トップインタビュー:内外航空サービス代表取締役社長 矢野邦雄氏

  • 2008年7月2日
今後のポイントは販売力
−伊藤忠グループの需要獲得も鍵に



 コミッションの削減やゼロなど、業務渡航を取巻く環境は厳しい。そうした環境において、内外航空サービスは先ごろ、名鉄観光サービスとの業務提携を発表し、国内旅行にも強い旅行会社と手を組むことで、自社の強みである海外業務渡航を活かすことを見出している。インハウスとしての取り組みや今後のビジネス展開について代表取締役社長の矢野邦雄氏に聞いた。(聞き手:編集長 鈴木 次郎)                                 
                  
                                            
−名鉄観光サービスとの連携の背景を教えていただけますか

矢野邦雄氏(以下敬称略) 着任して1年ほど、じっくりと内外航空サービス(以下、内外航空)のビジネスを見てきた。伊藤忠グループのインハウスという役割があるが、会社としてはこのままインハウスとして成長をしていくという方向性のほか、原点に戻り、人とモノ、カネを投入して一般の旅行会社として成長していくこと、または旅行会社としてグループ外の強い旅行会社とうまく連携をしていくことが考えられる。旅行会社を管理する伊藤忠本社の部署を交えて話しをしていく中で、旅行会社としてチャレンジしていくこと、その一方で、無尽蔵に資金をつぎ込むことでもないことを確認してきた。接点があれば、手を組んでいくという考えは内外航空、伊藤忠の本社とも意見が一致していた中で、名鉄観光サービス(以下、名鉄観光)との協同という話がでてきた。

 両社の親会社となる名古屋鉄道と伊藤忠は定期的にビジネスについて意見交換をしており、その場で旅行の話をすると、互いに弱い分野を補いあえるという可能性を見いだした。その後、半年ほどの話し合いを経て、5月の業務提携に至った。


−今回の提携を御社としてどのように活かされるとお考えですか


矢野 今回の提携はうまく動く部分が多いと思う。たとえば、伊藤忠グループの各会社をまわってみると、国内出張の需要も多いことが分かった。ただし、今の内外航空では、仕入れチャネルが少ないことから、対応ができない部分もある。こうした部分は、名鉄観光にお願いでき、グループ内の需要を着実に獲得できるメリットがある。また、名鉄観光サービスからは海外出張を中心に依頼をいただける。

 現在は5月に契約した基本提携を元に、具体的に東京、大阪、名古屋、その他地域の4つの地域別、そして団体・法人と個人の分野別について、分科会において検討している。例えば、その他地域については、伊藤忠商事の国内支店を営業し、旅行需要を受注できないか提案をしているところだ。支店数を比べれば、内外航空と名鉄観光には差があるものの、名鉄観光の支店を活かすことが出来れば、団体旅行や出張需要などを具体的に受注していくことが出来る。既に、伊藤忠商事の支店長会議で、内外航空と名鉄観光の業務提携について説明をしており、今は各支店を回り業務出張で少しずつ成果を得ているところだ。また、伊藤忠商事としては、創業150周年で創業者の伊藤忠兵衛の創業の地を訪ねるツアーなどに既に参加をいただいており、今後もそうしたツアーを催行する。これは、国内に強い名鉄観光の協力を得て実施しており、提携は着実に進んでいる。


−コミッションの削減やゼロの動きが目立っています。これにともなうビジネスモデルのお考えをお聞かせください

矢野 ホールセール・ビジネスは今後、旅行商品の販売、航空券の代売とも小さくなると見ている。社会情勢をみていると、市場が二極化しており、仕入れを強くして安い商品を販売することは大手にはかなわないと見ているし、力を入れるべきところではないと考えている。注力するのは特定業界、あるいは特定のお客様への商品提供を地道に続けていくことが着実ではないかと考えている。例えば、社内での事例を紹介すると、医療関係者に対する年末年始、ゴールデンウィーク、お盆の年3回の商品提供が、利益を生むビジネスになっている。このようなビジネスを数多くそろえていくことが今後の課題だ。

