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現地レポート:西オーストラリア州、ワイルドフラワーシーズンに訪れる魅力

  • 2009年9月15日
訴求力の強い素材ワイルドフラワー、付加価値の高い旅行が可能
人気の観光地も“今だけ”の姿に


 ワイルドフラワーが咲き誇る8月から11月、西オーストラリア州は鮮やかに色付き、春の表情を見せる。同州には約1万2000種のワイルドフラワーが自生し、その約8割が固有種といわれる。花を見るツアーはシニアを中心に根強い人気がある商品で、この季節は壮大な地形や透明度の高い海など、元来の豊富な観光素材に立ち寄りながらワイルドフラワーも楽しむことができ、魅力が倍増する。旅行会社にとっては、花期にあわせて訪問地を変えることで、約4ヶ月間も訴求力の高い花のツアーを催行できる。今回は、ワイルドフラワーシーズンに訪れる魅力と商品造成・販売のポイントを紹介したい。

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西オーストラリア州の春は「1度に2度美味しい」

 同州でワイルドフラワーが楽しめるのは8月から11月の4ヶ月。場所を変えることで長く楽しめるのが特徴だ。取材した8月上旬は州の北部が見頃の時期。花期の“ワイルドフラワー前線”は、北部から徐々に南下する。今回取材で訪れたのは中西部沿岸のコーラル・コーストで、まだ満開にはなっていなかった。しかし、パースから北上するごとに沿道の花が増えていくのを体感できた。

 コーラル・コーストは同州を代表する観光素材を豊富に有するエリアだ。「荒野の墓標」と称される奇岩群のピナクルズや壮大な渓谷など大自然が魅力のカルバリ国立公園、さらに北上すると世界遺産のシャークベイに位置するシェルビーチ、野性のイルカと触れあえるモンキーマイアなどがある。花の季節はこれらの観光スポットとワイルドフラワーの群生が見られる“観光スポット+ワイルドフラワー”に加え、既存の観光スポット自体も彩る“観光スポット×ワイルドフラワー”を楽しむことができる。つまり、西オーストラリア州ではフラワーカーペットのように花自体が作り出す観光スポットとワイルドフラワーが彩る観光スポットといった、“1度に2度美味しい”この時期だけの楽しみ方ができるのだ。

 例えばピナクルズでは、奇岩群の散策中にオーストラリアの国花となっているワイルドフラワーの「ワトル」を見つけた。ピナクルズにはワトルが多く自生しており、小さな黄色の花が黄土色の砂と岩が広がる景観を彩り、春を感じさせてくれる。また、カルバリ国立公園にもワイルドフラワーが多く自生している。オーストラリアを代表するワイルドフラワーの一つ、「バンクシア」も多く見ることができ、花々が公園内でのトレッキングをより楽しませてくれる。




毎年変わる開花状況、「ワイルドフラワーハンティング」を楽しむポイントに

 ワイルドフラワーの開花時期や開花状況は、その年の雨量や気候によってさまざま。視察に参加した旅行会社の企画担当者によると、特にパッケージツアーの主要客層であるシニア層には“花”の素材は集客の強力なフックとなるものの、商品を売る側にとってみれば開花時期や開花状況を確約できない点では難しいこともあるそうだ。それに対し、西オーストラリア州政府観光局日本支局長の吉澤英樹氏は「だからこそ面白い」と話す。“花”という素材は生物であり、季節のものであるからこそ、その時だけしか楽しめない魅力があるのだ。

 今回の視察では、移動中のところどころで降車し、開花状況を確認しながらワイルドフラワーのベストスポットを探した。そこに行けば必ず見られるものをアピールするだけでなく、「自分で見つける」ことも楽しみのひとつと捉えたい。まさに「ワイルドフラワーハンティング」だ。自分の目で確かめ、自分の足で探すからこそ、フラワーカーペットのような花々が群生する場所を見つけたときの喜びは数倍に膨れる。その感動がワイルドフラワーのツアーの魅力といえるだろう。

 とはいえ、やはり「確約できる」という点を求める人も多いだろう。その場合、パースにあるキングスパークをすすめたい。園内に植物園があり、西オーストラリア州に自生するワイルドフラワーを見ることができるのだ。さらに9月1日からの1ヶ月間には「ワイルドフラワーフェスティバル」が開催され、これを旅程に組み込むのもよいだろう。パーク内には州内に自生する数千種のワイルドフラワーが集められ、それを楽しみに世界各国から多くの観光客が訪れるほどの人気のイベントとなっている。


長距離移動を楽しみに変える

 オーストラリア大陸のほぼ半分という広大な西オーストラリア州では、周遊旅行には長距離の移動がつきもの。特にツアーの主要客層となるシニア層の場合、トイレや移動の疲れに不安を感じる人も多いだろう。しかし、トイレが完備された大型バスの用意が可能であるほか、約1時間から1時間30分程度を走るごとに日本のドライブインのような「ロードハウス」と呼ばれる休憩所があり、サンドイッチやフィッシュアンドチップス、マフィンなど軽い食事をとることもできる。ここで一息ついて、移動の疲れを軽減できるだろう。視察に参加した旅行会社の企画担当者も「想像していたよりも移動に対して辛さを感じなかった」とイメージを改めたようだ。

