スパ基礎知識(1)スパの成り立ちとその種類

  • 2009年3月9日
 高級ホテルがオープンすると、「あのホテルに入っているスパは……」という話題が女性の間で当たり前のように交わされるようになった昨今。旅行においても、スパが旅の1つの「目的」になったといっても過言ではない。旅行業に携わる者としてスパの知識を持っていないと、お客様との会話に付いていけないなんてことも。今週は人気のアジアンスパについて特集するが、まず本日はそのスパの基礎知識として、その成り立ちから説明する。



「水」の健康効果を求め、保養地に

 そもそも「スパ」とはなんだろう。

 キーワードは「水」。人間は古代より水に身体の治癒や健康を求めてきた。紀元前よりギリシャ人たちは入浴の習慣を持ち、ローマ帝国の時代には歴代の王たちが豪華な公衆浴場を建造するようになる。運動のあとに温水と冷水に交互に浸かったり、オイルを塗ったり、ピーリングをすることで代謝を活発にしていった。これが現在のスパの原型といえる。ちなみに「スパ」という言葉は、ベルギーのリエージュ近くの温泉地「スパ」に由来しているという説が有力である。

 やがて、フィンランドのサウナ、オスマントルコのハマムなど、各地でさまざまな形態のスパが登場。その後、スパは温泉や純粋な水が湧き出るところで発達していく。温泉に治癒効果があると考えられ、ドイツのバーデンバーデンや、イギリスのバース、フランスのヴィシー、チェコのカルロヴィバリなどの温泉地に人々は集まり、入浴や温泉水を飲むことで健康を回復させた。戦争で負傷した兵士も、温泉で傷を癒した。

 18世紀になると、王侯貴族の間でスパは高級保養地として発展。劇場やカジノを楽しみながらのんびり療養するスタイルが生まれた。また、1821年には、ドイツ人牧師のセバスチャン・クナイプにより、「クナイプ療法」が開発される。「水療法」を中心に「十分な運動」、「治癒力のある植物(ハーブ)」、「シンプルで栄養のある食事」と「規則正しい生活」を柱に自然治癒力を最大限に引き出す健康法で、人々の関心はますます「水と健康」に向いていった。


ニーズに応じた多様なスパが登場

 治療や保養が目的だったヨーロッパのスパに、「美」の要素を投じたのがアメリカである。1910年には、宿泊をともなわずに気軽に立ち寄れる「デイ・スパ」が登場。エステやネイルケアなどの美容に効果のあるメニューが中心で、少しでも若々しく美しくありたいという女性たちの絶大な支持を得る。さらにデトックスやダイエットなどを目的にした短期滞在型の「デスティネーション(目的型)・スパ」も注目される。

 90年代半ばには、スパ施設を擁するホテルが出現。タイやインドネシアのバリでは、西洋の手法にアジアの伝統療法を加えたトリートメントが生み出され、スパ施設全体の環境演出にも高い評価を得るようになった。アジアンスパは、都市型ホテルでの「シティ・スパ」や、リゾートホテルでの「リゾート・スパ」として旅行者にもっとも身近なものとなっている。

 また、美容面だけでなく、医師の監督下で個人にあった医療行為やトリートメントを施術する「メディカル・スパ」も人気。最近ではアンチ・エイジングやデトックスなど美容を目的とする施術に、ヨガなどのエクササイズと「スパ・キュイジーヌ」と呼ばれるヘルシーな食事を取り入れたトータルなスパが注目されている。