現地レポート:南アフリカ、ムプマランガ州とケープタウン
ダイナミックな自然と最新都市の魅力の対比
南アフリカ旅行の新たな可能性
南アフリカのツアーは、ケープタウンにジンバブエとザンビアにまたがるビクトリアフォールズの組みあわせが定番。しかも、薄紫の花が美しいジャカランダの咲く10月に集中する傾向があり、供給が不足して需要に追いつかないという問題もあった。しかし、南アフリカにはサファリや雄大な渓谷、ワイルドフラワーなど、ジャカランダの花以外にも日本人をひき付ける素材がたくさんあり、デスティネーションと観光のピークシーズンを広げれば、今以上に多くの送客が見込める。新たなデスティネーションとして注目されるムプマランガ州と、ケープタウンの新しい観光素材を紹介する。
安全で温暖なムプマランガ州
アフリカといえばサファリ。南アフリカのツアーといえばケープタウン。そんなイメージに新しい魅力を加えてくれるのがムプマランガ州である。南アフリカ北東部に位置する同州は、ヨハネスブルグから空路で約1時間。サファリができる東部のクルーガー国立公園のほか、北部には世界3番目に広い渓谷ブライデ・リバー・キャニオン、先住民が居住する文化村とアフリカの多様な魅力が州内に集まり、南アフリカ観光の定番であるケープタウンとの組みあわせにバラエティを与えることができる。クルーガー・ムプマランガ国際空港から各ポイントまで車で約2時間圏内にあり、旅程が組みやすいのもポイント。
現在、日本から南アフリカへのツアーはジャカランダが季節を迎える10月に集中していた。そこで、南アフリカ観光局(SAT)では、新たな観光ピークシーズンの創出とデスティネーションの開拓をねらって、ムプマランガ州に注目する。SAT日本地区代表ブラッドリー・ブラウワー氏は、「サファリのほか、滝や渓谷、花といった日本人が好む自然がある。農業が盛んで果物や野菜、穀物やナッツなどが豊富。冬も日中は16度から17度と気候も温暖。また、同州は自警団を組織するなど安全に気を配っている」と魅力を強調する。
私営保護区と国立公園のサファリ体験
州内最大の見どころは、200万ヘクタールと日本の四国ほどの広さがあるクルーガー国立公園だ。南半分がムプマランガ州、北半分はリンポポ州に属している。敷地内のロッジに滞在しながら、レンジャーが運転する四輪駆動車で野生動物を探すゲームドライブを楽しむ。
滞在拠点となる施設は私営保護区と国立公園内の2種類。私営施設の代表が、サビ・サンド私営保護区にある高級ロッジ「サビ・サビ・プライベート・ゲームリザーブ」。朝晩のゲームドライブ以外は、ゆっくり過ごせるようにスパやラウンジを併設し、夜は野外で火を囲んでのボマディナーが楽しめる。4つの宿泊施設のうち最高級となる13室のアースロッジはプライベート感にあふれハネムーンに向いているほか、100人収容の会議施設や14人まで食事ができるワインセラーなどインセンティブ向けの施設も充実している。
一方、国立公園内にも高級ロッジがある。モザンビークの国境に近い南東部のシシャンゲニ動物保護区にある「シシャンゲニ・プライベート・ロッジ」だ。シャレーと呼ばれる独立した部屋が22室あり、全室に暖炉と緑を望むパティオが備わる。それぞれ保護区や公園内に宿泊施設があるため、夜に動物の気配を感じることもしばしばだ。
ゲームドライブにおける2施設の大きな違いは、国立公園は夜間のセルフドライブや決められた道より中に入ることが禁じられているの対し、私営保護区は道のないところでも進んでいくことができること。平原に目を凝らし、動物を見つけた時の興奮はサファリならでは。草を食むゾウやサイ、群れになったインパラ、家族で移動するキリンやゾウなど、の動物が自然のままの環境で見られ、ときには動物同士の厳しい弱肉強食の争いが目の前で展開する。夜の空を見上げるとたくさんの星とくっきり見える天の川。大自然の中にいることが実感できる貴重な体験だ。
