現地レポート:フランス−世界遺産とグルメの街、リヨン

  • 2008年7月29日
世界遺産とグルメの街、リヨン
パリや南仏と組み合わせ、新しいフランス旅行の素材として有望


フランス第2の都市リヨン。フランス中央部ローヌアルプ地方の中心都市で、パリからTGVで2時間のところに位置している。街の中心に流れる2つの大河ローヌ川とソーヌ川がゆったりとした雰囲気を演出し、世界遺産にも登録されている歴史地区やグルメなど、観光客をひきつける要素が多い都市だ。パリからの2泊3日の小旅行先としてすすめたい。(取材協力:フランス政府観光局)




街散策でルネサンスの時代にタイムスリップ

 リヨンは、ローマ時代に建設された2000年の歴史を持つ古都。ローマ時代、中世、ルネサンス、近代と時代の変遷が感じられる歴史地区は、1998年に世界遺産に登録された。リヨンの魅力や見どころも、この歴史地区に集約されているといっても過言ではない。歴史地区は中心を流れるソーヌ川を境に大きく2つに分かれ、西岸はレンガ色のイタリア・ルネサンス様式の建物が建ち並ぶ旧市街。東岸はベルクール広場や、リヨン随一のショッピングストリートであるレピュブリック通りなど、学生や若者達で賑わう新市街だ。

 なかでも見逃せないのは、旧市街。サン・ジャン大司教教会やサン・ポール教会までぶらりと歩いてみると、車が滅多に通らず、旧市街に住む子供たちが走り回る姿が目に付く。レンガ色の建築物はほぼ当時の姿をとどめており、歩いているとルネサンスの時代にタイムスリップしたような感覚に陥る。通りのあちこちにはベーカリーやオープンテラスを持つレストランがあり、オープンテラスで旧市街の雰囲気に浸りながらランチやカフェもおすすめ。ベーカリーでは、焼きたてのフランスパンや手作りのスイーツが並び、地元の人でにぎわっている。

 もう一つ、旧市街の見どころはトラブールと呼ばれる抜け道。そもそも、リヨンは15世紀後半に始まった絹織物業が19世紀前半にはヨ−ロッパ最大規模となった歴史があり、この抜け道は、絹職人が商品を雨の日でも濡らさずに運べるように作られたものだ。第二次世界大戦中にはレジスタンスの逃げ道としても使われた。街中には300もの抜け道が張り巡らされ、その多くは公共の通路と定められて現在も使われている。観光客が自由に通れる抜け道は限られており、それらの入り口には金のプレートがある。中は暗いが、人がきちんと通れる高さと幅があり、今も重宝されている理由がわかる。散策しながら、そんな歴史を体験できるのも、リヨンならではの観光だ。

 そして、リヨンの歴史的な雰囲気を滞在先でも楽しめるのが、旧市街の真ん中に位置する高級ホテル「クール・デ・ロジェ」。14世紀に建てられた城館を改装したもので、各客室の内装は斬新だが、壁や階段は当時のまま。ルネッサンス建築で滞在する貴重な経験ができるホテルだ。







星つきレストランと庶民の味、
グルメ目的の旅行も可能


 周辺をボジョレー地区などの良質で肥沃な土壌に囲まれ、さらに鉄道や高速道路などの発達した交通機関が整い、フランス全土からの良質な食材を集めやすい環境にあるリヨンは、グルメの街として名高い。また、リヨンは昔から交易の地として経済的にも栄え、ルネッサンス期に洗練されたイタリアの食文化がもたらされたという歴史的背景もある。

 リヨンのグルメの魅力は2タイプある。その1つは、ミシュランの星付き高級レストラン。日本にも出店する3ツ星シェフのポール・ボキューズを筆頭に、市内には星付き高級レストランが18軒ある。実はリヨンがあるローヌアルプ地方は、フランスでも2番目に多くのミシュラン・シェフがいる地方であり、その多くがリヨン付近に集中。ランチであれば、比較的安価で提供しているレストランもあり、それらを目当てにした日帰り旅行もおすすめだ。

 もうひとつは、ブッションという庶民的なレストラン。絹織物や印刷の中心地であったリヨンでは、職人たちが空腹を満たし、仲間との歓談を楽しむ場としてブッションが発達。今でも地元の人に愛され、特に新市街のメルシエール通りに多く集まっている。ボリュームたっぷりのメニューが特徴で、代表的なものはポーチドエッグとベーコンが入ったリヨン風サラダやソーセージのボイル、魚のすり身を調理したクネルなど。肉料理は牛や豚の内臓が使われることが多く、好きな人にはクセになる味付けだ。ワインやビールにもよく合い、お酒好きにも好まれるだろう。料金は前菜からデザートまでの3コースで約15ユーロから25ユーロほど。各ブッションはそれぞれテーマがあり、装飾もユニークなので、お店自体の雰囲気やデザインにも目を向けてほしい。

 そのほか、グルメでは、ポール・ボキューズ自ら食材探しに訪れているといわれるポール・ボキューズ中央市場も注目。市場内には60以上もの店が並び、世界的に有名なブレス鶏や焼きたてのパン、リヨン周辺で生産されたチーズやワイン、大西洋で捕れた新鮮な生牡蠣などさまざまな食材が並ぶ。市場内にはオイスターバーもあり、売られている生牡蠣をその場で食すことも可能だ。晴れた日は午前中に市場へ行き、焼きたてのパンや新鮮なチーズ、ハムを購入し、ソーヌの川岸へ。ゆっくり流れる大河を眺めながら仕入れたばかりの食材で自分だけのサンドイッチを作り、味わう。そんなマイペースな体験もリヨンの旅を印象的なものにしてくれるはずだ。リヨンはゆとりを持った日程で暮らすように滞在することで、その魅力を楽しむことができるデスティネーションといえるだろう。



開発が進むリヨン、MICEデスティネーションとしても誘致強化


 リヨンでは現在、フランス第2の経済都市として、さら
なる環境整備を目的とした開発がおこなわれている。ゲ
ートウェイであるサン・テグジュペリ国際空港は2007年
に大規模開発を終了し、トランスアエロ航空(UN)のリ
ヨン/モスクワ線など15の新規路線が就航した。現在は
1億ユーロを投資し、空港内に「Business Hub」と称する
大規模ビジネス施設を建設中だ。この施設内には3つの
オフィスビルディング、7階建てのパーキング、4ツ星ク
ラスの新ホテルが入居。同空港は2009年の秋には、本来
の空港機能のみならず、ビジネスデスティネーションと
しての態勢を整えることになる。

 ホテルの建設も活発で、2010年までに7軒、計1500室の
新ホテルがリヨンにオープンする。中でも注目は、ソー
ヌ川西岸に開業予定の「Hotel del’Antiquaille」。か
つて病院だった建物を改装し、スパなどを備える計80室
の5ツ星ホテルだ。建物の外観は美しく、ライトアップさ
れた夜は特に見応えがある。現在でもソーヌ川を渡る観
光客が足を止め、建物をバックに写真を撮る姿などがみ
られる。

 リヨン観光局では市内の大規模開発を受け、今後は積
極的にMICE目的の訪問者を誘致していく予定。リヨンは
シャモニーなどの欧州有数のスキー・リゾートへのアク
セスもよく、「リヨンでのビジネスの後は、シャモニー
でスキー」という旅程も組める。また、市内でも、例え
ばブッションが立ち並ぶメルシエール通りの貸切パーテ
ィなど、リヨンの風情が感じられる催し物も可能だとい
う。