観光活性化フォーラム
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09年の出国者数予測、1520万人で変わらず−危機後はミドル層の影響強まる

  • 2009年7月22日
 財団法人日本交通公社(JTBF)が開催した海外旅行動向シンポジウムで、JTBF観光文化事業部主任研究員の黒須宏志氏は、2009年の海外旅行者数を昨年末に予測した前年比4.9%減の1520万人と同様の数値を改めて示した。今後、GDPは6%減少で推移すると仮定した場合、出国者数が08年第4四半期から09年の第1四半期の減少率で推移すると2009年は1530万人前後に、08年第4四半期から新型インフルエンザが影響した第2四半期の減少率で推移すると1450万人超となるが、第3四半期は過去の統計よりやや下回るもののこれ以上の減少はなく、第4四半期に少し回復し「1520万人を改定する必要がないだろう」としている。

 この予測の前に黒須氏は今年上期の動向について説明。特に1月から4月は15歳から30代前半と45歳から55歳の女性の出国率が伸びた上、地方のパスポート取得数が前年より6万冊以上の増加したことから、「円高や燃油サーチャージの下落で、これまで海外旅行から遠ざかっていた低頻度層が市場に戻ったサイン」と分析する。動きはじめていた低頻度層が新型インフルエンザにより旅行をキャンセルし、次回の予定が立てられていないとしつつ、一旦加熱されたマーケットにはまだ余熱があるという。今後の動向については、航空座席供給量の減少や経済危機の影響による雇用状況の変化がポイントになるが、「今、将来を見通すのは難しい」と話した。


▽危機後は世代交代進む、ミドル層の影響力台頭

 また黒須氏は今後、35歳から49歳のミドル層の影響力が大きくなるとの見方を示した。今回の発表は「世界経済危機は日本の海旅市場をどう変える?」と題したもの。同氏は今回の危機では08年にミドル層の渡航経験の高い層(高経験層)の実数が増加したこと、ミドル層と20歳から34歳の高経験層が牽引して近距離でのマイル利用率が上昇したこと、09年上期のレイルヨーロッパの日本市場での発券数が伸びたこと、の3点を変化を読み取るポイントとしてあげた上で、「ミドル層が増加して旅行形態に新たな影響を与えることが予測される」と説明した。

 さらに、各年代別の年齢別出国率では、25歳から29歳、30歳から34歳の若年世代は出生年代が最近の現在の同年齢の世代ほど出国率が低下しているが、40歳から44歳、45歳から49歳までのミドル世代は出国率が上昇していることを数値で示した。例えば、25歳から29歳の出国率は、1968年から1972年生まれの世代をピークに低下しているが、40歳から44歳の出国率は現在の同年齢の世代である1963年から67年生まれが最も高い。こうした動向をもとに、海外旅行市場の「世代交代が進む」としている。


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