トップインタビュー:BOAR会長 チャールズ・ダンカン氏(コンチネンタル航空日本支社長)
2000万人達成の鍵は首都圏空港にあり
旅客利便の向上や市場活性化でサポート
在日航空会社代表者協議会(the Board of Airline Representatives:BOAR)会長に先ごろ、コンチネンタル航空日本支社長のチャールズ・ダンカン氏が就任した。BOARは日本乗り入れ、また日本に支社を置く航空会社が構成員。成田空港が雪で一時閉鎖された2006年1月の事態をきっかけとし、将来に発生する同様の事態に備える目的で、旅客の利便性向上に向けた協同を進めている。一方、旅行業界では、2000万人という海外旅行出国者数の目標を掲げており、日本市場の需要拡大に向けた課題にどのようなスタンスにあるか、BOARの考え方を聞いた。(聞き手:編集長 鈴木次郎)
−就任の抱負をお聞かせください
チャールズ・ダンカン氏(以下、敬称略) まず、前任者のマーク・シュワブ氏の功績は大きい。例えば、成田空港が大雪に見舞われた経験を元に、自然災害を受けた場合に航空各社が連携し、旅客への対応を高める仕組みを作った。彼の築いたものを踏まえ、さらに何が出来るのか、リーダーシップを持ってメンバーで協議を続けていきたい。
BOARでは支社長クラスが年間5回の会合、またその下部組織が個別のテーマを設定し、それぞれ年5回のミーティングを開催し、現況について意見交換をしている。例えば、先ごろ導入された日本での指紋採取については、法務省の担当者を招き、各社が情報を共有できる場を作ることもできた。指紋採取に当たっては、細かい改善点はあるものの、入国審査を待つ列が長くなっておらず、非常に良かったと思う。あるいは、液体物の機内持ち込みに関しても、各社で共通に情報を把握し、対応をしてきた。
このところ、各社が共通に関心あることは成田国際空港の上場への道筋だろう。上場企業となり、旅客サービスの向上が進むと思うが、成田で今、何が起こっているか、これからどのような方向性で進んでいくのか、航空会社が理解することはとても重要なことだ。次回の会合には、成田国際空港の担当者をゲストスピーカーとして来ていただくことになっている。以前は、静岡空港を取り巻く様々な環境について、あるいは日本の観光振興策について国土交通省総合観光政策審議官の柴田耕介氏(当時、現国土交通審議官・国際担当)など、毎回、ゲストスピーカーを招き、ひとつのテーマについて航空会社で理解を共有している。
−海外旅行者の増加は日本の政府、日本旅行業協会(JATA)ともに共通の課題としている。日本の市場拡大に向けた策は
ダンカン JATAや国土交通省と共に一緒になって働きたい。昨年はJATA国際会議にもBOARから各社が参加し、「今後の航空座席流通と運賃体系の在り方」としてシンポジウムの開催に協力した(右写真)。これは今年もぜひ、続けたいと考えており、こうした活動が日本のアウトバウンド活性化の動きにつながればと思う。
もうひとつ、航空会社の立場から旅客の利便性を向上していくことが、旅行者の増加、市場の活性化につながればと考えている施策がある。これは国際航空運送協会(IATA)で主導しているシンプリファイング・ザ・ビジネス(StB)だ。例えば、eチケット化、バーコード・ボーディングパス化、RFID(無線識別方式)の採用によるバゲージの管理、あるいはCUSS(Common Use Selfservice Check-in System:自動チェックインシステムの共用化)などが具体的な取り組みだ。
JATAが策定した2000万人に向けたアクションプランは、内容をよく読ませていただいた。2007年の日本人出国者数は2006年とほぼ同じレベルにある。以前のように急速な伸びが期待できるわけではないが、BOARはJATAにとっても、良きパートナーでありたい。
−政府はアジア・ゲートウェイ構想を掲げている。これも2000万人に向けた弾みになるのではないか
ダンカン この政策については、BOARというより、コンチネンタル航空として発言したい。政府のアジア・ゲートウェイは、新たな施策のように受け取られているが、成田空港、あるいは日本の役割はこれまで長年、アジアのゲートウェイという役割を果たして来た。特に、北米から日本を経由してアジアへ行くという点で、戦略としてうまくいっていたと思う。
ただし、航空業界は日本に限らず、世界各地で規制された産業。確かに、ヨーロッパやアメリカでオープンスカイ施策が導入され、変化が始まっており、自由化が進んでいるが、まだ十分ではないだろう。2000万人の実現には、規制を緩和していくしか方法はない。より具体的には、スロットの増加と着陸料の低減を進めること。さらにオープンスカイをいっそう推進していくことではないか。
日本はインバウンドとアウトバウンドが他の市場と比べると、アンバランスだ。今はインバウンドが増えており、今後ももっと増えていく。インバウンドの増加は健全な市場を育成し、ひいてはアウトバウンドの増加につながるのではないか。この際、やはり発着枠の増加ということが避けられない。エアバスA380型機に代表されるが大型機材での輸送力の増強もあるが、航空会社は一般的に機材を小型化している。このため、出国者数を維持していくためにも、発着枠の増加が望まれる。
もうひとつは東京の都心から成田空港へのアクセスの改善が望まれる。2010年には東京地区から成田空港まで25分ほどに短縮されるというが、目指すところは東京駅から20分で成田に到着することだ。ある人から新幹線を成田空港まで通せば、東京駅から15分で到着する構想があったと聞いたが、東京の中心から移動時間が短く済むことが重要だ。一般企業がアジアの拠点を置くシンガポールや香港など、こうした点が重視されている。いずれにしろ、アジア・ゲートウェイ構想、2000万人の実現でも東京、あるいは首都圏の空港が鍵を握っている。