ブライデ・リバー・キャニオン、ジャカランダ以外のピーク期の可能性
サファリとは異なる趣の自然を感じさせてくれるのが、ムプマランガ州の北部に位置するブライデ・リバー・キャニオン自然保護区だ。グラスコップの町から北上する道沿いに、天気次第で緑の断崖からモザンビークが見渡せるゴッズ・ウィンドウ、3つの奇岩が並ぶスリー・ロンダベルズ、川の侵食でできたバークス・ラック・ポットホールズなど、ダイナミックな渓谷美が堪能できるビューポイントが点在する。なかでも緑で覆われた渓谷として世界一というブライデ・リバー・キャニオンは最大の見どころ。侵食でなく、隆起によって形成された深さ800メートルの渓谷は深い青緑色が穏やかな印象を与えている。2万2664ヘクタールにわたって広がる同保護区は、鳥類、哺乳類、爬虫類など多様な生態系が広がる貴重な動植物の生息地でもあり、現在世界遺産に申請中だという。
同保護区は8月から9月の春になると、オーキッドやカラーをはじめ、ワイルドフラワーがカーペットを敷き詰めたように広がるという。この時期、ネルスプロイト郊外にある植物園「ロウベルト・ナショナル・ボタニカル・ガーデン」でも、ヤマナシ、クンシランなどの開花シーズンを迎える。ジャカランダ以外でも花好きにアピールできる素材となる。
パノラマ・ルートに向かう途中には、ホワイトリバー、ヘイジービュー、サビー、グラスコップなどの小さい町があり、休憩や食事などに利用できる。パノラマ・ルートへの入口となるグラスコップの町は、カフェや人気のパンケーキ店、土産物店が並び、散策が楽しい。ヘイジービューには実際に、先住民のシャンガナ族が暮らしている文化村があるほか、全30室のブティックホテル「キャスターブリッジ・ハロー」や、オレンジとジンジャーの甘いワインを生産する「ロッチャーワイナリー」、さらにスパ、レストラン、ギャラリーなどが集まったキャスターブリッジセンターという複合施設もあり、滞在に便利だ。
W杯に向けて開発が進むケープタウン
南アフリカ観光で外せないのが、第2の都市ケープタウンだ。ボールダーズビーチのペンギン、テーブルマウンテンからケープ半島などのネイチャー系の見どころに加え、南アフリカ最古の建物キャッスル・オブ・グッドホープやカラフルなマレー地区、ネルソン・マンデラ氏が投獄されていた世界遺産のロベン島など南アフリカの歴史を垣間見るポイントも盛りだくさんだ。V&Aウォーターフロントなどでショッピングも楽しめる。また、世界遺産でもあるケープ植物区系保護地域では8月下旬から9月になると国花のプロテアをはじめエリカなどさまざまなワイルドフラワーが咲き誇る。
2010年のFIFAワールドカップ(W杯)に向け、ケープタウンでも新しい施設ができつつある。12月完成予定のグリーンポイント・スタジアムは、ドイツの建築事務所「gmp」設計によるモダンな競技場で、全8試合が予定されている。さらに、4月にはワン&オンリーが初めてのシティ滞在型ホテルをウォーターフロントにオープンした。プライベートアイランドに浮かぶスイート40室を含む計131室のラグジュアリーホテルはスパのほか、英国のスターシェフ、ゴードン・ラムゼイ氏のレストランや創作和食の「NOBU」を併設する豪華さ。こういったケープタウンの最新施設は、“アフリカらしさ”が体感できるムプマランガ州といい対照になる。
サファリ自体は他のアフリカにもあるが、高級ロッジに滞在したり、整備された道路での快適なアクセス、都会でシティライフが楽しめるのは南アフリカならでは。ワインと食、フレンドリーな人といった魅力もある。ムプマランガ州のダイナミックな自然と動物との組みあわせが南アフリカに目を向けさせる新たなテーマとなり、ツアーの可能性が広がる。
