現地レポート タイ−北部の主要デスティネーション・チェンマイ
北部の主要デスティネーション・チェンマイ
高原リゾート、ロングステイ、団体旅行の可能性も
タイ北部の中心地チェンマイ。歴史文化と芸術の都として、しばし「北方の薔薇」とも称されるこのタイ第2の都市は、近年、旅行客が増加。2007年1月から6月の旅行者数は、国内外をあわせて約240万人で前年比11.8%も上昇した。日本でもロングステイを中心に急速に人気が高まっている。昨年末に開催された、「チェンマイ・ツーリズム・フォーラム2007」に参加し、バンコクやプーケットと並ぶタイの主要デスティネーションとして注目を浴びるチェンマイの魅力を探ってきた。
(取材協力:タイ国政府観光庁)
◆チェンマイ・ツーリズム・フォーラムで今後の可能性を示唆
チェンマイの観光業界と東アジアの旅行業バイヤーが集う「チェンマイ・ツーリズム・フォーラム(CTF)2007」が、2007年12月6から9日の日程で行なわれた。これはタイ国政府観光庁(TAT)とチェンマイ観光業協会(チェンマイ・ツールズム・ビジネス・アソシエーション)の共催で、招かれたのは日本、中国、韓国、香港、台湾、マレーシア、シンガポール、オーストラリアの8ヶ国の旅行業関係者とメディアの総勢約120名。各国の代表団はチェンマイのホテルやゴルフ場、スパ等を視察し、8日にはリバーサイドにあるホリデイ・インにおいて討論会やビジネスセッションが行なわれた。
フォーラム当日、冒頭でTAT総裁のポーンスリ・マノーハン氏は、「経済発展著しいチェンマイだが、歴史的な古都の風情は健在であり、観るべきものが多い。ホテルやスパ、ゴルフなど各種施設も充実度を増している。また、昨年1月に開かれた国際園芸博では300万人以上が訪れるなど盛況を博した」と挨拶。さらに「近い将来、中国雲南省からチェンマイ、バンコクを通ってシンガポールにまで到達する幹線道路『アジアン・ハイウェイ・ネットワーク』が完成すれば、さらに多様な旅スタイルの誕生と観光拠点としてのチェンマイの重要性がますますクローズアップされるだろう」と、観光客拡大に向けたインフラ整備の現状を説明するとともに、今後の需要拡大に対する期待を語った。
◆気候が温暖で歴史・文化の素材が豊富
バンコクから北へ約700キロメートル、タイ第2の都市チェンマイへはバンコクから約1時間ほどのフライトだ。現在、日本からの直行便はないが、成田や関西、福岡などの主要空港からはバンコクで乗り継いで同日中にチェンマイに着くことができる。
チェンマイのデスティネーションとしての優位性は、ロングステイヤーに人気であることが示している。日本からは現在、1100人が滞在しているといわれるほどで、その理由のひとつとして、温暖な気候があげられるだろう。タイ北部の1000メートルから2500メートル級の山々に囲まれた高原地帯にあるため、日本の琉球地方と同じ亜熱帯性に属し、特に乾期となる10月から2月は日本の初夏のような気温で非常に過ごしやすい。山間部では、イチゴやリンゴなど冷涼な土地でしか育たない果物や花々も栽培でき、市場では非常に多彩な食材や花々が並ぶ。
チェンマイは今から700年前に築かれた歴史ある古都だけに、約300もの寺院があるといわれ、名刹・古刹の寺院巡りには事欠かない。タイの寺院巡りはシニア世代だけでなく、最近では若者にも愛好者が多い。また、シルクや絵傘、陶磁器、木製品など、タイを代表する工芸品はチェンマイが名産地。バンコクなどで売られている工芸品の多くがチェンマイ製だと言えるほどである。市内の制作工房を見学したり、学んだりと、カルチャー体験が豊富なこともチェンマイの大きな楽しみといえるだろう。
◆物価が安く、バリューな旅を楽しめる
「足裏マッサージ30分80バーツ」―これはチェンマイの繁華街を歩いていて見つけた店の値段表である。80バーツは日本円で換算すると約270円。いくら日本よりも物価が安いタイとはいえ、この値段はバンコク市内のマッサージ激戦区と比べても安い。早速、体験してみたがタイ古式にのっとった絶妙なマッサージで、腕の良さがうかがえた。
