現地レポート:タヒチ、パペーテ・モノステイの有力素材
パペーテ・モノステイで客層の拡充が可能
動機付け強い有力素材が豊富
タヒチを訪れる日本人旅行者の85%はハネムーナー。ボラボラ島など離島での滞在がメインで、ゲートウェイでもあるタヒチ島のパペーテには到着した日、もしくは離島滞在後に1泊から2泊するのが一般的だ。しかし最近は、タヒチアンダンスなどをはじめとするタヒチ文化への人気の高まりや、シニア層の興味にあわせた旅行商品の登場により、パペーテのみに滞在する旅行者も増えてきている。今回は、2008年11月末の「タヒチ・トラベルマート2008」にあわせ、パペーテ・モノステイの現状を取材した。
モノステイを促進できる素材、タヒチアンダンス
パペーテ・モノステイの旅行者は、タヒチアンダンスや絵画などの愛好家をメインとするSIT旅行者が多い。4泊から6泊ほどパペーテに滞在し、ダンスやスケッチなど趣味に打ち込む時間を楽しんでいる。
トラベルマートに参加した旅行会社のスタッフによると、その中でも特にタヒチアンダンス関係の問い合わせが増えているという。「現地で気軽に習うことができるのか」という質問から「本場のタヒチアンダンスを鑑賞したい」などのリクエストが多いようだ。日本では現在、フラダンスのスクールに比べてタヒチアンダンスのスクールの数は少ないが、開講されている教室はどこも人気で入会待ちの状況が続いているという。特に、2006年夏に公開された映画「フラガール」の後に人気が高まったようだ。映画では、フラダンスのみならずタヒチアンダンスの要素も大きく取り入れられたため、そこから人気が出てきたのではないかという。
その需要を確実に取り込んでいくため、現在フレンチポリネシア政府、観光局、航空会社、現地オペレーターが主となり、旅行者のためのタヒチアンダンス検定試験の設定も検討されている。レベル別の証明書の発行など、多くの対象者に向けて現地でダンスレッスンを受ける意味づけをし、タヒチへの渡航を促進したい考えだ。
今回、タヒチへ向かう飛行機に偶然、日本でタヒチアンダンスを習う約60人の生徒の団体が乗り合わせていた。20代から40代の女性たちで、日本では別々の教室に通っている彼女たちがタヒチで一堂に会し、交流し、ダンスを習うのが目的だ。最終日には本場のタヒチアンミュージックやダンスの鑑賞付きディナーパーティがあり、その様子を見学させてもらった。本場のダンスを見る参加者の目つきは真剣そのもので、最後はプロのダンサーと一緒にダンスを踊る機会もあり、参加者は大満足であったようだ。タヒチアンダンスは今後、パペーテでの滞在をさらに促進するうえで、最も強力な素材であるといえるだろう。
憧れを形に、シニア用の商品展開
パペーテでのモノステイが増えている背景には、シニア層の需要も大きい。その多くが、ビーチでのアクティビティよりもゴーギャンへの憧憬やダンス、料理、刺繍、ジュエリー作りなどのタヒチ文化に興味が強く、首都のパペーテでの滞在を選ぶことが多いのだ。
2001年から、シニア向けのモノステイ商品に取り組んでいるスターウッドホテル&リゾート・フレンチポリネシアの日本アジア地区営業部長の松本三保氏によると、ゴーギャンや「南太平洋」といった往年の映画の影響で、タヒチに強い憧れをもっているシニアが多いという。ただ、タヒチの旅行商品はハネムーナーをターゲットにした商品が主流であったため、シニアの需要を取り込むことができなかった。そこで、同社が旅行会社と組み、シニア向けに様々なアクティビティを組み込んだ商品を展開しはじめたところ、毎回、大型バス1台が埋まるほどの売れ行きだという。
松本氏によると、パペーテ・モノステイが上手く定着しているのは日本市場のみ。日替わりで文化系のアクティビティを楽しむことが多いため、「常に何かをしていたいという日本人気質にあっている」とアピールする。
最近、タヒチ観光局ではハイキングの促進もしている。海ばかりが注目されるが、タヒチ島には標高2000メートルを超えるアオライ山があるほか、モーレア島にはゴーギャンが「古城のようだ」と称した稜線の美しい山々、ボラボラ島にもパヒア山、オテマヌ山もあり、初級から上級者まで楽しめるトレッキング・トレイルがある。商品化するにはトレイルの整備やコースの案内表示など課題があるが、現地のオペレーターは「山の上から見下ろすタヒチの海の景色も絶景」とすすめる。将来的には滞在型のアクティビティとして、シニアを中心に人気が出てくるのではないだろうか。
