JTBとJCB、事業領域の拡大目指して提携、切符・クーポンに代わるインフラ構築へ

  • 2006年5月31日
 ジェイティービー、ジェーシービーはそれぞれが主力とする旅行事業、カード事業の経営資源を相互活用することを目指した包括的な事業提携で合意、7月に事業開発会社として合弁で「J&J事業創造」を設立する。新会社の社長にはJCB専務取締役の立岡仁氏、副社長にはJTB常務取締役の志賀典人氏が就任する。新会社の資本金は4億9000万円でJTB、JCB共に50%ずつ出資する。事業は「TE&F」の融合としており、両社が強みとするトラベルとエンターテインメント、そしてファイナンシャルサービスに関連したサービスの新規事業を立ち上げていく。

 JTB代表取締役社長の佐々木隆氏は今回の提携について「旅行ではeチケット、インターネット販売など販売チャネルが大きく変化しており、戦後、築いてきた切符などのインフラは根底から崩れるという危惧がある」と語り、認証と決済システムを組み合わせた「旅行業界の新しいプラットフォームを構築する」という。JCB取締役社長の信原啓也氏は「ETC、オンライン販売、公共料金など新たなカード市場で取扱高は増加して要るが、発行枚数は2億7000万枚と飽和状態にあり熾烈な競争だ」と語り、今回の事業で「旅行と決済方法においてに留まることなく、互いに事業領域を拡大していきたい」との考えを示した。


 JTB、JCBで設立するJ&J事業創造では今後、具体的な提携事業としてギフトカード事業、会員サービス事業、法人ソリューション事業について、事業化を想定している。ギフトカードではJCB、JTB共に商品を持つが、この統合を視野に、現在両社の販売額1100億円を今後5年程度で250億円の増加を考えているという。また、JCB会員に対しては5000万人というが、JTBではこのうち1%の「50万人にまで販売を伸ばしたい」と両社の提携による具体的な目標を語った。
 このほか、法人事業ではJCBが発行する法人カード200万枚超の会員に対して、JTBベネフィットなど法人を顧客とする企業が連携し、JCBはインフラ、JTBはソフトで強みを発揮し、例えば社員証を元に旅行の予約・決済まで1つの会社でサービス提供が可能とすることで、顧客に対する付加価値、利便向上を生み出す。

 J&J事業創造は両社の提携事業の企画、開発をJTB、JCBからそれぞれ10名程度の要員を配置して展開する。今後10月を目処に、J&J事業創造を持株会社とする事業会社数社を設立し、旅行業界で切符、クーポン券に代わりうるプラットフォームの構築を目指していく。志賀氏は今回のプラットフォームについて「汎用性を意識したもの」と語り、旅行業界であっても同業他社の参画についても否定はしていない。ただし、具体的には鉄道会社が展開するスイカ、イコカなどの事業をはじめ、携帯電話などについて先行している面もあり、こうした企業連携とタッグを組む可能性もある。