観光活性化フォーラム
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受注型で活路、団塊向け企画や新タイプの職場旅行に可能性あり

  • 2006年11月20日
 日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)が17日、東京で受注型企画旅行推進セミナーを開催、多数の受注型企画旅行のヒントが提議された。基調講演とパネルディスカッションに登壇した、マガジンハウス書籍編集プロデューサーの島田始氏は、近畿日本ツーリスト札幌支店のデトックスをテーマにした募集型企画旅行を紹介。デトックスがブームだが、札幌では充実したデトックスの施設がないため、東京で体験するツアーを企画した着眼点を評価。真に消費者ニーズを捕らえた企画提案が、受注型を含む旅行商品に求められているという。

 一方、問題提起者として講演とパネルディスカッションに登場した、観光進化研究所代表の小林天心氏は「旅行を手段とする企画」を提案。「健康に関する活動に付随する旅行のほか、同窓会や職場旅行が増える」と注目する。特に職場旅行に関しては景気回復も後押しし、慰安だけでなく研修を取り入れた社員旅行やアッパークラス利用と高級ホテルに宿泊する旅行が、個人事業主を中心に流行していることを紹介した。また、広告会社が積極的に取り組む大規模なイベントなどは「旅行会社が(同様なことを)してもいいのでは」と旅行会社の新たな可能性を示した。


▽正確で最新の情報受信、マーケティングが重要

 今後、旅行業界では60%の旅行会社が淘汰されると予想されているが、両氏とも、生き残るには正確な市場調査が重要と訴える。島田氏は「(旅行会社の)企画と(消費者が)買いたいものがずれてきている」と指摘した上で、「微差を捕えることが数年後に大きな差になる」と現在の企画手法の改善を呼びかけた。微差を見極める方法として映画業界を引き合いに、映画館ではトイレに行きやすい両脇の席の人気が高くなっていることや、昨年から邦画の動員人数が全体の半数にまで伸びていることから「主要客層が団塊世代に移行したことが分かる。これは、専門の映画業界も把握していなかったこと」と、常識に捕らわれないマーケティングの重要性を述べた。また、自己投資があってこそ微差をなくすことができると説明した。
 
 さらに、個々のお客が高い満足度を感じる企画であるかを確認することで、質が向上するとも提案。企画のみならず、企画をプレゼンテーションする表現力や伝達方法、さらには徹底したサービスが実施されて始めて企画完了といえることも追加した。

 小林氏はコミッション収入に頼らず、旅行会社の価値を作る重要性を主張する。「“値ごろ感”と言うのは旅行会社だけで消費者は望んでいない。充実したコンテンツを求めている」と、徹底したマーケティングによる市場に即した商品作りを訴求。旅行を通して感動を提供し、信頼関係を構築するという旅行業の原点回帰を改めて呼びかけた。また、生き残りの方法としては「日本人海外旅行者の0.1%のシェアでも年間1700人の取扱いになり、1つの会社として成り立つ」と、ニッチへの参入も奨励した。