モノステイを推進するホテルの取り組み
パペーテでの滞在をより充実したものにするため、各ホテルではさまざまな取り組みをしている。
ラディソン・プラザ・リゾート・タヒチでは2004年から、タヒチアンダンス、フラワーレイメイキング、タヒチの伝統料理作りなど約15種類のアクティビティを、無料で提供している(一部、材料費などが必要な場合もある)。月曜から土曜日まで毎日3から6つのアクティビティやレッスンプログラムを提供しており、ホテル内で1日中過ごしても飽きないほどだ。パレオ染めのデモンストレーションや、モノイオイルの作り方、パレオの結び方などのユニークなプログラムも多彩だ。その中でも人気のプログラムは、タヒチアンダンスのレッスン。多くの人が参加できるように、開始時間を午後6時と遅く設定している。ショッピングやオプショナルツアーの終了後でも参加しやすい時間設定にしているのがポイントだ。
シェラトン・ホテル・タヒチ・リゾート&スパでも、08年の6月から本格的にホテル内での無料アクティビティを提供しはじめた。同ホテルでの人気レッスンは、タヒチ語のレッスン。子供からシニアまでタヒチ語の簡単な挨拶などを楽しそうに習っているという。
また、メリディアン・タヒチでは2006年より館内に絵画のアトリエを開設。現地アーティストの作品が展示され、宿泊客であれば誰でも自由に見学できる。また、アトリエでは地元のアーティストが講師を勤める絵画教室も開催。視察時に話を聞いた講師によると「初心者でも問題なく、平均4時間ほど時間があれば絵が書ける」とのこと。それに加え、同ホテルでは1年前からすべてのスイート・ルームに、イーゼルとスケッチブックを設置しており、部屋やベランダから臨む景色を思うままに描くことができる。
パペーテ・モノステイの売りのひとつに、離島を含める商品に比べて価格が安い点もあるが、タヒチは物価が高いため、滞在中の費用が他のリゾート・デスティネーションに比べて高くなる。ただし、無料のアクティビティやプログラムを提供しているホテルがあり、それらを活用することで、以前よりも安価に、充実した旅行をすることができるだろう。
動機付け強い有力素材が豊富
タヒチを訪れる日本人旅行者の85%はハネムーナー。ボラボラ島など離島での滞在がメインで、ゲートウェイでもあるタヒチ島のパペーテには到着した日、もしくは離島滞在後に1泊から2泊するのが一般的だ。しかし最近は、タヒチアンダンスなどをはじめとするタヒチ文化への人気の高まりや、シニア層の興味にあわせた旅行商品の登場により、パペーテのみに滞在する旅行者も増えてきている。今回は、2008年11月末の「タヒチ・トラベルマート2008」にあわせ、パペーテ・モノステイの現状を取材した。
モノステイを促進できる素材、タヒチアンダンス
パペーテ・モノステイの旅行者は、タヒチアンダンスや絵画などの愛好家をメインとするSIT旅行者が多い。4泊から6泊ほどパペーテに滞在し、ダンスやスケッチなど趣味に打ち込む時間を楽しんでいる。
トラベルマートに参加した旅行会社のスタッフによると、その中でも特にタヒチアンダンス関係の問い合わせが増えているという。「現地で気軽に習うことができるのか」という質問から「本場のタヒチアンダンスを鑑賞したい」などのリクエストが多いようだ。日本では現在、フラダンスのスクールに比べてタヒチアンダンスのスクールの数は少ないが、開講されている教室はどこも人気で入会待ちの状況が続いているという。特に、2006年夏に公開された映画「フラガール」の後に人気が高まったようだ。映画では、フラダンスのみならずタヒチアンダンスの要素も大きく取り入れられたため、そこから人気が出てきたのではないかという。
その需要を確実に取り込んでいくため、現在フレンチポリネシア政府、観光局、航空会社、現地オペレーターが主となり、旅行者のためのタヒチアンダンス検定試験の設定も検討されている。レベル別の証明書の発行など、多くの対象者に向けて現地でダンスレッスンを受ける意味づけをし、タヒチへの渡航を促進したい考えだ。
