現地レポート:マレーシア、ランカウイとマラッカ
新キーワードでデスティネーションを再評価
マレーシアの「世界遺産」と「ジオパーク」
昨年、一昨年とユネスコから「世界遺産」と「世界ジオパーク」の認定をうけたマレーシアのマラッカ、ジョージタウン(ペナン島)およびランカウイ。いずれも、マレーシアでは既に人気のデスティネーションであるが、魅力を加える新キーワードとして利用したい。さらに新たなアプローチによって、新客層の取り込みも期待できる。
「世界ジオパーク」、ランカウイに新たなキーワード
無人島を含む99の島からなるケダ州ランカウイ。2007年5月31日にユネスコの「世界ジオパーク」に認定されたというが、その「世界ジオパーク」自体を知らない人が多いのではないだろうか。
「世界ジオパーク」とは世界遺産と同様にユネスコによって認定される「地質学的に貴重な特徴を有する地域」のことだ。認定にはさまざまな条件を満たす必要があり、日本でも北海道の洞爺湖・有珠山や新潟県の糸魚川などが現在、認定をめざして申請作業中である。これまでのところ、世界14ヶ国・地域に57ヶ所のジオパークがあり、ヨーロッパに31、中国に18、そのほかブラジル、イランなどとなっている。ランカウイはこのうち最も新しく、そして東南アジアで初めて認定されたジオパークである。
ランカウイを形成する99の島のうち90の島々を調査した結果、2億から5.5億年以上前の地層であることがわかり、2007年にランカウイ全土が世界ジオパークに認定された。ランカウイでは地域内の3ヶ所を「ジオフォレストパーク」とし、観光サイトとしている。
そのうちの一つ、「キリム・ジオフォレストパーク」は10人乗り程度のボートで島に渡り、マングローブに敷かれた桟橋の上を、時折現れる小動物を眺めながら散策。見物である、こうもりが天井にびっしりくっついた鍾乳洞や太古の昔から変わらぬ植生などを見学する。マングローブにはたくさんの野生動物が生息しており、このときはカニクイサルが近寄ってきた。また、ボートでは糸と針だけのシンプルな釣りも楽しむことができる。
このほかに、さまざまな色の大理石がとれる島「ダヤン・ブンティン」、マレーシア最古の地層である「マチンチャン」があり、どれも視覚的にも美しく、エコツーリズムに則った自然散策やトレッキングなどに向いている。さらに、数億年という長い年月をかけてできた地層や、これらの土地に伝わる伝説などについてガイドから話を聞くと、観光の楽しみは倍増するだろう。
整備が進むマラッカ、滞在プランを推進へ
マラッカ海峡に面したマラッカ、そしてペナン島のジョージタウン。この2つの都市はかつてオランダ、英国の支配下に置かれ、ヨーロッパ文化の影響を強く受けた町並みを現在まで残している。そのため昨年7月にマレーシアで初めて、「マラッカ海峡の歴史都市群」として、ユネスコの世界文化遺産に認定された。
このうち、ペナンはリゾート地として滞在型の商品があるものの、マラッカは現在のところ、クアラルンプールからの日帰りツアーがメインだ。しかし、世界遺産に認定後、ホテルのリノベーションのほか、旧市街やオランダ広場をめぐるリバークルーズといった観光施設の整備が着々と進められており、以前に比べて多数の観光客を受け入れる態勢が整いつつある。週末にはナイトマーケットがあり、大型ショッピングモールや市内の夜景も楽しめる観覧車なども登場し、観光の幅が広がっているので、現地で1泊、2泊するプランも可能だ。
現地オペレーターであるSMIホリデーの藤森博文氏は「FITでは車やガイドの手配でどうしても料金が高くなってしまう」とし、「ある程度、旅行者をまとめた統一コースを作っては」と提案。旅行会社を超えた旅行者を集めたツアーとするなど、より多くの人々にマラッカを堪能してもらえる方法を送客側も一緒に考えていく必要があるだろう。
セールスポイントを絞込み、デスティネーション再評価を
