現地レポート:台湾 「高雄」モノステイ・デスティネーションの可能性
台湾第2の都市「高雄」
台北に次ぐ、モノステイ・デスティネーションの可能性
台湾南部の高雄は、台北に次ぐ第2の都市。周遊ツアーには代表的な観光地として必ず組み込まれるものの、1泊の駆け足での観光が多い。ただし、昨年には台湾新幹線が開通し、台北からのアクセス利便が向上したほか、さらに今年は高雄に新交通システム高雄捷運(KMRT)紅線が開通するなど、市内の開発が進んでいる。大型ショッピングモールをはじめとする新しい魅力も登場し、見どころも増え、観光面のさらなる活性も期待できる。高雄で新しい台湾旅行の可能性を探った。(取材協力:台湾観光協会、チャイナエアライン)
アクセスしやすい高雄
KMRT開通で、市内の交通利便も向上
高雄は古くから貿易港として繁栄し、現在もコンテナ港として世界的に有名な港町だ。台北とは異なり、どこか懐かしさを感じさせる街並みに、昨年開通した台湾新幹線や、今年開通した高雄捷運(KMRT)紅線、大型ショッピングセンターのオープンなどが街を活気づけ、新旧が混在しているのが印象的だ。現地で出会った日本人観光客は「1日だけでは短い。今度は2、3日かけてゆっくり観光がしたい」と名残惜しそうな表情を見せていた。のんびりした風景、台湾南部の暖かな人柄、年中温暖な気候等がそう感じさせるのだろう。このコメントからも、高雄では周遊ツアーだけでなく、ゆっくり滞在するツアーの可能性を感じる。
肝心のアクセスだが、国際線から国内線で移動する場合、台湾桃園国際空港での乗り継ぎは30分で可能。高雄までの搭乗券があるなら、到着後はセキュリティチェックをし、3階の出発エリアへ移動するだけだ。高雄小港国際空港へは約60分で到着するため、乗り換えが面倒に感じることは少ないだろう。空港から市内のアクセスも、高雄小港国際空港の地下から地下鉄駅「高雄国際機場駅」があり、市内までも約10分から15分で移動できる。また、台湾新幹線での台北/高雄間の所要時間は約2時間。65歳以上は身分証明書(日本人はパスポート)を提示すると、半額で乗車することができる特典もある。
さらに、今一番の話題である3月9日に開通したKMRT紅線のほか、10月には東西に延びる高雄捷運橘線の開通も予定されている。KMRT紅線は高雄市の中心地から南北を走り、空港と市内、新幹線駅である左営駅を結ぶ。市民の足としてだけではなく、高雄を訪れる観光客にも便利な交通機関として注目され、国内線や新幹線から市内中心部まで15分から20分で移動が可能だ。運行時間は朝5時30分から午後11時まで平均10分間隔で運行しており、金額は20元(5キロ以内/約70円)と割安。
高雄のホテル事情だが、旅行会社によると、台北と比べて客室や施設面での差はほとんどないが、メリットは料金が安いこと。同等クラスでも30%から40%ほど割安で、例えば台北は1泊2万円のクラスのホテルが高雄では1万2000円程度で利用できるという。つまり高雄では、同じ料金でワンランク上の滞在が楽しめるのだ。また、2009年7月にはオリンピックの競技種目でないスポーツの総合大会「ワールドゲームズ」が開催される予定で、現在、40億台湾ドル(約142億円)を投じたメインスタジアムを建設中だ。こうした国際的なイベントの受け入れに向けたインフラ整備も進んでいる。
地元の人に人気のスポットでのんびり観光
高雄での観光スポットはいくつもあるが、その中でもぜひ訪れて欲しいのは「旗津」。もともと陸続きだった土地だが、船の航行のため切り離され、現在は幅200メートル、長さ11.3キロメートルの島となっている。フェリーで10分ほどの距離で、気軽に訪れることができるのも魅力。毎便ほぼ満員になるほど、地元の人々にも人気のエリアだ。休日ともなると多くの人々が集まってくる。高雄の人々は陽の美しい夕方に訪れ、夕涼みをしながら散策し、海鮮料理屋で夕食を食べて帰るのが定番だという。
