現地レポート:教育旅行の素材に恵まれたケアンズ

  • 2008年10月10日
教育旅行の素材に恵まれたケアンズ
生徒の笑顔いっぱいの「修学旅行+語学研修」に同行取材


ケアンズはリゾートのみならず、教育旅行先としても発展してきた。その理由は、世界遺産にも認定された自然や体験型アクティビティ、学校交流など、教育旅行に適した素材が豊富にあること。佼成学園女子高等高校(東京都)が今年、新しい取組みとして実施した「修学旅行+語学研修」の教育旅行に同行し、生徒たちの表情を通して、その実力を改めて知った。生徒たちの様子を中心に、ケアンズの教育旅行をレポートする。(取材協力:オーストラリア政府観光局、クイーンズランド州観光公社、取材:戸谷美津子)




2つの世界自然遺産を体験

 佼成学園女子高等学校にとって、海外での修学旅行は初めての体験だが、そのデスティネーションにケアンズを選んだのは、治安の良さ、1時間の時差、受け入れ態勢などに加え、2つの世界自然遺産を体験できることだ。

 その1つが世界最古の熱帯雨林。キュランダでは地元のレンジャーから熱帯雨林について講義を受けた後、熱帯雨林を育てる目的で、班ごとに植樹を体験する。なかには1年で数メートル成長する木もあるとのことだ。生徒たちは「来年訪れる後輩に、成長を見て欲しい」「10年後にまた来たい」と、地元のメディアによる取材にも笑顔で応える。

 2つ目の世界自然遺産「グレートバリアリーフ」は、グリーン島を訪れた。旅程にはさまざまな見所が多いが、今回の旅程のなかで唯一の海での体験とあって、生徒たちにとって待望のアクティビティだ。島内ではシュノーケリングやビーチバレー、グラスボートでの海中観察を楽しむ。のびのびと遊ぶだけでなく、入島料の一部が島の環境保護に使われているエコツーリズムの島であるグリーン島での観光は、生徒に環境を意識させるきっかけになったようだ。通常7月上旬は晴天で暑い日が多いが、この日は予想外の曇り空と小雨に見舞われ、ちょっと寒そうな生徒たちもおり、万が一に備えて全天候に対応できるような用意が必要なことを改めて痛感した。








1日ホームステイは貴重な体験

 今回の修学旅行の目的の1つは、英語学習の成果を実際の英語圏でいかすこと。だが、ケアンズではほとんどの場所で日本語が通じてしまう。しかし、必ず英語で話さなくてはいけない場面があった。それが、修学旅行で全員が参加した1泊2日のホームステイだ。

 出迎えの時は緊張した面持ちで、握手すらぎこちない生徒たち。だが、次の日の別れの場面では、ホストファミリーと固いハグを交わし、涙ぐむ生徒たちの姿が多く見られた。英語に関しても「子供たちに上手だと言われた」「あまり話せなかったけど、言われていることは分かった」「家族のことなど色々話した」「他国の留学生がいたので、英語で交流した」と、それぞれが手ごたえを感じていた。中には「ホストマザーはシングルマザーで、自分の生き方や子供とのかかわりなどを率直に話してくれた」と、心を開いた対話の感動を語る生徒も。言葉に留まらない異文化交流は、印象深いものとして心に刻まれたようだ。

 ただし、ホームステイは初日の設定であったため、当日は早朝にケアンズに到着し、観光後の午後3時30分からホームステイというスケジュールは非常にタイトであった。生徒たちに疲労が見られ、来年は改善の余地があるとの指摘が教師から出た。こうした経験も、次回の改善に向けた成果となる。


ケアンズの街の規模が班別行動に最適

 近年の修学旅行の行程では、体験学習と班別行動が増える傾向にある。自然の豊かなケアンズではさまざまな体験プログラムが用意され、町の規模から班別行動にもふさわしい。4日目の「市内自主研修」では、自由に町を散策する班と、バロン川でのラフティング、トリニティ・インレットのリバークルーズに参加する班に分かれて行動した。ラフティングでは日頃できないスリリングな体験を、リバークルーズではマングローブの林の中を遡上した後、クロコダイルファームで野生のワニや人工孵化した子ワニを観察。ケアンズならではの体験を楽しんだ。



気持ちを切り替え、4週間の語学研修へ

 修学旅行最終日、語学研修に参加する生徒たちは、帰国するグループと涙で別れた。やはり少々、心細さがあるのかもしれない。しかし、受け入れ校の「トリニティ・アングリカン・スクール」に到着し、オリエンテーションが始まると、みんなの顔に笑顔がもどった。さすが若者、気持ちの切り替えが早い。

 ランチの後、研修最初の授業となったスイミングを終えると、午後3時30分にこれから4週間お世話になるホストファミリーと対面。修学旅行での体験が効いているためか、生徒たちはさほどの緊張も見せず、自然な様子でホストファミリーの車に乗り込んでいく。

 語学研修のプログラムは、午前中は英語のレッスン、午後はスポーツや音楽、美術、料理など。午後の授業では現地校の生徒とのプログラムもあり、まさに“留学”を体験する。英語の授業の先生は長年日本で英語を教えていたベテランで、分かりやすい英語で話す。しかし、速さは普通のテンポで、教頭の井上まゆみ教諭は「生徒たちは流暢な英語についていっている」と感心、日頃の成果を感じていたようだ。授業はクイズやゲームを取り入れ、楽しみながらやる気を掻き立てて進む。生徒たちには「楽しい」「知らないことをたくさん教えてくれる」と好評だった。

 休み時間の過ごし方も、日本の学校との違いがある。教室の中から出るのが規則で、生徒たちは外のベンチでおやつを食べたり、おしゃべりしたり…。そんな時も時々先生たちが加わって、「授業はどう?」など話かけている。残念ながら取材日は現地の学校が休日であったため現地の生徒は不在だったが、通常なら現地の生徒たちも休み時間は外に出るので、日常の学校の風景を肌で感じることができる。修学旅行で現地になじみ、絶好のスタートを切ったことで、8月9日までの日程をスムーズに、そして従来以上の有意義な語学研修になったに違いない。