チェンマイはバンコクやプーケット、パタヤなどの他の主要観光地と比べても全般に物価が2割から3割安いといわれる。市の中心部には有名なナイト・バザールをはじめ、大小の市場があり、ありとあらゆるものが非常に廉価で販売されている。ことに手工芸の都として名高いだけにアジアン雑貨なども非常に豊富で、女性観光客にも評判が高い。
「チェンマイにあるものはバンコクにもあるけれど、安さが違う」と話すのは、タイの事情に詳しい日本人コーディネイター。「タイ第2の都市といってもバンコクほどの大都会ではなく、程よい大きさで移動しやすいところも、旅行者にとって馴染みやすいのでは」
◆高級ホテルも多様で供給も安定。望むは日本からの直行便のみ
チェンマイでは数年前からホテルの建設ラッシュが続いており、現在5ツ星ホテルだけでもざっと数えて5軒以上、4ツ星はその倍、さらに3ツ星を含めると100軒以上がひしめいている。また08年4月末には「ル・メリディアン・チェンマイ」も開業する予定。国際的なホテルグループのプロパティのほか、デザイン性の高いブティックホテルやスパをコンセプトとしたデラックスなリゾートも登場している。
タイはアジアの中でもホテルのクオリティが高いが、それに加えてチェンマイはスタッフなどのホスピタリティでも群を抜いている。もともと北部の人々はメンタリティが高いといわれているが、チェンマイではホテルがやや供給過剰気味で、競争が激しいという現状も関係しているかもしれない。
チェンマイ観光業協会の副会長を務めるボラポン・ムチャオタイ氏は「現状はホテルが供給過剰気味であるのは否めない。ただ、20年前は観光地としてまったく知られてなかったチェンマイが、現在はタイ北部きっての観光拠点となった。まだまだ知られざる魅力がチェンマイと周辺にはあり、さらなる観光客誘致に期待が持てる。ぜひ、日本からの直行便を復活させて欲しい」と今後の可能性に期待を寄せる。座席数が増加しても、十分に受け入れられる基盤が整っている。市内にある文化・歴史的な観光スポットのほか、スパやゴルフなどのアクティビティも充実しており、ロングステイ年代である団塊世代から、高原でゆっくり過ごしたい若い女性はもちろん、豊富な客室量を武器に、今後は小中規模のMICEなどの開催地として数を増やせる可能性はあるだろう。
高原リゾート、ロングステイ、団体旅行の可能性も
タイ北部の中心地チェンマイ。歴史文化と芸術の都として、しばし「北方の薔薇」とも称されるこのタイ第2の都市は、近年、旅行客が増加。2007年1月から6月の旅行者数は、国内外をあわせて約240万人で前年比11.8%も上昇した。日本でもロングステイを中心に急速に人気が高まっている。昨年末に開催された、「チェンマイ・ツーリズム・フォーラム2007」に参加し、バンコクやプーケットと並ぶタイの主要デスティネーションとして注目を浴びるチェンマイの魅力を探ってきた。
(取材協力:タイ国政府観光庁)
◆チェンマイ・ツーリズム・フォーラムで今後の可能性を示唆
チェンマイの観光業界と東アジアの旅行業バイヤーが集う「チェンマイ・ツーリズム・フォーラム(CTF)2007」が、2007年12月6から9日の日程で行なわれた。これはタイ国政府観光庁(TAT)とチェンマイ観光業協会(チェンマイ・ツールズム・ビジネス・アソシエーション)の共催で、招かれたのは日本、中国、韓国、香港、台湾、マレーシア、シンガポール、オーストラリアの8ヶ国の旅行業関係者とメディアの総勢約120名。各国の代表団はチェンマイのホテルやゴルフ場、スパ等を視察し、8日にはリバーサイドにあるホリデイ・インにおいて討論会やビジネスセッションが行なわれた。
フォーラム当日、冒頭でTAT総裁のポーンスリ・マノーハン氏は、「経済発展著しいチェンマイだが、歴史的な古都の風情は健在であり、観るべきものが多い。ホテルやスパ、ゴルフなど各種施設も充実度を増している。また、昨年1月に開かれた国際園芸博では300万人以上が訪れるなど盛況を博した」と挨拶。さらに「近い将来、中国雲南省からチェンマイ、バンコクを通ってシンガポールにまで到達する幹線道路『アジアン・ハイウェイ・ネットワーク』が完成すれば、さらに多様な旅スタイルの誕生と観光拠点としてのチェンマイの重要性がますますクローズアップされるだろう」と、観光客拡大に向けたインフラ整備の現状を説明するとともに、今後の需要拡大に対する期待を語った。
