現地レポート ソウル経由で行くハワイ
地方発ソウル経由でハワイという選択肢−大韓航空の新潟線に搭乗
大韓航空(KE)は2007年10月から、新潟/仁川線と仁川/ホノルル線の同日接続を開始した。往復とも同日乗継が可能で、毎日1往復便を運航。07年は3ヶ月で約700人、08年は9月末日現在で1400人以上が利用した。各航空会社の戦略の影響で日本路線の座席供給量が減少しつつある中、ハワイへの送客の維持・増加は、地方からの誘客がカギとなる。国内での乗継のみならず、地方発の路線が充実する韓国や台湾などの近隣のハブで乗り継ぐことで、利便性が高まる場合も多い。こうした状況を背景に、ハワイ州観光局(HTJ)は先ごろ、新潟発の研修旅行を実施。ソウル経由ホノルル線の送客に力を入れていたKEの新潟線からのハワイ旅行を体験してみた。(取材協力:ハワイ州観光局、大韓航空、取材:工藤史歩)
帰国時に改めて評価された、同日乗継便の魅力
大韓航空(KE)は、新潟/仁川線を利用したソウル乗り継ぎのホノルル線について、2003年11月に運休した日本航空(JL)の新潟/ホノルル直行便の年間利用者数のピークであった約1万人の送客を目標に、認知度を高めたい考えだ。日本でのチェックイン時に、仁川/ホノルル間の搭乗券が発券されるため、仁川での手続きは不要。日本で預けたスーツケースは、バゲージスルーでホノルルまで直接運ばれる。乗り継ぎにおけるストレスはほとんど感じられない。
さらに同日乗継便の魅力を改めて認識したのが帰国時だ。実は、出発時は気力も体力も満ちているため、参加者からは「新潟ではなく成田出発でもさほど苦にならない」という意見があった。しかし、ハワイで遊び疲れて、あとは帰るだけの帰国時は、機内もどことなく重苦しい雰囲気。もし成田空港に帰着していたら、広い空港内を歩き、混雑する入国審査を終わらせ、重さを増したスーツケースを引きずって駅のホームまで下り、京成スカイライナーに乗って上野駅へ。そこから荷物を持って新幹線に乗り換えて新潟駅まで2時間8分かかる。それがソウル乗り換えなら、バゲージスルーなので新潟でピックアップができ、ソウルでの乗継時間は1時間15分。時間を持て余すどころか、韓国海苔やキムチを物色して時間が足りなくなり、ゲートまで小走りに駆けつける参加者もいた。「復路の気軽さを強くアピールしたい」とある企画担当者は実感を込めていう。
ただし、ネックは往路が仁川に午前11時55分着、午後8時00分発という、約8時間の待機時間。KE新潟支店ではこの時間を有意義に、かつ魅力的に見せることが、送客増加へのポイントと考えている。そこで同便利用者を対象に、ソウル市内を周遊する無料の「CITY TOUR」(シティツアー)を用意。一度の旅行でハワイとソウルを楽しめる「2度おいしいフライト」の演出をはかる。日本とソウルは時差がなく、気温は新潟とほぼ同じか、若干ソウルが肌寒い程度。ソウル用の身支度は特に必要ないのも、トランジットツアーではうれしいポイントだ。ツアーに参加できるのは、搭乗まで6時間以上の待機時間がある5名以上のグループ。KE新潟支店は、旅行会社を通した10日前までの予約に対応している。
日本語ガイドと合流して、
いざ、シティツアーの始まり
午前11時30分。定刻より25分早く仁川空港に到着した。第1ターミナル2階の到着フロアに降り立つと、案内板にはハングル語、英語、中国語に加えて日本語も併記されている。これなら迷う心配はなさそうだ。機内で配られる日本語で印刷された入国カードと旅行者携帯品申告書を提出して、午後0時過ぎには1階の入国フロアからスムーズに入国できた。日本とソウルは時差がなく、気温は新潟とほぼ同じか、若干ソウルが肌寒い程度。ソウル用の身支度は特に必要ないのも、ハワイへ行く途中のトランジットツアーではうれしいポイントだ。
