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トップインタビュー:ヴァージン・アトランティック航空日本支社長 ポール・サンズ氏

  • 2007年12月12日
「UK-Japan 2008」を契機にファンの利用獲得めざす
評価高いサービスをさらに拡充


ヴァージン・アトランティック航空(VS)が運航する東京/ロンドン線は4社による競争が激しく、円安基調で海外旅行の割高感による旅行需要の伸び悩みなど、市場環境は厳しい。ただ、VSはアッパークラス・スイートやプレミアム・エコノミーの導入、今年7月には成田空港のビジネスクラスラウンジをリニューアルし、エアライン・オブ・ザ・イヤーを受賞している質の高いサービスの向上も継続している。来年は「UK-Japan 2008」のオフィシャルエアラインに決定、各種イベントに全面的に協力する。現在の市場動向や今後の取組みを、日本支社長のポール・サンズ氏に聞いた。(聞き手:弊紙編集長 鈴木次郎、構成:松本裕一)


東京/ロンドン線の現在の旅客動向を教えてください

ポール・サンズ氏(以下、サンズ) 東京/ロンドン線は、日本航空(JL)、全日空(NH)、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)が就航しており、最近は日本人の海外旅行市場が伸び悩み、円安基調の為替相場の影響もあり芳しくはない。ただ、搭乗率は公表していないが、高いレベルを維持、かつ、昨年と比べわずかであるが増加しており、厳しい市場環境にあるものの、結果には満足している。日本就航から18年が経っており、ブランド・イメージが確立したことも、こうした結果を収める要因のひとつだろう。

ビジネス需要を着実に獲得し、伸びにつながったのですか

サンズ 確かにビジネスクラスの利用は増えている。日本路線では2004年にアッパークラス・スイート、2006年にプレミアム・エコノミーに新シートを導入しており、それぞれビジネス客に評価され、利用されている。レジャー需要が市場全体として伸び悩んでいる現状からすると、ビジネス需要をさらに伸ばしていきたい。懸念材料はサブプライムローンの影響がどこまで及ぶかだが、今のところ日本発のビジネス需要への影響は限定的とみている。

サービスを拡充する計画はありますか

サンズ 日本市場で行われている各種の調査でも弊社のサービスは高い評価を得ており、あらゆるサービスには絶対の自信を持って提供している。今年は成田空港第1ターミナル北ウイングのラウンジ「クラブハウス」をリニューアルした(記事写真ニュース)。ラウンジに入ると、「竹」に見えるパーティションは、裏から見ればイラストが描かれ、日本らしさとモダンさを取り入れている。実用面ではリニューアルを契機に総座席数を増やし、合計で70席として使い勝手にも配慮した。

ヒースロー空港で新たなサービスを提供するそうですね。詳しく教えてください

サンズ ヒースロー空港でも、ビジネスクラスの旅客を対象にしたサービス改善に着手している。長蛇の列ができるチェックイン・カウンター、ロストバゲージなど、ヒースロー空港はこのところ発生した一連の事情から好ましくないイメージが定着してしまった。こうしたイメージは新たなサービスを提供することで払拭していきたい。既に11月から運用をしている新施設「アッパークラスウィング」が第1弾だ。この施設はアッパークラス利用者専用で、無料送迎車でターミナル3の2階の到着口に旅客が到着すると、その場で搭乗券を渡し、VS専用のセキュリティを利用してVSラウンジまで10分とかからない快適さを確保したサービスだ。荷物は旅客が到着すると、スタッフがその場で取り扱い、旅客は安心して出発できる。

 快適性を確保するため、ターミナルに到着する送迎者からの連絡により、いつ旅客が到着するか正確に分かり、搭乗券の準備もしている。こうしたIT技術を利用しながら、さらに予約状況から、スタッフの人員配置も的確に行い、旅客が快適に空港施設を利用できるようにしている。また、旅客は座席変更をはじめ、特殊なケース以外はカウンターに立ち寄る必要もないことから、空港での体験のイメージが変わるだろう。ヒースロー空港では、2008年3月末にブリティッシュ・エアウェイズ(BA)がターミナル5の使用開始を予定しており、それを前にVSが利用するターミナル3のコンパクトさを売りにしたサービスを定着させたい。

 さらに、1階のチェックイン・カウンターも拡張し、セルフサービスチェックイン機の台数も拡充し、利便性を高めたエリアがまもなく完成する。出発だけでなく、到着用ラウンジの整備も計画しており、今後2年程度で提供できるだろう。

ヒースロー空港では、短距離を中心に離発着する3本目の滑走路建設の話が進んでいます

サンズ VSとして、短距離路線に参入する計画はない。3本目は短い滑走路だが、既存の2本で離発着する航空機のうち、短距離路線が新たな滑走路を使用すれば、発着枠に余裕ができる。これにより、新たな展開ができる可能性が開けてくる。短距離路線の就航も可能性があると思うが、引き続き長距離路線を運航する航空会社として展開していく。

日本発の乗継客の動向と今後の方策は

サンズ 乗継需要は、為替相場の円安基調が影響に大きく左右されないデスティネーションの需要を獲得できるメリットがある。東京/ロンドン線の需要も高く、上期はイギリス、またはロンドン行きの需要が強く、乗継路線にまで席が回らない。戦略的には下期に重点的に取り組む課題だろう。注力していきたい方面は、6月から運航を開始したロンドン/ナイロビ線を利用したケニア、日本市場で注目されている東欧などに加え、フランス・パリ、イタリア、マルタ、アイルランドがある。また、ユーロスターとフライ&レイルという組み合わせもできる。このうちマルタは、マルタ航空(KM)と共同で展開しており、マルタで英語を学ぶという旅行商品が開発される動きにつながっており、非常に興味深い分野だ。

 乗継需要を促進するには、VSがロンドン以外にもネットワークを持つ航空会社であると認識してもらう必要がある。ただし、メディア露出というより、旅行業界や実際に体験をした消費者のクチコミを通じ、徐々に浸透していくように期待している。特に旅行業界は、旅行者に対してサービス、デスティネーションなど多くの情報を提供してくれる最良のパートナーと考えている。

来年、日本で開催される「UK-Japan 2008」にはどのように関わっていきますか

サンズ ご存知のとおり、弊社は「UK-Japan 2008」のオフィシャルエアライン(→関連記事)であり、非常に重要なイベントであると捉えている。予定では1年間に約100を越すイベントが開催されるが、イギリスに少しでも興味を持つ消費者が実際のイギリス訪問につながる絶好の機会だ。特に、海外旅行が伸び悩んでいる時期に、英国大使館やブリテッシュ・カウンシルとともに、イギリスをプロモーションすることは年間を通してVSをアピールすることもできる。

 「UK-Japan 2008」は美術、音楽、デザイン・ファッション、演劇・ダンス、映画、科学技術、そしてサッカーなど、イギリスを訪れたいという意欲を高めることにつながるだろう。こうして生まれる「行きたい」という気持ちは目的が先にあるため、たとえ円安であっても、旅行につながるだろう。この一連のイベントを通じて、日本でイギリスへの「熱意」を高めたい。また、イベントから派生した特別なツアーを作るよう旅行会社にも働きかけて行きたい。

ありがとうございました