また、高雄で一番大きな湖「澄清湖」も人気のスポット。もともとは工業用貯水池として作られた人口湖だが、敷地内は静かな時間が流れ、のんびりしたい人には最適の観光地だろう。太極拳やジョギングに励む熟年世代や、ハイキングを楽しむ家族連れや若者たちなど、高雄市民の憩いの場となっている。日本人とわかると、すれ違いざまに日本語で「おはよう」と挨拶をしてくれるところは、高雄市民の温かな人柄を感じる一面だ。
この中で最も有名なのが九曲橋。長さ230メートル、幅2.5メートルの澄清湖に掛かる橋だ。「悪魔はまっすぐにしか進めない」という古くからの言い伝えを受けて魔よけのために作られたもので、9つの橋がジグザグに掛けられた珍しい形が特徴。占いや風水を信じる台湾では当たり前のことかもしれないが、日本人からするとユニークだ。この橋の全景を含め、澄清湖全体を見渡すには中興塔をぜひ登ってもらいたい。高さ43メートル、168段の階段でのぼる7層の塔で、きれいな景色とさわやかな風とともに、高雄市まで一望できる。
夜の観光スポット「六合夜市」と「愛河クルージング」
台湾の夜の観光スポットといえば夜市。高雄で一番有名な夜市は「六合夜市」だ。夕方18時から深夜まで賑わう観光スポットで、道の両側に並んだ食べ物の屋台は、海産物や特産物、飲み物、果物、カキ氷が揃っており、特に海産物の屋台には地元の人々のみならず、観光客も列を作っている。台北の夜市より道幅が広く、グループでゆっくりと夜市観光が出来る。混雑も少なく、お目当ての料理や掘り出し物をじっくり探して歩くにはぴったりの観光地だ。
また、高雄市を南北に流れる運河の「愛河」は、ある意味で新スポットだ。十数年前までは街の発展とともに汚染が進んでいたが、高雄市の37億台湾ドル(約132億円)を投じた一大プロジェクトにより、美しい運河によみがえった。昼間は河岸を散歩する家族連れやカップルの憩いの場となっており、河岸には公園やバー、オープンカフェなどが並び、緑あふれる公園では海からの潮風を感じながら行き交う船が眺められる。さらに夜には河岸や愛河に掛かる橋がライトアップされ、デートスポットとしてにぎわう。25分に1本運航される小さな遊覧船に乗船すれば、愛河からライトアップされた河岸を鑑賞でき、夜市の活気ある顔とは違った夜の高雄に出会えるだろう。
このように、開発が進む高雄では滞在型の商品を構成できる要素が揃いつつある。一方、中国と台湾を結ぶチャーター便の運航が合意され、今後、台北には中国本土からの観光客の増加による客室数の争奪戦も予想される。送客先の確保という点からも、台湾の新商品として、高雄モノステイツアーに取り組むメリットはありそうだ。
台北に次ぐ、モノステイ・デスティネーションの可能性
台湾南部の高雄は、台北に次ぐ第2の都市。周遊ツアーには代表的な観光地として必ず組み込まれるものの、1泊の駆け足での観光が多い。ただし、昨年には台湾新幹線が開通し、台北からのアクセス利便が向上したほか、さらに今年は高雄に新交通システム高雄捷運(KMRT)紅線が開通するなど、市内の開発が進んでいる。大型ショッピングモールをはじめとする新しい魅力も登場し、見どころも増え、観光面のさらなる活性も期待できる。高雄で新しい台湾旅行の可能性を探った。(取材協力:台湾観光協会、チャイナエアライン)
アクセスしやすい高雄
KMRT開通で、市内の交通利便も向上
高雄は古くから貿易港として繁栄し、現在もコンテナ港として世界的に有名な港町だ。台北とは異なり、どこか懐かしさを感じさせる街並みに、昨年開通した台湾新幹線や、今年開通した高雄捷運(KMRT)紅線、大型ショッピングセンターのオープンなどが街を活気づけ、新旧が混在しているのが印象的だ。現地で出会った日本人観光客は「1日だけでは短い。今度は2、3日かけてゆっくり観光がしたい」と名残惜しそうな表情を見せていた。のんびりした風景、台湾南部の暖かな人柄、年中温暖な気候等がそう感じさせるのだろう。このコメントからも、高雄では周遊ツアーだけでなく、ゆっくり滞在するツアーの可能性を感じる。
