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現地レポート:イギリス・その1

  • 2007年9月28日
芸術家たちが心を奪われた湖水地方を辿る旅
〜映画「ミス・ポター」で注目のデスティネーション〜



イギリスの湖水地方といえば、ピーター・ラビットやワーズワースを思い浮かべる人も多いだろう。ロンドンから車でおよそ6時間。グレートブリテン島のほぼ中央に位置する湖水地方は、イギリス人の心の故郷ともいうべき場所で、2243平方キロメートルの大地に500以上の湖が点在すると言われている。ワーズワースやベアトリクス・ポターなどの芸術家たちが心を奪われたこの地はメジャーなデスティネーションであるが、今秋公開の映画「ミス・ポター」の影響で、ますます注目が高まるだろう。話題のスポットに新素材を絡め、ファーストタイマーはもちろん、リピ
ーターにも十二分に楽しめるツアーを造成したいところだ。
(文:加藤明子、取材協力:英国政府観光庁ヴァージンアトランティック航空


ワーズワースとポターの想いが詰まった場所

「ダブ・コテージ」に残るワーズワースの思い出

湖水地方の中心に位置するウィンダミア湖から北へゆくと、「世界で最も美しい村」といわれるグラスミアに辿り着く。1時間から2時間もあれば湖岸をぐるりと歩いてまわれる小さな湖は緑の木立に囲まれ、周辺には古い石造りの家が立ち並ぶ。時間の流れが止まったかのような錯覚を覚える。

グラスミアでは、イギリスを代表する詩人ワーズワースの住居だった「ダブ・コテージ」を訪れたい。湖水地方の典型的なスレート板葺きの小さな家で、ワーズワースは1799年から1808年の9年間、ここで妻子や妹のドロシーと暮らしながら、数々の名作を生み出した。

屋内ではワーズワースの暮らしぶりが垣間見られるのはもちろん、当時の生活スタイルに触れられるのも面白い。例えば貯蔵室には床から地下水が湧き出ているが、冷蔵庫がなかった当時は地下水を引きいれ、気化熱を利用して野菜やビールを冷やしていたそうだ。貯蔵室のちょうど真上にあたる子供の部屋は、地下水の湿気をさえぎるため、壁紙代わりに無数の新聞紙が貼り重ねられていることから「ニュースペーパー・ルーム」とも呼ばれている。ワーズワースが決して裕福ではなかったことが伺い知れる。



現在、ダブ・コテージの隣には「ワーズワース・ミュージアム」があり、直筆の原稿などが展示されているほか、「ポエトリー・リーディング」といった催しも定期的に開催されている。ワーズワースの生涯を詳しく解説した日本語のパンフレットも用意されているので、ツアー企画の参考になるだろう。

▽ダブ・コテージ
http://www.wordsworth.org.uk/Default.asp?page=6


ミス・ポターゆかりの地:ピーター・ラビッドの故郷

上流階級の家に生まれた絵本作家のベアトリクス・ポターは、幼いころから避暑のために湖水地方を訪れていた。そこで目にした自然や動物たちをもとに作り出されたのが、ピーター・ラビットをはじめとするキャラクターたち。湖水地方には、ポターとピーター・ラビットゆかりの場所が数多く存在する。




なかでも代表的なのが、ニアソーリー村にあるヒルトップ農場。過保護な親から独立し、絵本作家として生計を立てたポターが、印税をもとに初めて購入した1人住まいの家だ。20世紀初頭、湖水地方にも都市開発の波が押し寄せていたが、ポターは財産をつぎ込んで農地を買い取り、環境保護団体「ナショナル・トラスト」に寄付することで、開発に歯止めをかけようとしていたのだ。もしポターがいなかったら、現在の湖水地方の姿はなかったかもしれない。

ヒルトップはポターの強い希望で、現在も「農場」としての機能が継続されている。彼女が購入した農場は他にもたくさんあるが、なかでもヒルトップは「我が家」と呼ぶほど、愛着があったようだ。

なお、ヒルトップは文化財保護の理由で建物内部の撮影は禁止。一度に入場する人数も制限されている。10分刻みでガイドツアーが組まれているので、事前予約が必要。日本語のツアーも用意ある。

▽ヒルトップ
http://www.hilltopshop.co.uk/


グルメを唸らせる、豊かな食材


酪農がさかんな湖水地方では、当然のごとく乳製品
が美味しい。搾りたての牛乳はもちろん、地元の農
家で手作りされたチーズ、ハムやソーセージなど、
どれも自然の恵みが凝縮された食材ばかりだ。

ヒルトップ農場のすぐ隣にあるパブ「タワー・バンク・
アームズ」では、農家産のチーズの盛り合わせが
メニューに並ぶ。イギリスを代表するチェダーは、
バラエティの豊富さと豊かな風味に圧倒される。
店長自慢の地ビールは、常時20種類以上をライン
ナップ。伝統的なカンバーランド・ソーセージやフ
ィッシュ&チップスとの相性は抜群だ。

また、ホークスヘッドという村の奥深くにある農場
「ユートリー・ファーム」では、のびのびと育てられ
たビーフやラムを味わうことができる。ここも、先述
のベアトリクス・ポターが買い取った農場のひとつ。
もうひとつの名物が、農場のマダムの手作りスコー
ンだ。材料は朝採りの卵と絞りたての牛乳、それに
バターと小麦粉と、とりたてて特別ではないが、
マダムいわく「ベーキングパウダーを使わず、
空気を含ませるように手早く混ぜること」が美味しさ
の秘訣。手のひらが隠れるほどのカントリーサイズ
だが、ケーキのようにフワフワでペロリと平らげて
しまう。このスコーンは、ウォーキング客だけに
振舞われる特別メニュー。スコーン目当てに、
はるばるフットパスをやってくる登山客も少なくない。

▽タワー・バンク・アームズ
http://www.towerbankarms.co.uk/

▽ユートリー・ファーム
http://www.yewtree-farm.com/









現在、取材した湖水地方を舞台に映画『ミス・ポター』
が公開されています。ぜひ、ご参考ください。
配給:角川映画株式会社 日劇3他全国ロードショー
上映時間:93分
www.miss-potter.jp













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