 航空券の販売でも「売る力」をどのように強めていくかが課題になる。例えばトラベル・パーツ・センター(TPC)であり、リテーラーとの連携を強めることなど、販路を確保しておくことは重要だ。

 こうした展開をする中では、レジャー向けの旅行商品はホールセールというよりネットなどを活用した直接販売、そして伊藤忠グループの力を活用した活動として、例えばカード会員向けのクローズドマーケットに対する訴求、そして連携先の名鉄観光サービス、あるいは地球の歩き方T&Eとのネットの活用が考えられるだろう。いずれにしろ、販売力というところが今後の課題になってくる。

 この中で、大きな伊藤忠グループとしての枠組みで考えると、チャンスは大きい。グループが投資している企業の旅行需要の取扱いやコラボレーションが出来ないか、本社と相談をしているところだ。

 また、地球の歩き方T&Eと名鉄観光を含めた取り組みも考えている。たとえば、留学では、両社が学生を送り出す地域が異なる。これを一緒にして、伊藤忠グループのお客様に紹介することを内外航空が担当し、3社が一つにまとまって「留学」ということで協力することも考えられる。また、ダイヤモンド・ビッグが出版した本で旅を紹介しているものがあり、これを実際に実現する旅行商品を内外航空が提供することも取り組んでいる。


−市場全体が縮小しているとささやかれますが、旅行市場で将来性を感じる分野はありますか

矢野 国が掲げる「観光立国推進基本計画」の目標のうち、海外旅行の2000万人の達成は非常に厳しい状況にあるだろう。訪日旅行の1000万人はこれを超えていくという多くの方々の見方と一緒だ。こうした状況に、日本の人口構成と企業の動きを加えてみてみると、商圏を日本に求めるよりも内から外、あるいは外から外のビジネスを見ているのではないだろうか。各事業会社の成長、あるいはその成長過程の中で、本社の仕事の進め方などを伝えていくためには、外から内へ入ってくる訪日インバウンドビジネスの需要は着実に伸びていくのではないだろうか。こうした点はビジネスチャンスがあると見ている。伊藤忠グループは世界に事業会社を展開しており、関連企業がどのような旅行をしているか、そうした点を調べているところだ。

 この点でも名鉄観光との連携が活きてくるだろう。特に、名鉄観光では大きなイベントを受注している実績もあり、こうした点で協力が出来る。今後の5年から10年先を見すえてしっかりとビジネスとして成り立つようにアンテナをはっておきたい。


−今後のビジネストラベルの将来性について。アメリカ型ではなく、日本型のBTMのモデルについてお考えはありますか

矢野 もともと、出張手配は顧客から電話をいただき、「はい。わかりました」と単に手配をするだけのものではない。パスポートの期限をはじめ、細かい部分に至るまでサービスとして手がけており、これはアメリカ型ではない。ここに、現在の航空運賃の複雑化が進んでいくことで、出張者に対してより効率的なルート、費用の提案ができるだろう。これまでの延長線にある形だが、良い座席を確保していくこともお客様へのサービスであり、売る力が無ければ出来ないこと。航空会社、あるいはお客様から何がしかのリターンを得ていくことを考えなければならない。海外の旅行会社の状況をみると、コミッションはなくなっても、航空会社からインセンティブが無くなったという話は聞いていない。こうしたことも考えうるだろう。

 さらに、訪日旅行のビジネス需要に取り組んでいくには、日本国内での受けを名鉄観光と提携することで可能にしたとしても、海外からの需要をどのように取り込んでいくかは大きな課題だ。海外の旅行会社との提携という点も今後の大きな課題になってくる。特に、グループ会社では海外での活動も多くあり、日本以外でのビジネスをどのように活用していくかも視野に入れておく必要があるだろう。


−ありがとうございました


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