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JATA、サーチャージ高騰の対応を早急に検討−≪オピニオン≫消費者目線を大前提に議論を

  • 2007年11月22日
 日本旅行業協会(JATA)事務局長の奥山隆哉氏は、燃油価格高騰による燃油サーチャージ額の上昇に対して、「JATAとしてできることを早急に検討する」とし、早期に有識者や海外旅行委員会のメンバー数名と意見を集約、対応策を決める。具体的なことは未定だが、要望書は過去にも提出しているため、「単に要望書を出せばいいという話ではない」とあらゆる方法を検討する。特に「消費者の代理として納得できるかどうか」という観点から、運賃への一本化やサーチャージ額の見直し期間の変更などを模索する。

 議論では運賃への一本化が課題となる。現在、燃油サーチャージの徴収方法が消費者には分かりにくく、苦情を直に受ける旅行会社では「現場のスタッフが『詐欺師』呼ばわりされ、辞めてしまうケースもあると聞いている」(奥山氏)といった不満を訴える考え。このところの海外旅行の低迷にも触れながら、奥山氏は「若年層の海外旅行離れとも言われるが、マーケティング会社などによると、最も有力な仮説はサーチャージが一番の原因」とも紹介している。なお、次回のJATA海外旅行委員会が12月5日に予定されており、その前後で話し合いをする。


▽オピニオン 「海外旅行をする消費者の利便を大前提に議論を」

 燃油サーチャージ額の現在の水準は正直、消費者感覚とはかけ離れている。これは店頭の旅行会社スタッフだけでなく、旅行業界の全員、さらに航空業界はもっと真摯に感じるべきだろう。奥山氏の発言を引くまでもなく、旅行会社は日々、消費者と向きあい、この現実を肌で感じることが多い。実際、韓国行きの商品で3万円台のパッケージツアーもあるが、韓国では往復4000円、新たな料金は4600円となる。3万円がアイキャッチ的な商品であろうと、旅行代金の13%から15%を上乗せされる消費者の立場からすると、文句の一つを言うだけでなく、「海外旅行に行きたくない」となるだろう。いってみれば、消費税が現在の5%が13%から15%になった時の感覚に近いものがある。私の知人で実際に旅行を取りやめた、という人が何人もおり、読者にもそういう事例に触れた方は少なくないのではないか。

 何をすべきか。今後の海外旅行の需要喚起に向けて、旅行、航空業界は共存共栄でなければ成り立たない、という立場から考え直さなければならないと思う。レジャー需要が少なくなると、どうなるのか。法人需要にまで影響が如実に現れたら、収益性が改善されてきている路線の維持も困難となり、一時期のレジャー路線の採算性を検討していた時期とは比べ物にならない甚大な影響を及ぼすという最悪のシナリオも想定しなければならない。旅行・航空業界の論理ではなく、消費者が海外旅行をしやすい環境を作る、という観点を大前提に議論を進め、かつ、JATAにはこうした観点からの主体性を発揮してもらいたい。徴収に関しては、導入の経緯、旅行業界の要望反映などもあり、当時は誰もここまでの水準に高騰するという予想はなかったが、再考するならば、最悪のシナリオを前提に根本から考えを改めなおし、国としても掲げる海外旅行2000万人の実現という視点をぜひ、取り入れて欲しい。(鈴木)



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