今回、タヒチへ向かう飛行機に偶然、日本でタヒチアンダンスを習う約60人の生徒の団体が乗り合わせていた。20代から40代の女性たちで、日本では別々の教室に通っている彼女たちがタヒチで一堂に会し、交流し、ダンスを習うのが目的だ。最終日には本場のタヒチアンミュージックやダンスの鑑賞付きディナーパーティがあり、その様子を見学させてもらった。本場のダンスを見る参加者の目つきは真剣そのもので、最後はプロのダンサーと一緒にダンスを踊る機会もあり、参加者は大満足であったようだ。タヒチアンダンスは今後、パペーテでの滞在をさらに促進するうえで、最も強力な素材であるといえるだろう。
憧れを形に、シニア用の商品展開
パペーテでのモノステイが増えている背景には、シニア層の需要も大きい。その多くが、ビーチでのアクティビティよりもゴーギャンへの憧憬やダンス、料理、刺繍、ジュエリー作りなどのタヒチ文化に興味が強く、首都のパペーテでの滞在を選ぶことが多いのだ。
2001年から、シニア向けのモノステイ商品に取り組んでいるスターウッドホテル&リゾート・フレンチポリネシアの日本アジア地区営業部長の松本三保氏によると、ゴーギャンや「南太平洋」といった往年の映画の影響で、タヒチに強い憧れをもっているシニアが多いという。ただ、タヒチの旅行商品はハネムーナーをターゲットにした商品が主流であったため、シニアの需要を取り込むことができなかった。そこで、同社が旅行会社と組み、シニア向けに様々なアクティビティを組み込んだ商品を展開しはじめたところ、毎回、大型バス1台が埋まるほどの売れ行きだという。
松本氏によると、パペーテ・モノステイが上手く定着しているのは日本市場のみ。日替わりで文化系のアクティビティを楽しむことが多いため、「常に何かをしていたいという日本人気質にあっている」とアピールする。
最近、タヒチ観光局ではハイキングの促進もしている。海ばかりが注目されるが、タヒチ島には標高2000メートルを超えるアオライ山があるほか、モーレア島にはゴーギャンが「古城のようだ」と称した稜線の美しい山々、ボラボラ島にもパヒア山、オテマヌ山もあり、初級から上級者まで楽しめるトレッキング・トレイルがある。商品化するにはトレイルの整備やコースの案内表示など課題があるが、現地のオペレーターは「山の上から見下ろすタヒチの海の景色も絶景」とすすめる。将来的には滞在型のアクティビティとして、シニアを中心に人気が出てくるのではないだろうか。
モノステイを推進するホテルの取り組み
パペーテでの滞在をより充実したものにするため、各ホテルではさまざまな取り組みをしている。
ラディソン・プラザ・リゾート・タヒチでは2004年から、タヒチアンダンス、フラワーレイメイキング、タヒチの伝統料理作りなど約15種類のアクティビティを、無料で提供している(一部、材料費などが必要な場合もある)。月曜から土曜日まで毎日3から6つのアクティビティやレッスンプログラムを提供しており、ホテル内で1日中過ごしても飽きないほどだ。パレオ染めのデモンストレーションや、モノイオイルの作り方、パレオの結び方などのユニークなプログラムも多彩だ。その中でも人気のプログラムは、タヒチアンダンスのレッスン。多くの人が参加できるように、開始時間を午後6時と遅く設定している。ショッピングやオプショナルツアーの終了後でも参加しやすい時間設定にしているのがポイントだ。
シェラトン・ホテル・タヒチ・リゾート&スパでも、08年の6月から本格的にホテル内での無料アクティビティを提供しはじめた。同ホテルでの人気レッスンは、タヒチ語のレッスン。子供からシニアまでタヒチ語の簡単な挨拶などを楽しそうに習っているという。
また、メリディアン・タヒチでは2006年より館内に絵画のアトリエを開設。現地アーティストの作品が展示され、宿泊客であれば誰でも自由に見学できる。また、アトリエでは地元のアーティストが講師を勤める絵画教室も開催。視察時に話を聞いた講師によると「初心者でも問題なく、平均4時間ほど時間があれば絵が書ける」とのこと。それに加え、同ホテルでは1年前からすべてのスイート・ルームに、イーゼルとスケッチブックを設置しており、部屋やベランダから臨む景色を思うままに描くことができる。
パペーテ・モノステイの売りのひとつに、離島を含める商品に比べて価格が安い点もあるが、タヒチは物価が高いため、滞在中の費用が他のリゾート・デスティネーションに比べて高くなる。ただし、無料のアクティビティやプログラムを提供しているホテルがあり、それらを活用することで、以前よりも安価に、充実した旅行をすることができるだろう。
取材協力:タヒチ観光局、エア・タヒチ・ヌイ
取材:本誌 高橋絵美