肝心のアクセスだが、国際線から国内線で移動する場合、台湾桃園国際空港での乗り継ぎは30分で可能。高雄までの搭乗券があるなら、到着後はセキュリティチェックをし、3階の出発エリアへ移動するだけだ。高雄小港国際空港へは約60分で到着するため、乗り換えが面倒に感じることは少ないだろう。空港から市内のアクセスも、高雄小港国際空港の地下から地下鉄駅「高雄国際機場駅」があり、市内までも約10分から15分で移動できる。また、台湾新幹線での台北/高雄間の所要時間は約2時間。65歳以上は身分証明書(日本人はパスポート)を提示すると、半額で乗車することができる特典もある。
さらに、今一番の話題である3月9日に開通したKMRT紅線のほか、10月には東西に延びる高雄捷運橘線の開通も予定されている。KMRT紅線は高雄市の中心地から南北を走り、空港と市内、新幹線駅である左営駅を結ぶ。市民の足としてだけではなく、高雄を訪れる観光客にも便利な交通機関として注目され、国内線や新幹線から市内中心部まで15分から20分で移動が可能だ。運行時間は朝5時30分から午後11時まで平均10分間隔で運行しており、金額は20元(5キロ以内/約70円)と割安。
高雄のホテル事情だが、旅行会社によると、台北と比べて客室や施設面での差はほとんどないが、メリットは料金が安いこと。同等クラスでも30%から40%ほど割安で、例えば台北は1泊2万円のクラスのホテルが高雄では1万2000円程度で利用できるという。つまり高雄では、同じ料金でワンランク上の滞在が楽しめるのだ。また、2009年7月にはオリンピックの競技種目でないスポーツの総合大会「ワールドゲームズ」が開催される予定で、現在、40億台湾ドル(約142億円)を投じたメインスタジアムを建設中だ。こうした国際的なイベントの受け入れに向けたインフラ整備も進んでいる。
地元の人に人気のスポットでのんびり観光
高雄での観光スポットはいくつもあるが、その中でもぜひ訪れて欲しいのは「旗津」。もともと陸続きだった土地だが、船の航行のため切り離され、現在は幅200メートル、長さ11.3キロメートルの島となっている。フェリーで10分ほどの距離で、気軽に訪れることができるのも魅力。毎便ほぼ満員になるほど、地元の人々にも人気のエリアだ。休日ともなると多くの人々が集まってくる。高雄の人々は陽の美しい夕方に訪れ、夕涼みをしながら散策し、海鮮料理屋で夕食を食べて帰るのが定番だという。
また、高雄で一番大きな湖「澄清湖」も人気のスポット。もともとは工業用貯水池として作られた人口湖だが、敷地内は静かな時間が流れ、のんびりしたい人には最適の観光地だろう。太極拳やジョギングに励む熟年世代や、ハイキングを楽しむ家族連れや若者たちなど、高雄市民の憩いの場となっている。日本人とわかると、すれ違いざまに日本語で「おはよう」と挨拶をしてくれるところは、高雄市民の温かな人柄を感じる一面だ。
この中で最も有名なのが九曲橋。長さ230メートル、幅2.5メートルの澄清湖に掛かる橋だ。「悪魔はまっすぐにしか進めない」という古くからの言い伝えを受けて魔よけのために作られたもので、9つの橋がジグザグに掛けられた珍しい形が特徴。占いや風水を信じる台湾では当たり前のことかもしれないが、日本人からするとユニークだ。この橋の全景を含め、澄清湖全体を見渡すには中興塔をぜひ登ってもらいたい。高さ43メートル、168段の階段でのぼる7層の塔で、きれいな景色とさわやかな風とともに、高雄市まで一望できる。
夜の観光スポット「六合夜市」と「愛河クルージング」