トランジットツアー受付デスクでPNRを提示して、参加受付を済ませる。ツアーは日本人が参加している場合、基本的には日本語で案内。英語での対応もあるが、バスには必ず1人、日本語を話せるガイドがつく。今回の車中では韓国人から見たデスティネーションとしての日本、韓国を訪れる日本人旅行者の変化、韓流スターの最新情報、韓流コスメなど、さまざまなトピックで話が弾む。
ツアーは昼食つきで、基本コースは大統領官邸「青瓦台」、金融街の汝矣島、ワールドカップ競技場などをめぐるが、今回は雨天であったこともあり、「青瓦台」の展示館「孝子洞舎廊下房」を見学後、東大門市場の「渋谷109」というべき若者向けのショッピングビル「doota!」で約1時間のフリータイム。午後5時前に集合して、空港に到着したのは午後6時。午後8時のフライトにぴったりの時間だ。「これなら添乗員なしのツアーでも安心して送客できる」「ガイドは日本語が堪能で気配りがあり、仕切りも上手。ハワイの前にソウルの空気を味わえて、お得感を打ち出せそう」と、参加者の大半が、ガイドの段取りのよさを評価。
一方で、「ハワイ旅行を前に浮き足立っている観光客が、韓国の歴史に興味を持つだろうか」(営業職)という意見や、「ハワイへ行く前にシャワーを浴びる時間がないので、追加料金が必要でも韓国ならではの垢すりや汗蒸幕(韓国式サウナ)を体験できるといいのでは」(予約手配担当)といった提案もあった。乗継時間を有効に使えば満足度が上がるのは間違いなく、自社の客層にあわせたオリジナルのツアーの催行も、ハワイツアーの魅力作りの一案として提案できるだろう。行きも帰りも魅力ある「ソウル付きハワイ」として、視点次第でさまざまなマーケットにアピールできそうだ。
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大韓航空(KE)は2007年10月から、新潟/仁川線と仁川/ホノルル線の同日接続を開始した。往復とも同日乗継が可能で、毎日1往復便を運航。07年は3ヶ月で約700人、08年は9月末日現在で1400人以上が利用した。各航空会社の戦略の影響で日本路線の座席供給量が減少しつつある中、ハワイへの送客の維持・増加は、地方からの誘客がカギとなる。国内での乗継のみならず、地方発の路線が充実する韓国や台湾などの近隣のハブで乗り継ぐことで、利便性が高まる場合も多い。こうした状況を背景に、ハワイ州観光局(HTJ)は先ごろ、新潟発の研修旅行を実施。ソウル経由ホノルル線の送客に力を入れていたKEの新潟線からのハワイ旅行を体験してみた。(取材協力:ハワイ州観光局、大韓航空、取材:工藤史歩)
帰国時に改めて評価された、同日乗継便の魅力
大韓航空(KE)は、新潟/仁川線を利用したソウル乗り継ぎのホノルル線について、2003年11月に運休した日本航空(JL)の新潟/ホノルル直行便の年間利用者数のピークであった約1万人の送客を目標に、認知度を高めたい考えだ。日本でのチェックイン時に、仁川/ホノルル間の搭乗券が発券されるため、仁川での手続きは不要。日本で預けたスーツケースは、バゲージスルーでホノルルまで直接運ばれる。乗り継ぎにおけるストレスはほとんど感じられない。
さらに同日乗継便の魅力を改めて認識したのが帰国時だ。実は、出発時は気力も体力も満ちているため、参加者からは「新潟ではなく成田出発でもさほど苦にならない」という意見があった。しかし、ハワイで遊び疲れて、あとは帰るだけの帰国時は、機内もどことなく重苦しい雰囲気。もし成田空港に帰着していたら、広い空港内を歩き、混雑する入国審査を終わらせ、重さを増したスーツケースを引きずって駅のホームまで下り、京成スカイライナーに乗って上野駅へ。そこから荷物を持って新幹線に乗り換えて新潟駅まで2時間8分かかる。それがソウル乗り換えなら、バゲージスルーなので新潟でピックアップができ、ソウルでの乗継時間は1時間15分。時間を持て余すどころか、韓国海苔やキムチを物色して時間が足りなくなり、ゲートまで小走りに駆けつける参加者もいた。「復路の気軽さを強くアピールしたい」とある企画担当者は実感を込めていう。