南アフリカ旅行の新たな可能性
南アフリカのツアーは、ケープタウンにジンバブエとザンビアにまたがるビクトリアフォールズの組みあわせが定番。しかも、薄紫の花が美しいジャカランダの咲く10月に集中する傾向があり、供給が不足して需要に追いつかないという問題もあった。しかし、南アフリカにはサファリや雄大な渓谷、ワイルドフラワーなど、ジャカランダの花以外にも日本人をひき付ける素材がたくさんあり、デスティネーションと観光のピークシーズンを広げれば、今以上に多くの送客が見込める。新たなデスティネーションとして注目されるムプマランガ州と、ケープタウンの新しい観光素材を紹介する。
安全で温暖なムプマランガ州
アフリカといえばサファリ。南アフリカのツアーといえばケープタウン。そんなイメージに新しい魅力を加えてくれるのがムプマランガ州である。南アフリカ北東部に位置する同州は、ヨハネスブルグから空路で約1時間。サファリができる東部のクルーガー国立公園のほか、北部には世界3番目に広い渓谷ブライデ・リバー・キャニオン、先住民が居住する文化村とアフリカの多様な魅力が州内に集まり、南アフリカ観光の定番であるケープタウンとの組みあわせにバラエティを与えることができる。クルーガー・ムプマランガ国際空港から各ポイントまで車で約2時間圏内にあり、旅程が組みやすいのもポイント。
現在、日本から南アフリカへのツアーはジャカランダが季節を迎える10月に集中していた。そこで、南アフリカ観光局(SAT)では、新たな観光ピークシーズンの創出とデスティネーションの開拓をねらって、ムプマランガ州に注目する。SAT日本地区代表ブラッドリー・ブラウワー氏は、「サファリのほか、滝や渓谷、花といった日本人が好む自然がある。農業が盛んで果物や野菜、穀物やナッツなどが豊富。冬も日中は16度から17度と気候も温暖。また、同州は自警団を組織するなど安全に気を配っている」と魅力を強調する。
私営保護区と国立公園のサファリ体験
州内最大の見どころは、200万ヘクタールと日本の四国ほどの広さがあるクルーガー国立公園だ。南半分がムプマランガ州、北半分はリンポポ州に属している。敷地内のロッジに滞在しながら、レンジャーが運転する四輪駆動車で野生動物を探すゲームドライブを楽しむ。
滞在拠点となる施設は私営保護区と国立公園内の2種類。私営施設の代表が、サビ・サンド私営保護区にある高級ロッジ「サビ・サビ・プライベート・ゲームリザーブ」。朝晩のゲームドライブ以外は、ゆっくり過ごせるようにスパやラウンジを併設し、夜は野外で火を囲んでのボマディナーが楽しめる。4つの宿泊施設のうち最高級となる13室のアースロッジはプライベート感にあふれハネムーンに向いているほか、100人収容の会議施設や14人まで食事ができるワインセラーなどインセンティブ向けの施設も充実している。
一方、国立公園内にも高級ロッジがある。モザンビークの国境に近い南東部のシシャンゲニ動物保護区にある「シシャンゲニ・プライベート・ロッジ」だ。シャレーと呼ばれる独立した部屋が22室あり、全室に暖炉と緑を望むパティオが備わる。それぞれ保護区や公園内に宿泊施設があるため、夜に動物の気配を感じることもしばしばだ。
ゲームドライブにおける2施設の大きな違いは、国立公園は夜間のセルフドライブや決められた道より中に入ることが禁じられているの対し、私営保護区は道のないところでも進んでいくことができること。平原に目を凝らし、動物を見つけた時の興奮はサファリならでは。草を食むゾウやサイ、群れになったインパラ、家族で移動するキリンやゾウなど、の動物が自然のままの環境で見られ、ときには動物同士の厳しい弱肉強食の争いが目の前で展開する。夜の空を見上げるとたくさんの星とくっきり見える天の川。大自然の中にいることが実感できる貴重な体験だ。