◆気候が温暖で歴史・文化の素材が豊富
バンコクから北へ約700キロメートル、タイ第2の都市チェンマイへはバンコクから約1時間ほどのフライトだ。現在、日本からの直行便はないが、成田や関西、福岡などの主要空港からはバンコクで乗り継いで同日中にチェンマイに着くことができる。
チェンマイのデスティネーションとしての優位性は、ロングステイヤーに人気であることが示している。日本からは現在、1100人が滞在しているといわれるほどで、その理由のひとつとして、温暖な気候があげられるだろう。タイ北部の1000メートルから2500メートル級の山々に囲まれた高原地帯にあるため、日本の琉球地方と同じ亜熱帯性に属し、特に乾期となる10月から2月は日本の初夏のような気温で非常に過ごしやすい。山間部では、イチゴやリンゴなど冷涼な土地でしか育たない果物や花々も栽培でき、市場では非常に多彩な食材や花々が並ぶ。
チェンマイは今から700年前に築かれた歴史ある古都だけに、約300もの寺院があるといわれ、名刹・古刹の寺院巡りには事欠かない。タイの寺院巡りはシニア世代だけでなく、最近では若者にも愛好者が多い。また、シルクや絵傘、陶磁器、木製品など、タイを代表する工芸品はチェンマイが名産地。バンコクなどで売られている工芸品の多くがチェンマイ製だと言えるほどである。市内の制作工房を見学したり、学んだりと、カルチャー体験が豊富なこともチェンマイの大きな楽しみといえるだろう。
◆物価が安く、バリューな旅を楽しめる
「足裏マッサージ30分80バーツ」―これはチェンマイの繁華街を歩いていて見つけた店の値段表である。80バーツは日本円で換算すると約270円。いくら日本よりも物価が安いタイとはいえ、この値段はバンコク市内のマッサージ激戦区と比べても安い。早速、体験してみたがタイ古式にのっとった絶妙なマッサージで、腕の良さがうかがえた。
チェンマイはバンコクやプーケット、パタヤなどの他の主要観光地と比べても全般に物価が2割から3割安いといわれる。市の中心部には有名なナイト・バザールをはじめ、大小の市場があり、ありとあらゆるものが非常に廉価で販売されている。ことに手工芸の都として名高いだけにアジアン雑貨なども非常に豊富で、女性観光客にも評判が高い。
「チェンマイにあるものはバンコクにもあるけれど、安さが違う」と話すのは、タイの事情に詳しい日本人コーディネイター。「タイ第2の都市といってもバンコクほどの大都会ではなく、程よい大きさで移動しやすいところも、旅行者にとって馴染みやすいのでは」
◆高級ホテルも多様で供給も安定。望むは日本からの直行便のみ
チェンマイでは数年前からホテルの建設ラッシュが続いており、現在5ツ星ホテルだけでもざっと数えて5軒以上、4ツ星はその倍、さらに3ツ星を含めると100軒以上がひしめいている。また08年4月末には「ル・メリディアン・チェンマイ」も開業する予定。国際的なホテルグループのプロパティのほか、デザイン性の高いブティックホテルやスパをコンセプトとしたデラックスなリゾートも登場している。
タイはアジアの中でもホテルのクオリティが高いが、それに加えてチェンマイはスタッフなどのホスピタリティでも群を抜いている。もともと北部の人々はメンタリティが高いといわれているが、チェンマイではホテルがやや供給過剰気味で、競争が激しいという現状も関係しているかもしれない。
チェンマイ観光業協会の副会長を務めるボラポン・ムチャオタイ氏は「現状はホテルが供給過剰気味であるのは否めない。ただ、20年前は観光地としてまったく知られてなかったチェンマイが、現在はタイ北部きっての観光拠点となった。まだまだ知られざる魅力がチェンマイと周辺にはあり、さらなる観光客誘致に期待が持てる。ぜひ、日本からの直行便を復活させて欲しい」と今後の可能性に期待を寄せる。座席数が増加しても、十分に受け入れられる基盤が整っている。市内にある文化・歴史的な観光スポットのほか、スパやゴルフなどのアクティビティも充実しており、ロングステイ年代である団塊世代から、高原でゆっくり過ごしたい若い女性はもちろん、豊富な客室量を武器に、今後は小中規模のMICEなどの開催地として数を増やせる可能性はあるだろう。