ただし、ネックは往路が仁川に午前11時55分着、午後8時00分発という、約8時間の待機時間。KE新潟支店ではこの時間を有意義に、かつ魅力的に見せることが、送客増加へのポイントと考えている。そこで同便利用者を対象に、ソウル市内を周遊する無料の「CITY TOUR」(シティツアー)を用意。一度の旅行でハワイとソウルを楽しめる「2度おいしいフライト」の演出をはかる。日本とソウルは時差がなく、気温は新潟とほぼ同じか、若干ソウルが肌寒い程度。ソウル用の身支度は特に必要ないのも、トランジットツアーではうれしいポイントだ。ツアーに参加できるのは、搭乗まで6時間以上の待機時間がある5名以上のグループ。KE新潟支店は、旅行会社を通した10日前までの予約に対応している。
日本語ガイドと合流して、
いざ、シティツアーの始まり
午前11時30分。定刻より25分早く仁川空港に到着した。第1ターミナル2階の到着フロアに降り立つと、案内板にはハングル語、英語、中国語に加えて日本語も併記されている。これなら迷う心配はなさそうだ。機内で配られる日本語で印刷された入国カードと旅行者携帯品申告書を提出して、午後0時過ぎには1階の入国フロアからスムーズに入国できた。日本とソウルは時差がなく、気温は新潟とほぼ同じか、若干ソウルが肌寒い程度。ソウル用の身支度は特に必要ないのも、ハワイへ行く途中のトランジットツアーではうれしいポイントだ。
トランジットツアー受付デスクでPNRを提示して、参加受付を済ませる。ツアーは日本人が参加している場合、基本的には日本語で案内。英語での対応もあるが、バスには必ず1人、日本語を話せるガイドがつく。今回の車中では韓国人から見たデスティネーションとしての日本、韓国を訪れる日本人旅行者の変化、韓流スターの最新情報、韓流コスメなど、さまざまなトピックで話が弾む。
ツアーは昼食つきで、基本コースは大統領官邸「青瓦台」、金融街の汝矣島、ワールドカップ競技場などをめぐるが、今回は雨天であったこともあり、「青瓦台」の展示館「孝子洞舎廊下房」を見学後、東大門市場の「渋谷109」というべき若者向けのショッピングビル「doota!」で約1時間のフリータイム。午後5時前に集合して、空港に到着したのは午後6時。午後8時のフライトにぴったりの時間だ。「これなら添乗員なしのツアーでも安心して送客できる」「ガイドは日本語が堪能で気配りがあり、仕切りも上手。ハワイの前にソウルの空気を味わえて、お得感を打ち出せそう」と、参加者の大半が、ガイドの段取りのよさを評価。
一方で、「ハワイ旅行を前に浮き足立っている観光客が、韓国の歴史に興味を持つだろうか」(営業職)という意見や、「ハワイへ行く前にシャワーを浴びる時間がないので、追加料金が必要でも韓国ならではの垢すりや汗蒸幕(韓国式サウナ)を体験できるといいのでは」(予約手配担当)といった提案もあった。乗継時間を有効に使えば満足度が上がるのは間違いなく、自社の客層にあわせたオリジナルのツアーの催行も、ハワイツアーの魅力作りの一案として提案できるだろう。行きも帰りも魅力ある「ソウル付きハワイ」として、視点次第でさまざまなマーケットにアピールできそうだ。
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