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アートとして台頭するアボリジニの芸術、旅行意欲の喚起に期待

  • 2007年10月18日

 アボリジニのアートは、日本ではオーストラリアの観光要素として捉えられているが、世界的には芸術性が高い現代アートとして注目されている。この関心の高まりを背景に、ノーザン・テリトリー政府観光局は旅行需要の喚起策として、積極的に紹介する方針だ。先ごろも「アボリジナル・アート&カルチャー・セミナー」を開催。アボリジナル・アートの専門家で、展覧会などのコーディネートなどを手がける内田真弓氏を講師に招き、その魅力を紹介した。


1億円の評価を受けた作品も


 アボリジニは絵画や壁画、ダンス、彫刻、かご編み、楽器、槍、ブーメランなどさまざまな文化を残し、今に伝えるが、特に評価が高いのは、樹皮画や点描画などのアート。アボリジニの絵が「アート」として評価され始めたのは、1980年代にニューヨークなど海外の美術館で取り上げられたことがきっかけだ。オーストラリアでは1980年代後半になってから現代アートとして美術館に展示されるようになったという。


 アボリジナル・アートの特徴は、狩猟民族で定住の習慣がなく、文字を持たなかった彼らが、神話や部族間のおきて、水源の地図など、生活に基づいた情報を、図形や色などを組み合わせた形で伝承したものである。さらに、西洋の描写手法の影響を受けておらず、その独特さも注目を集めるポイントだ。そのため、現在活躍するアボリジニのアーティストが描く作品には、民族の歴史や文化はもちろん、彼ら自身の世界感が込められている。アーティストの数は土産品を制作するペインターとは別に2000名を超え、彼らの作品が全世界で美術品として販売されおり、その関心の高さが伺える。


 最も評価の高いアーティストの1人が「エミリー」だ。アボリジニは年齢を数えないので定かでないが、10年前に86歳ぐらいで亡くなった彼女は79歳か80歳の頃に絵筆をとり、3000点ほどの作品を残した。アートの概念がないからこそ、砂漠などの自然の色や感覚、そこから受けた感性をそのまま彼女の「ストーリー」として描きこみ、1億円を超える評価を受けた作品もあるという。そのエミリーの作品を集めた回顧展が来年、東京と大阪で約5ヶ月にわたり開催される。世界が認めた偉大な作品が大々的に紹介されることで、日本国内でのオーストラリアへの注目が高まることが期待される。


アボリジニ文化に触れる体験プログラムも充実

 州内の人口の約25%をアボリジニが占めるというノーザン・テリトリーの政府観光局は今後、アボリジニの芸術や文化への興味が旅行需要に繋がることに期待して、プロモーションしていく考え。日本では、先述の現代アートとしての注目度は海外ほどではないものの、日本地区企画戦略マネージャーの上野哲路氏によると、アボリジナル楽器「ディジュリドゥ」の愛好者が国内に2万人おり、潜在市場があると見込む。


 さらにセミナーでは「目的のある旅行が主流になりつつある」として、同州内ならではのアボリジナル文化体験も紹介。例えば、「ウルル・カタ-ジュタ国立公園」は、存在そのものがアボリジニの聖地であり、神話やエピソードが描かれていることを述べ、アナヌー族のガイドで散策するコースや点描を楽しむワークショップなどを提供する「アナヌー・ツアー」や、砂漠で夕陽に照らされるウルルやカタ-ジュタを眺めながらディナーを楽しむ「サウンズ・オブ・サイレンス」などを紹介した。



エミリー展


●大阪
会期:2008年2月26日から2008年4月13日
会場:国立国際美術館


●東京
会期:2008年5月28日から2008年7月28日
会場:国立新美術館



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