現地レポート:ベルギー・その2

  • 2007年7月12日
歴史と風格漂う「スパ」と、周辺を訪ねる


 森と緑に囲まれた丘陵の続くワロン地方。ここでは緑に守られていたかのように、懐かしい風景をとどめる小さな村を訪ねたい。例えば、ベルギー東部のリエージュから約40キロメートル、豊かな牧草地帯を抜けた水の町「スパ」は、中世以降、ベルギー王室やヨーロッパの王侯貴族、文人たちに保養地として人気を集めてきた場所。近郊のスパ・フランコンシャンのサーキットでは、毎年9月にF1グランプリが開催されるなど、世界から訪れるセレブリティたちを受け入れている。


アルデンヌの豊かな森のリゾートへ

 「スパ」の語源としても知られるこの町の散策ではやはり、源泉を訪れたい。最も有名なピエール・ルグランは、石造りの壮麗な建物の中にあり、炭酸の強い湯が湧き出ている。近郊の森の中にも「王妃の泉」、「トヌレの泉」などの源泉が点在し、歴史に関連付けながら案内するのも一案だ。

 宿泊施設にもこだわってみよう。「マノワール・ド・レビオル」は、スパから車で約30分のところに位置するシャトーホテル。アルデンヌの森に囲まれた丘陵にある王族の館を改装した全16室がスイートの高級ホテルだ。近年、内装がリニューアルされ、壮麗なゴシック様式の建物に一歩足を踏み入れると、モダンな現代デザインの空間が現れる。現在、スパ施設を建設中で2007年9月にはオープンする予定だ。ガストロノミック・ホテルとしても知られ、ジビエ料理などを提供するレストランを利用するだけでも、その味わいと壮麗な雰囲気に満足できるだろう。

▽マノワール・ド・レビオル http://www.manoirdelebioles.com/













「ワロン地方の美しい村」花の村、トルニーを訪ねる

 小さな歴史ある村々が数多く点在するベルギー南部の中でも、「最も美しい村」の一つと言われるのが最南端の村トルニーだ。ブリュッセルから約200 キロメートル弱、人口はたったの220 人の小さな村は、美しい花で飾られた「花の村」として知られている。その名のとおり、6月から9月頃に訪れれば、バラやチューリップ、ハーブが太陽の光を浴びて美しい色彩をつくりだす光景を見られるだろう。

 標高230メートルのトルニーの丘から南の方角を望めば、目の前にはフランス国境があり、村を散策すれば古代の洗濯場や、ローマ時代の遺跡など見所も多い。中世から続く家並みには、石造りの壁に南仏産の茶色い屋根瓦、窓辺や玄関を色彩豊かに飾る花が美しいコントラストを見せる。のんびり散策すれば、自然とともに生きる人々の暮らしに、心和むことだろう。

 ワロン地方では非営利団体が「ワロン地方の美しい村」を選出している。現在は22 の村が登録されており、景観の美しさから「ベルギーのプロヴァンス」と地元の人々が自慢するほど。そんな村の中でもトルニーは、ゆっくりと時間をとってガイド付きで散策がおすすめだ。



ブリュッセル郊外で日本人の心を癒す、やさしい芸術に出会う
「フォロン・ミュージアム」


ヤン・ファン・アイクに代表される15世紀フランドル美術
の時代から、ルーベンス、マルグリットなど、ベルギーは
個性あふれた芸術家たちが、独自の伝統と新しい芸術
の流れを生み出してきた国。そんな芸術探索の新素材
としてすすめたいのが、フォロン財団ミュージアムだ。

シャトー・ド・ラ・ユルプの敷地内に位置し、農場跡を改装
したという館内に展示されているのは約500点。フォロン
の作品はベルギー国内やヨーロッパでの評価が高く、
ここを訪れる訪問者数は年間で約3万5000人。そのうち
日本人は300人ほどだという。

展示品は、絵画やポスター、切手、パンフレット、タぺストリー、ステンドグラス・
オブジェ、彫刻などさまざま。作者の若年期における都会での苦悩や、晩年の自然
や人類、生物への愛情を描いた作品は、近代的なデザイン性や独特な感性を軸に
した自由なタッチでありながら、どこかやさしさにあふれている。特に、彼が好んだ
「鳥」がモチーフの作品は、日本人の多くに好まれることだろう。ブリュッセルでの
オプショナルはもちろん、商品への組み込みが十分に可能な素材である。

なお、2008年には4月25日から9月28日まで、ワロン地方とブリュッセル市が大規模
なイベントとして「ザ・アート・オブ・フォロン・イン・ベルギー」を開催する。詳細は
2007年秋以降発表される。

▽フォロン財団ミュージアム  http://www.fondationfolon.be/
大人:7.5ユーロ、学生・シニア:6.2ユーロ
※アクセス:公共機関なし。ブリュッセルから車(タクシー)で約1時間。



(取材協力:ベルギー観光局/フィンランド航空)

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