半は雲品埠頭から遊覧船に乗り、対岸でサオ族の歌と踊りを鑑賞し、ラルー島を経て水社埠頭へ戻った。船中からは孔子らを祀る文武廟、蒋介石が母を記念して建てた慈恩塔などが眺められ、短時間ながらクルーズ気分が味わえる。体を動かして自然に触れるサイクリングとイベントでの文化体験や観光のバランスが良く、「今後もこのようなイベントがあれば、サイクリングにプラスアルファの価値が生まれ、ツアーがトータルで楽しいものになる」と期待する旅行会社もあった。
台北/日月潭間は高速道路の整備により所要時間が30分短縮され、片道約3時間30分ほどで到着する。研修ツアーの参加者からは「日常を忘れて自然にゆったりと浸れるコース。自然派志向の人々に最適」「日月潭滞在のオプションとして組み込みたい」との声が聞かれた。
淡水で貴重なマングローブの森を見る
淡水河河口にある淡水は、美しい水辺の景色と海鮮料理で知られる。イベント2日目はこの淡水が舞台。十三行博物館を出発し、前半は八里左岸公園を通って八里埠頭までの、約4.2キロのサイクリングだ。
自転車専用道路が整備され、レンタサイクルで走る人々が多く、台湾の自転車ブームを肌で感じた。まるで海のような河口の風景を楽しみながらのんびり進むと、やがて八里埠頭に到着。そこから自転車ごと対岸の金色水岸へ船で渡る。レストランや土産物屋でにぎわう一角を走りぬけ、再び専用道路へ。このコースでは海水と淡水が混じっている土壌に植生する、貴重なマングローブの森が間近に見られる。またバードウォッチング用の高台もあるなど自然観察の宝庫だ。
夕焼けに染まりはじめた河口を走ること約8キロ、終点の漁人に到着。一部歩道と自転車道が共通の場所があり、走行に注意が必要だが道は走りやすく、各所にレンタサイクルの設備が整っている。淡水の観光、海鮮料理、自然観察を含め、台北を基点に半日コースの観光におすすめだ。近くの新北投温泉でサイクリングの後の汗を流せば、いつもの台湾旅行とは違う感覚を抱くだろう。台北から淡水までは地下鉄のMRTで40分。サイクリング愛好家のみならず、サイクリングという新しいテイストを台湾旅行のリピーターにも推薦したい。
台湾レンタサイクル事情
通常のツアーにもサイクリングをプラス
台北市では今年の3月に400台のレンタサイクル
を導入。市内中心部にある11ヶ所から乗り降りが
可能だ。利用は最初にクレジットカードでデポジ
ット3000元を支払う。その後は悠遊カード
(ICカード乗車券)を使用。15分ごとに10元、1日
で40元、5日で150元が引き落とされる。
日月潭のレンタサイクルは1時間100元、2時間
以上は1時間につき80元で加算。淡水では普通車
が4時間以内150元、4時間以上250元。2人乗りが
4時間以内250元、4時間以上350元だ。台北でも淡
水でも日月譚でも、通常のツアーの自由時間にレ
ンタサイクルを利用した観光が可能だ。
なお、台湾では日本と違い自転車は右側走行と
なる。また、ブレーキは右が後輪ブレーキとな
り、これも日本とは反対だ。日本とは異なる点が
あるので、安全なサイクリングを楽しむために
も、注意を徹底する必要がある。
取材協力:チャイナエアライン
取材:戸谷美津子