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ビザまめ知識(4)−ビザ申請却下の事例と注意(その2)

  • 2008年1月17日
 前回に引き続き、今回もビザ申請却下の事例を説明する。9.11事件以降、ビザ審査が厳しくなり、取得が困難になっている。しかし、事前にビザについての知識や傾向を知っていれば未然に防げたケースが見られる。<文:チャールズ・W・プレイ弁護士(アルビスジャパン主任弁護士)>
                                                                       
今回紹介する申請却下事例の対象

・E-2ビザ(投資家ビザ)
・L-1Aビ(駐在ビザ)

前回紹介した申請却下事例の対象

・B-1ビザ(出張ビザ)
・H-1bビザ(就労ビザ)
・J-1ビザ(研修ビザ)
◆ビザまめ知識(3)−ビザ申請却下の事例と注意(その1)(12.20)
 ttp://www.travelvision.jp/modules/news1/article.php?storyid=33242


<E-2ビザ(投資家ビザ)のケース>

事例1:
 Cさんは米国に住む友人や経験者から情報を得ながら新規事業を米国で立ち上げ、E2ビザを申請したが却下されてしまった。米国の友人や経験者からは必ずビザは取れると聞いていたのに、何故申請が却下されたのか判らない。

解説1:
 Cさんの申請却下の理由は、十分な会社規模や投資実績が無かったためである。

 Cさんが友人や経験者から得ていた情報は、ビザ取得が今より容易だった時代の過去の話であり、現在の米国ビザ傾向を知らなかったことが却下の原因である。

事例2:
 ある大手企業では、これまでに何人もの社員がE2ビザを取得していたが、今回Aさんが申請したところ却下されてしまった。

解説2:
 これはAさんの経歴が、E2ビザに指定されている「管理職としての経験」を満たしていないことが却下の理由となっている。Aさんは日本で、翻訳・経理・秘書的業務に就いていたが、管理職というには経験が不十分であった。それにもかかわらずE2ビザを申請してしまったために却下となった。世界的に有名な大手企業の社員であっても、会社の知名度だけでは申請許可は下りない。ビザの申請動機そのものが重視される傾向になっているのである。


<L-1Aケース(駐在ビザ)ケース>

事例1:
 Dさんは米国にある子会社に転勤が決まったため、L1ビザの申請をしたが却下されてしまった。

解説1:
 L-1ビザは、日本での管理職レベルの経験がビザ申請以前の3年間に1年以上必要だが、Dさんの経験年数は1年未満であった。くわえて、転勤先の米国子会社にとって、Dさんのポジションが必要であるという立証が不足していたのも却下の理由となった。

事例2:
Eさんが米国に設立した子会社のマネージャーとしてL-1ビザを取得した。その後、更新のため再度L-1ビザを申請したが今度は却下されてしまった。

解説2:
 米国に設立した子会社と日本の会社との資本関係が、最初のL-1ビザ発給時と変わっていたためにビザ発給の規定を満たさなくなってしまった。L-1ビザは、日米企業または多国籍企業(米国企業は外国企業の親会社、子会社、提携会社または支店でなければならない)で、 50%以上の持ち株占有率の子会社(米国法人)が必要だが、これはLビザ取得時だけでなくLビザを保持していく限り継続していく規定なのである。Eさんは過去にビザ取得に成功していたために今回も取れると考えてしまい、ビザの既定に対する理解が不足していた。

 一度でもビザ申請が却下されると、その後の米国入国が一層難しくなってしまう恐れがある。申請却下を回避するためにも事前の準備が大切になってくる。却下された原因を申請者がきちんと把握しないかぎりは、申請を繰り返しても同じ結果になるばかりか、何度も却下が続くと領事の心証を悪化させるので慎重な姿勢が必要である。


執筆:チャールズ・W・プレイ弁護士
(アルビスジャパン主任弁護士)

経歴:
前カナダ外交官
カナダ弁護士会会長(1997〜1998年)
CIPC議長

前カナダ外交官。現在は移民法専門事務所のアルビスジャパ
ン主任弁護士として、多くの日本人のビザや永住権などの取
得サポート。米国移民弁護士協会(AILA)、やカナダ弁護士
協会(CBA)や国際弁護士協会に所属し、専門家、企業や法人
に対し米国、カナダ両国の移民に関する法的サービスを行う
国際移民弁護士。 現在、移民問題に関する記事を執筆し、移
民政策に関してカナダの上級政府官僚に定期的にアドバイスしている。



▽ビザまめ知識 シリーズ
ビザまめ知識(1)−9.11テロ事件以降、米国ビザに生じた変化(2007/11/22)
ビザまめ知識(2)−米国ビザ発給数の推移(2007/12/06)
ビザまめ知識(3)−ビザ申請却下の事例と注意(その1)(2007/12/20)