チェンマイのおすすめアクティビティ
ゴルフ―設備充実のクラブが人気
チェンマイ郊外には約9ヶ所のゴルフ場があり、
いずれも市の中心部から車で40分から1時間ほど
の距離にある。平日は1400から2000バーツ
(約4700円〜6700円)以下で、キャディを使う
のが一般的。キャディフィーは1人200バーツ
(約670円)以上が相場だという。カートは2人
乗りで800バーツ(約2700円)位。11月から4月
初旬頃までがゴルフに最も適した季節といえる。
最近では、諸施設が整ったゴルフ場が登場して
おり、市街から車で45分程度の「チェンマイ・
ゴルフ&スパ・リゾート」は18ホールのコース
のほか、最新のスパを備えている。08年には宿
泊ヴィラもオープンする予定で、夫婦やカップ
ル、女性ゴルファーの利用を見込んでいる。
▽チェンマイ・ゴルフ&スパ・リゾート
http://www.chiangmaihighlands.com
エレファント・キャンプ―自然の中で象と触れあう
自然豊かなチェンマイの郊外には、象の保護
と飼育をしているエレファント・キャンプがい
くつも存在。餌付け体験や背中に乗って川を渡
ったりジャングルをトレッキングしたりといっ
たふれあい体験ができる。鼻で絵筆をつかんで
見事な絵を完成されるエレファント・ペインテ
ィングを披露するところも多い。また、いかだ
でゆったりと川を下るラフティングを体験でき
るところも多く、ファミリーやカップル、グル
ープなどあらゆる客層に人気の高いアクティビ
ティだ。写真は、チェンマイ郊外のマエ・タマ
ン渓谷に新設されたエレファント・ライフ・エ
クスペリエンス(ELE)。オリジナルの企画のオ
ーダーも可能で、インセンティブなどにも活用
できる。
▽エレファント・ライフ・エクスペリエンス
TEL:66-81-724-4211
スパ―ラグジャリーな施設で、上質なリラクゼーションを
チェンマイの傾向として、女性客が憧れるラ
グジャリーなスパが増加。注目したいのは、宿
泊施設の整った総合スパ施設だ。チェンマイ中
心部にある「ラリンジンダ・ウェルネス・スパ
・リゾート」は、各種マッサージ、サウナ、プ
ール、ジムなどの設備に加え、高級リゾート並
みのデラックスルームやスイートの宿泊室をあ
わせ持つ複合スパ・リゾート。食事療法をあわ
せたトータルなビューティ&ヘルスケアを提供
する。マッサージ棟の建物は約140年前に造られ
たチーク材の貴重な木造建築で、当時の調度品
などもさりげなく置かれ、チェンマイの歴史を
感じさせてくれる。スパのみの利用も可能。
▽ラリンジンダ・ウェルネス・スパ・リゾート
http://www.rarinjinda.com
「ウィアン・クム・カム」遺跡―300年の眠りから醒めた帝国
チェンマイから南へ5キロメートルほどにある
ウィアン・クム・カム遺跡は、かつてのランナ
ー王朝がチェンマイ遷都以前に築いた都の跡で
ある。1984年の発掘調査でその全貌が明らかに
なったが、今世紀に入って観光地として整備さ
れ、チェンマイの新たな観光資源として脚光を
浴び始めている。
ウィアン・クム・カムは、ランナー朝のマン
ラーイ王によって13世紀末に建設されたが、王
はすぐにチェンマイにも都を築き、そちらに遷
都してしまった。結局、都としての役目は果た
さなかったものの、当時はビン川がすぐ近くを
流れていたため交易都市として繁栄をする。と
ころが18世紀に入ってビン川が歴史的な大洪水
を起こしてウィアン・クム・カムは水没、ビン
川も流れを変えてしまったため、もはや交易の
役目を果たせないウィアン・クム・カムはその
まま見捨てられてしまった。
ウィアン・クム・カムには40もの遺跡がある
とされるが、現在、観ることができるのは約9ヶ
所ほど。崩れかけた遺構や柱の基台などが牧歌
的な風景の中に点在し、ノスタルジーを掻き立
てる。遺跡巡りには、現地で待機している2人か
ら3人乗りの馬車を利用すると効率が良いだろう。