台湾の夜の観光スポットといえば夜市。高雄で一番有名な夜市は「六合夜市」だ。夕方18時から深夜まで賑わう観光スポットで、道の両側に並んだ食べ物の屋台は、海産物や特産物、飲み物、果物、カキ氷が揃っており、特に海産物の屋台には地元の人々のみならず、観光客も列を作っている。台北の夜市より道幅が広く、グループでゆっくりと夜市観光が出来る。混雑も少なく、お目当ての料理や掘り出し物をじっくり探して歩くにはぴったりの観光地だ。
また、高雄市を南北に流れる運河の「愛河」は、ある意味で新スポットだ。十数年前までは街の発展とともに汚染が進んでいたが、高雄市の37億台湾ドル(約132億円)を投じた一大プロジェクトにより、美しい運河によみがえった。昼間は河岸を散歩する家族連れやカップルの憩いの場となっており、河岸には公園やバー、オープンカフェなどが並び、緑あふれる公園では海からの潮風を感じながら行き交う船が眺められる。さらに夜には河岸や愛河に掛かる橋がライトアップされ、デートスポットとしてにぎわう。25分に1本運航される小さな遊覧船に乗船すれば、愛河からライトアップされた河岸を鑑賞でき、夜市の活気ある顔とは違った夜の高雄に出会えるだろう。
このように、開発が進む高雄では滞在型の商品を構成できる要素が揃いつつある。一方、中国と台湾を結ぶチャーター便の運航が合意され、今後、台北には中国本土からの観光客の増加による客室数の争奪戦も予想される。送客先の確保という点からも、台湾の新商品として、高雄モノステイツアーに取り組むメリットはありそうだ。
足を延ばし台湾のリゾート地「懇丁」へ
台湾最南端に位置する懇丁は、台湾の人にとって最
も有名なリゾート地のひとつで、さまざまな観光ポイ
ントが点在する。青い海、白い砂浜がとても印象的で、
特にサーフィンやダイビングなど、マリンスポーツで
人気のあるリゾート地である。8月にはサーフィンの国
際大会が開催される予定だ。
リゾートホテルをはじめ宿泊施設は整っており、ホ
テルによってはゴルフ場やテニスコート、プールなど
の施設も揃う。懇丁までは高雄から車で片道2時間ほど。
街の散策に飽きた頃にドライブ気分を楽しむ日帰り観
光も良いし、高雄から1泊の小旅行先として含めれば、
高雄滞在型ツアーの幅がいっそう広がるだろう。
チャイナエアライン・トレーニングセンターを視察
チャイナエアライン(CI)のトレーニングセンター
は、台北・松山空港に隣接している。ここでは日々、
パイロットやキャビンクルーのトレーニングを実施し
ている。CIに入社すると、この施設での厳しいトレー
ニングが課せられる。
キャビンクルーのトレーニングは、機材によって操
作が異なるドア・トレーニングから始まり、英語や中
国語などの語学トレーニング、メイクアップ講座など
がある。1日8時間、週6日間がトレーニングの時間で、
これを約2ヶ月かけて実施する。この中で、もっとも
時間を割り当てるのは「エマージェンシー」。トレー
ニングの約4分の1にあたる100時間ほどをかけ、乗客の
安全に配慮した対応を訓練するほか、スタッフの安全
意識を醸成している。研修を終えても毎年、この施設
でトレーニングを受けることを義務付けており、業務
で必須とする技能、サービスを常に磨く体制がつくら
れている。
パイロットについても、トレーニングセンター内に
あるフライトシュミレーターで年間4回のトレーニング
の受講が義務付けられている。このテストは、合格す
るまで次のフライトに乗務できない厳格なもので、こ
ちらも安全面を考慮したものだ。ボーイングとエアバ
スのフライトシュミレーターが2機あり、6月には新し
いフライトシュミレーターを約10億台湾ドル(約36億
円)で導入する予定。パイロットの自社育成も1988年
から手がけており、現在の1111名いるというパイロッ
トのうち、半数以上の53.2%が自社育成である。この
ことも、CIがスタッフのトレーニングに力を入れてき
た指標のひとつといえるだろう。