 また、移動の間には、日本とはかけ離れた広大な大地や海、珍しい動物、春なら沿道に自生するワイルドフラワーなど、車窓からの風景を楽しむことができるほか、休憩を交えて立ち寄れる観光スポットも多い。例えば、カルバリ国立公園に向かう途中のポートグレゴリーという街にあるピンクレイク。塩分濃度が高く、それを好むバクテリアが多く繁殖しているために湖面が一面、ピンク色に見える湖だ。季節や天候によっては見えないこともあるそうだが、ピンク色が広がるその風景はとても不思議で神秘的。また、春のキャノーラ畑の風景も格別だ。オーストラリアの真っ青な空とキャノーラの黄色のコントラストがとても美しい。このほか春には、ロードハウスの付近でもワイルドフラワーを見ることができる。ちょっとした工夫で、移動時間の印象が変わる。西オーストラリア州にはそれを助ける素材が多くあり、旅行会社の腕の見せどころとなるだろう。


西オーストラリア州のゲートウェイ、パースの楽しみ方

 西オーストラリア州の周遊観光の際は、ゲートウェイであるパースでの滞在をすすめたい。世界を旅行した兼高かおる氏が「世界で最も美しい街、住んでみたい街」と称したほどの魅力ある都市だ。気候も良く、どこか安心感を与えてくれる人々や街の様子に、こう語られたことが理解できる。

 パース滞在中には車で30分程の港町、フリーマントルにも足をのばしてほしい。街には歴史的建造物が並び、ビーチ沿いでは周辺を散歩したり、ランニングしたりする人々で賑わっている。おすすめの観光スポットは「フリーマントルマーケット」。地元でとれた野菜や果物を売る店をはじめ、雑貨店などの多くの店が軒を連ねており、地元客や観光客など多くの人で賑わっている。地元ならではのお土産を入手したい場合や現地の暮らしぶりを垣間見たいときに訪れたい場所の一つである。また、同マーケット付近にはカフェが何軒も立ち並び、「カプチーノ通り」との愛称で呼ばれる通りがある。オープンカフェで道行く人を眺めながら、のんびりとコーヒーを味わうのも良いだろう。

 マーケットがオープンするのは、金曜、土曜、日曜のみ。金曜日が午前9時から午後9時、土曜が午前9時から午後5時、日曜が午前10時から午後5時までのオープンとなっている。


販売、企画のポイント
ワイルドフラワーシーズンの気候とバリアフリー設備

 日本とは季節が逆のオーストラリア。西オース
トラリア州のワイルドフラワーシーズンは8月から
11月と長いため、8月初旬の気候は春よりも冬の
イメージを抱く人が多いのではないだろうか。
しかし、今回訪れた8月初旬のコーラル・コースト
は日差しが強く、暖かい。むしろ、暑いほどの
気候であった。視察に参加した旅行会社の企画
担当者も「オーストラリアの8月初旬は、まだ冬
で寒いイメージだった。こんなに温かい気候だ
とは知らなかった」と話す。服装も半袖など夏
の装いで十分であるが、早朝と夕方以降は日中
との気温差も大きいため、トレーナーやフリース、
スプリングコートなどを携帯した方が良い。

 また、同州の観光スポットではバリアフリーな
旅行ができることも注目したい。例えばピナクルズ
は、21席以下の車であれば敷地内まで車で入場
でき、車中から奇岩群を楽しむことができる。
また、カルバリ国立公園内のホークスヘッド
展望台もスロープが設けられ、車椅子の利用者にも観光しやすいつくりだ。特に
「ワイルドフラワー」はシニア層にも人気の高い商品であり、高齢で足腰が弱まった
方々にも気軽に楽しめるポイントとなるだろう。



「ワイルドフラワー・エキスプレス」キャンペーンでアピール

 カンタス航空(QF)は、西オーストラリア
州政府観光局とオーストラリア政府観光局と
共同で「ワイルドフラワー・エキスプレス」
キャンペーンを展開している。同キャンペー
ンは、今年で2年目を迎え、多くの旅行会社
の協賛を得ることができているそうだ。今年
は当初6月1日から10月31日までの予定であっ
たが、天候が良好で花のシーズンが長くなる
と見込まれることから、キャンペーン期間を
1ヶ月間延長し、11月30日まで実施する。

 キャンペーンは、QFの成田/パース直行便
を「ワイルドフラワー・エキスプレス」と名
付け、ワイルドフラワーシーズンである8月
から10月にかけて西オーストラリア州の魅力
をアピールすることを目的としたもの。期間
中は、QFと共同で特設サイト「ワイルドフラ
ワーガイド」を設けているほか、対象の旅行
会社のツアーを申し込んだ先着1000名に西
オーストラリア州に自生するワイルドフラ
ワーの説明を記載した「ワイルドフラワー花
めぐりカード」をプレゼントする。さらに、
ワイルドフラワー・エキスプレスの機内でブ
ローシャーを配布し、搭乗したときから
ワイルドフラワーのシーズンを実感すること
ができる。










取材協力:西オーストラリア州政府観光局、カンタス航空
取材:本誌 福田えつこ