−ありがとうございました
旅客利便の向上や市場活性化でサポート
在日航空会社代表者協議会(the Board of Airline Representatives:BOAR)会長に先ごろ、コンチネンタル航空日本支社長のチャールズ・ダンカン氏が就任した。BOARは日本乗り入れ、また日本に支社を置く航空会社が構成員。成田空港が雪で一時閉鎖された2006年1月の事態をきっかけとし、将来に発生する同様の事態に備える目的で、旅客の利便性向上に向けた協同を進めている。一方、旅行業界では、2000万人という海外旅行出国者数の目標を掲げており、日本市場の需要拡大に向けた課題にどのようなスタンスにあるか、BOARの考え方を聞いた。(聞き手:編集長 鈴木次郎)
−就任の抱負をお聞かせください
チャールズ・ダンカン氏(以下、敬称略) まず、前任者のマーク・シュワブ氏の功績は大きい。例えば、成田空港が大雪に見舞われた経験を元に、自然災害を受けた場合に航空各社が連携し、旅客への対応を高める仕組みを作った。彼の築いたものを踏まえ、さらに何が出来るのか、リーダーシップを持ってメンバーで協議を続けていきたい。
BOARでは支社長クラスが年間5回の会合、またその下部組織が個別のテーマを設定し、それぞれ年5回のミーティングを開催し、現況について意見交換をしている。例えば、先ごろ導入された日本での指紋採取については、法務省の担当者を招き、各社が情報を共有できる場を作ることもできた。指紋採取に当たっては、細かい改善点はあるものの、入国審査を待つ列が長くなっておらず、非常に良かったと思う。あるいは、液体物の機内持ち込みに関しても、各社で共通に情報を把握し、対応をしてきた。
このところ、各社が共通に関心あることは成田国際空港の上場への道筋だろう。上場企業となり、旅客サービスの向上が進むと思うが、成田で今、何が起こっているか、これからどのような方向性で進んでいくのか、航空会社が理解することはとても重要なことだ。次回の会合には、成田国際空港の担当者をゲストスピーカーとして来ていただくことになっている。以前は、静岡空港を取り巻く様々な環境について、あるいは日本の観光振興策について国土交通省総合観光政策審議官の柴田耕介氏(当時、現国土交通審議官・国際担当)など、毎回、ゲストスピーカーを招き、ひとつのテーマについて航空会社で理解を共有している。
−海外旅行者の増加は日本の政府、日本旅行業協会(JATA)ともに共通の課題としている。日本の市場拡大に向けた策は
ダンカン JATAや国土交通省と共に一緒になって働きたい。昨年はJATA国際会議にもBOARから各社が参加し、「今後の航空座席流通と運賃体系の在り方」としてシンポジウムの開催に協力した(右写真)。これは今年もぜひ、続けたいと考えており、こうした活動が日本のアウトバウンド活性化の動きにつながればと思う。
もうひとつ、航空会社の立場から旅客の利便性を向上していくことが、旅行者の増加、市場の活性化につながればと考えている施策がある。これは国際航空運送協会(IATA)で主導しているシンプリファイング・ザ・ビジネス(StB)だ。例えば、eチケット化、バーコード・ボーディングパス化、RFID(無線識別方式)の採用によるバゲージの管理、あるいはCUSS(Common Use Selfservice Check-in System:自動チェックインシステムの共用化)などが具体的な取り組みだ。
JATAが策定した2000万人に向けたアクションプランは、内容をよく読ませていただいた。2007年の日本人出国者数は2006年とほぼ同じレベルにある。以前のように急速な伸びが期待できるわけではないが、BOARはJATAにとっても、良きパートナーでありたい。
−政府はアジア・ゲートウェイ構想を掲げている。これも2000万人に向けた弾みになるのではないか
ダンカン この政策については、BOARというより、コンチネンタル航空として発言したい。政府のアジア・ゲートウェイは、新たな施策のように受け取られているが、成田空港、あるいは日本の役割はこれまで長年、アジアのゲートウェイという役割を果たして来た。特に、北米から日本を経由してアジアへ行くという点で、戦略としてうまくいっていたと思う。
ただし、航空業界は日本に限らず、世界各地で規制された産業。確かに、ヨーロッパやアメリカでオープンスカイ施策が導入され、変化が始まっており、自由化が進んでいるが、まだ十分ではないだろう。2000万人の実現には、規制を緩和していくしか方法はない。より具体的には、スロットの増加と着陸料の低減を進めること。さらにオープンスカイをいっそう推進していくことではないか。
日本はインバウンドとアウトバウンドが他の市場と比べると、アンバランスだ。今はインバウンドが増えており、今後ももっと増えていく。インバウンドの増加は健全な市場を育成し、ひいてはアウトバウンドの増加につながるのではないか。この際、やはり発着枠の増加ということが避けられない。エアバスA380型機に代表されるが大型機材での輸送力の増強もあるが、航空会社は一般的に機材を小型化している。このため、出国者数を維持していくためにも、発着枠の増加が望まれる。
もうひとつは東京の都心から成田空港へのアクセスの改善が望まれる。2010年には東京地区から成田空港まで25分ほどに短縮されるというが、目指すところは東京駅から20分で成田に到着することだ。ある人から新幹線を成田空港まで通せば、東京駅から15分で到着する構想があったと聞いたが、東京の中心から移動時間が短く済むことが重要だ。一般企業がアジアの拠点を置くシンガポールや香港など、こうした点が重視されている。いずれにしろ、アジア・ゲートウェイ構想、2000万人の実現でも東京、あるいは首都圏の空港が鍵を握っている。
−ありがとうございました