ペナンはビーチと世界文化遺産という珍しい組みあわせであり、また食の楽しみやショッピングなど、マレーシアらしさを凝縮したデスティネーションだ。また、ランカウイはもともと人気の高いリゾート地。豪華リゾートから安価なホテルまでさまざまな宿泊施設があり、島内は免税で酒類も安い。そこに「世界ジオパーク」というキーワードが加わった。
とはいえ、ジオパークは2004年からユネスコの認定活動がはじまったばかり。日本国内に認定されている場所がないこともあって、一般に認知されるまでに時間がかかりそうである。まずは単語自体の認知向上が必要だ。
全体の視察旅行後にはセミナーが開催され、マレーシア政府観光局の徳永誠氏は「どこもいいところを持っているにもかかわらず、その良さがまだ十分認知されていない。これを機にデスティネーションの再評価をしていただき、これまでとは違う売り方を考えてみていただきたい」と要望を語った。マレーシア政観としては販促に利用できるような新たなキャッチコピーの作成や他のアジアリゾートとの差別化をはかり、見どころを絞り込んでのアピール方法を考案していきたい考えを示した。参加者はそれぞれ訪れた場所について意見をまとめ、今後の販促へのヒントを模索していた。
ジオパークも世界遺産もシニアや修学旅行といった層には魅力的なキーワードである。これまでのターゲットのみならず、新たな客層に向けたアピールも可能になるといえるだろう。
マレーシアの「世界遺産」と「ジオパーク」
昨年、一昨年とユネスコから「世界遺産」と「世界ジオパーク」の認定をうけたマレーシアのマラッカ、ジョージタウン(ペナン島)およびランカウイ。いずれも、マレーシアでは既に人気のデスティネーションであるが、魅力を加える新キーワードとして利用したい。さらに新たなアプローチによって、新客層の取り込みも期待できる。
「世界ジオパーク」、ランカウイに新たなキーワード
無人島を含む99の島からなるケダ州ランカウイ。2007年5月31日にユネスコの「世界ジオパーク」に認定されたというが、その「世界ジオパーク」自体を知らない人が多いのではないだろうか。
「世界ジオパーク」とは世界遺産と同様にユネスコによって認定される「地質学的に貴重な特徴を有する地域」のことだ。認定にはさまざまな条件を満たす必要があり、日本でも北海道の洞爺湖・有珠山や新潟県の糸魚川などが現在、認定をめざして申請作業中である。これまでのところ、世界14ヶ国・地域に57ヶ所のジオパークがあり、ヨーロッパに31、中国に18、そのほかブラジル、イランなどとなっている。ランカウイはこのうち最も新しく、そして東南アジアで初めて認定されたジオパークである。
ランカウイを形成する99の島のうち90の島々を調査した結果、2億から5.5億年以上前の地層であることがわかり、2007年にランカウイ全土が世界ジオパークに認定された。ランカウイでは地域内の3ヶ所を「ジオフォレストパーク」とし、観光サイトとしている。
そのうちの一つ、「キリム・ジオフォレストパーク」は10人乗り程度のボートで島に渡り、マングローブに敷かれた桟橋の上を、時折現れる小動物を眺めながら散策。見物である、こうもりが天井にびっしりくっついた鍾乳洞や太古の昔から変わらぬ植生などを見学する。マングローブにはたくさんの野生動物が生息しており、このときはカニクイサルが近寄ってきた。また、ボートでは糸と針だけのシンプルな釣りも楽しむことができる。
このほかに、さまざまな色の大理石がとれる島「ダヤン・ブンティン」、マレーシア最古の地層である「マチンチャン」があり、どれも視覚的にも美しく、エコツーリズムに則った自然散策やトレッキングなどに向いている。さらに、数億年という長い年月をかけてできた地層や、これらの土地に伝わる伝説などについてガイドから話を聞くと、観光の楽しみは倍増するだろう。
