格安航空会社の動向を数値から追う(1)−全世界と欧州の1都市から

  • 2008年4月23日
 OAGは全世界の航空に関する情報を幅広く提供している。今回から、OAGが提供するデータをもとに、様々な旅行動向に関する動向を追っていく。まず、第1のテーマは、環境が大きく変化している中での格安航空会社の動向を調べた。


▽全世界でのLCCの動向

 2001年1月の全世界における旅客便座席数は、OAGデータによると2億4852万6706席。2001年の9.11事件を受け、2002年1月には減少したが、2003年1月に増加に転じ、2007年1月には2億8050万3286席となっている。これは2001年1月比で12.9%増、2001年から最低の供給量である2002年1月比は22.8%増だ。

 供給量の増加のうち、格安航空会社(LCC)が半数以上を占めている。2002年1月から2007年1月にかけ、全世界の旅客便座席数の増加分は5216万1354席で、このうちLCCのシェアは56.7%にのぼる。全世界で、爆発的に旅行需要が増加している牽引役はLCCが果たしている、ともいえるだろう。

 ただ、この数ヶ月の動向では、原油価格の高騰により、航空会社は厳しい経営環境にさらされており、LCCの倒産が報道されている。アジアではオアシス・ホンコン航空(O8)が4月9日から運航を停止、また、ハワイにも就航するATA航空も運航停止した。ハワイについては、ATA航空とアロハ航空の運航停止で、アメリカ本土から年間100万席の供給座席数が減少するとも推計されている。

 一方、最近の大きなニュースであったデルタ航空(DL)とノースウエスト航空(NW)の合併にも、アメリカ国内のLCCのシェアがアメリカ国内線の3分の1にまで成長したことも要因の1つとされている。また、アジアではカンタス航空グループのジェットスター(JQ)が「ジェットスター・パシフィック」をベトナムに設立したほか、全日空(NH)もLCC参入の意欲を示すなど、原油価格が厳しい中でも、LCCのさらなる成長を予見する動きもある。


▽データ1:OAGデータによる旅客便座席数



▽欧州の1都市でのインパクトを見る−ハンブルクでのLCC拡大

 LCCの増加を視覚的に捉える良い資料がある。ドイツ北部で、中世のハンザ同盟で構成したハンブルグは、ルフトハンザドイツ航空の整備、エアバス社の航空産業をはじめ、医療、バイオなどでも多くの企業が集積しており、ビジネス需要は活発。レジャー需要でも、サッカーの高原選手が在籍したハンブルガーSVを代表とするスポーツ、そしてオペラをはじめ、芸術や文化も盛んだ。

 ハンブルグに就航するLCCは2003年では、ロンドン、ボン、チューリッヒ、ニース、ミュンヘン、ローマ、ウィーン、リーガ、タリンの9都市を結んでいたが、2007年には60都市超と、4年間で6倍以上の規模で就航地が拡大している。旅客数も2002年は883万6352人で、このうちLCC利用客は40万5806人であったが、2006年は1189万6268人、うちLCCは285万4053人。全体の航空利用者の増加率は2002年から2006年にかけて34.6%増であるが、LCCに限ると8倍となり、大きなインパクトを持っている。


▽ハンブルグのLCC就航状況(1) データ2:ハンブルグの航空旅客数



▽ハンブルグのLCC就航状況(2) 2003年VS2007年



≪次回以降のテーマ≫(予定)
第2回 3 欧州、4 アメリカ
第3回 5 アジア、6 日本

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