ブライデ・リバー・キャニオン、ジャカランダ以外のピーク期の可能性
サファリとは異なる趣の自然を感じさせてくれるのが、ムプマランガ州の北部に位置するブライデ・リバー・キャニオン自然保護区だ。グラスコップの町から北上する道沿いに、天気次第で緑の断崖からモザンビークが見渡せるゴッズ・ウィンドウ、3つの奇岩が並ぶスリー・ロンダベルズ、川の侵食でできたバークス・ラック・ポットホールズなど、ダイナミックな渓谷美が堪能できるビューポイントが点在する。なかでも緑で覆われた渓谷として世界一というブライデ・リバー・キャニオンは最大の見どころ。侵食でなく、隆起によって形成された深さ800メートルの渓谷は深い青緑色が穏やかな印象を与えている。2万2664ヘクタールにわたって広がる同保護区は、鳥類、哺乳類、爬虫類など多様な生態系が広がる貴重な動植物の生息地でもあり、現在世界遺産に申請中だという。
同保護区は8月から9月の春になると、オーキッドやカラーをはじめ、ワイルドフラワーがカーペットを敷き詰めたように広がるという。この時期、ネルスプロイト郊外にある植物園「ロウベルト・ナショナル・ボタニカル・ガーデン」でも、ヤマナシ、クンシランなどの開花シーズンを迎える。ジャカランダ以外でも花好きにアピールできる素材となる。
パノラマ・ルートに向かう途中には、ホワイトリバー、ヘイジービュー、サビー、グラスコップなどの小さい町があり、休憩や食事などに利用できる。パノラマ・ルートへの入口となるグラスコップの町は、カフェや人気のパンケーキ店、土産物店が並び、散策が楽しい。ヘイジービューには実際に、先住民のシャンガナ族が暮らしている文化村があるほか、全30室のブティックホテル「キャスターブリッジ・ハロー」や、オレンジとジンジャーの甘いワインを生産する「ロッチャーワイナリー」、さらにスパ、レストラン、ギャラリーなどが集まったキャスターブリッジセンターという複合施設もあり、滞在に便利だ。
W杯に向けて開発が進むケープタウン
南アフリカ観光で外せないのが、第2の都市ケープタウンだ。ボールダーズビーチのペンギン、テーブルマウンテンからケープ半島などのネイチャー系の見どころに加え、南アフリカ最古の建物キャッスル・オブ・グッドホープやカラフルなマレー地区、ネルソン・マンデラ氏が投獄されていた世界遺産のロベン島など南アフリカの歴史を垣間見るポイントも盛りだくさんだ。V&Aウォーターフロントなどでショッピングも楽しめる。また、世界遺産でもあるケープ植物区系保護地域では8月下旬から9月になると国花のプロテアをはじめエリカなどさまざまなワイルドフラワーが咲き誇る。
2010年のFIFAワールドカップ(W杯)に向け、ケープタウンでも新しい施設ができつつある。12月完成予定のグリーンポイント・スタジアムは、ドイツの建築事務所「gmp」設計によるモダンな競技場で、全8試合が予定されている。さらに、4月にはワン&オンリーが初めてのシティ滞在型ホテルをウォーターフロントにオープンした。プライベートアイランドに浮かぶスイート40室を含む計131室のラグジュアリーホテルはスパのほか、英国のスターシェフ、ゴードン・ラムゼイ氏のレストランや創作和食の「NOBU」を併設する豪華さ。こういったケープタウンの最新施設は、“アフリカらしさ”が体感できるムプマランガ州といい対照になる。
サファリ自体は他のアフリカにもあるが、高級ロッジに滞在したり、整備された道路での快適なアクセス、都会でシティライフが楽しめるのは南アフリカならでは。ワインと食、フレンドリーな人といった魅力もある。ムプマランガ州のダイナミックな自然と動物との組みあわせが南アフリカに目を向けさせる新たなテーマとなり、ツアーの可能性が広がる。
取材協力:南アフリカ観光局
取材:平山喜代江