整備が進むマラッカ、滞在プランを推進へ
マラッカ海峡に面したマラッカ、そしてペナン島のジョージタウン。この2つの都市はかつてオランダ、英国の支配下に置かれ、ヨーロッパ文化の影響を強く受けた町並みを現在まで残している。そのため昨年7月にマレーシアで初めて、「マラッカ海峡の歴史都市群」として、ユネスコの世界文化遺産に認定された。
このうち、ペナンはリゾート地として滞在型の商品があるものの、マラッカは現在のところ、クアラルンプールからの日帰りツアーがメインだ。しかし、世界遺産に認定後、ホテルのリノベーションのほか、旧市街やオランダ広場をめぐるリバークルーズといった観光施設の整備が着々と進められており、以前に比べて多数の観光客を受け入れる態勢が整いつつある。週末にはナイトマーケットがあり、大型ショッピングモールや市内の夜景も楽しめる観覧車なども登場し、観光の幅が広がっているので、現地で1泊、2泊するプランも可能だ。
現地オペレーターであるSMIホリデーの藤森博文氏は「FITでは車やガイドの手配でどうしても料金が高くなってしまう」とし、「ある程度、旅行者をまとめた統一コースを作っては」と提案。旅行会社を超えた旅行者を集めたツアーとするなど、より多くの人々にマラッカを堪能してもらえる方法を送客側も一緒に考えていく必要があるだろう。
セールスポイントを絞込み、デスティネーション再評価を
ペナンはビーチと世界文化遺産という珍しい組みあわせであり、また食の楽しみやショッピングなど、マレーシアらしさを凝縮したデスティネーションだ。また、ランカウイはもともと人気の高いリゾート地。豪華リゾートから安価なホテルまでさまざまな宿泊施設があり、島内は免税で酒類も安い。そこに「世界ジオパーク」というキーワードが加わった。
とはいえ、ジオパークは2004年からユネスコの認定活動がはじまったばかり。日本国内に認定されている場所がないこともあって、一般に認知されるまでに時間がかかりそうである。まずは単語自体の認知向上が必要だ。
全体の視察旅行後にはセミナーが開催され、マレーシア政府観光局の徳永誠氏は「どこもいいところを持っているにもかかわらず、その良さがまだ十分認知されていない。これを機にデスティネーションの再評価をしていただき、これまでとは違う売り方を考えてみていただきたい」と要望を語った。マレーシア政観としては販促に利用できるような新たなキャッチコピーの作成や他のアジアリゾートとの差別化をはかり、見どころを絞り込んでのアピール方法を考案していきたい考えを示した。参加者はそれぞれ訪れた場所について意見をまとめ、今後の販促へのヒントを模索していた。
ジオパークも世界遺産もシニアや修学旅行といった層には魅力的なキーワードである。これまでのターゲットのみならず、新たな客層に向けたアピールも可能になるといえるだろう。
マレーシア、新型インフルエンザの状況
マレーシア国内では6月18日現在、国内で累計23の
新型インフルエンザの感染が認められた。このうち、
半数は完治し、半数は治療中である。
今回の視察ではマレーシア政府観光局国際マーケ
ティング部長のチョン・ヨク・ハー氏は、「日本か
らの旅行者は自己管理ができており、安全であると
思っている」 と、日本人観光客を歓迎する旨を
語った。
マレーシア入国に際しては、航空機内で質問表を
配り、健康状態を確認。空港では温感センサーつき
カメラでチェックする。その際、少々の待合時間が生じるが、視察時の体験では、長く待
たされるというような状況ではなかった。空港では一部の従業員がマスクをしているだけ
で、ほとんど気にしていない様子。クアラルンプールのような大都市はもちろん、マラッ
カやランカウイといった地方でも新型インフルエンザを危惧する声はなく、これまでと
まったく変わらない平常の状況であった。
取材協力:マレーシア政府観光局
取材:岩佐史絵