観光活性化フォーラム
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IATAビジニャーニ総長、「日本の空港の長期的なグランドビジョンが必要」

  • 2008年9月1日
 国際航空運送協会(IATA)事務総長兼CEOのジョバーニ・ビジニャーニ氏が来日、現在の航空会社の状況、安全の問題、日本の空港の将来像について日本外国特派員協会で講演した。

 航空業界の損益は現在も「赤」の状況。2001年以降の労働コストは33%減、販売流通費は10%減、非燃料関連コストは13%減と各種のコスト削減が進む中で、搭乗率については7月は80%を記録。年初に想定した航空業界としての黒字化が進む状況が揃うものの、燃油費の高騰で実態としては「赤」が続いている。ただし、「経済が好調であること」を前提とした見通しで、2007年には僅かであるものの「黒」になるとの見通し。特に、2001年は1バレル/22ドルから1バレル/60ドルに上昇している中で、損失は縮小しており「航空会社は努力している」との評価も加えた。

 安全面については、各国政府の支援が必要との認識。先ごろのイギリスでのテロ計画を未遂で防いだことについて評価。ただし、安全対策についてテロなどの危機管理については、「航空会社は2001年から56億ドル(約6560億円/1ドル=117円換算)増加しており、政府がやるべき」と求めた。先日のロンドンでの未遂事件でも問題点としては、旅客を足止めしたことを指摘。高度の警戒レベルにも対応し、「ビジネスの継続性」を担保することの重要性を強調している。

 日本に限った問題については、空港インフラについて言及。先ごろの成田空港が民営化されたことの成果として、着陸料の引き下げが行われたこと、さらに中部国際空港が設定する着陸料が成田と比べ30%ほど低い設定であること、関西国際空港の着陸料の割引施策などは評価。ただし、「空港は独占企業」との考えから、今後もこうした「努力」を求めた。
 また、羽田の新しい滑走路、成田の暫定滑走路の延長、関西空港の新滑走路が整備されているが、これらのインフラが過剰とならないことにも警鐘を鳴らす。特に、東京、大阪地域の空港は、「10年から15年程度の需要に対応」しているだけで、「長期的なビジョンを検討しなければならない」と言明し、「グランドプランが必要」としている。

 ビジニャーニ氏は29日に来日。日本航空(JL)、全日空(NH)などIATA加盟各社と会合したほか、31日には国土交通省の鈴木航空局長に対して、上記の意見交換をした。なお、本日に成田国際空港会社の黒野社長と意見交換し、離日する予定だ。