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「自然」に付加価値を加える、ニュージーランド政府観光局日本局長ジェイソン・ヒル氏

  • 2005年12月8日
 ニュージーランド政府観光局日本局長に10月20日付けで就任したジェイソン・ヒル氏がこのほど、トラベルビジョンのインタビューに答え、今後のプロモーション方針などを語った。ヒル氏はクライストチャーチ&カンタベリー観光局で活躍した経歴もあり、地方観光局や現地サプライヤーとの深い関係を持つ。このことから、日本の旅行会社を一段と現地と結びつける「仲介者」としての役割を強調。スキーやスノーボードの冬のスポーツから、ワインや食事、ニュージーランド人のホスピタリティに至るまで、「自然」に加える「プラスアルファ」をこれまで以上に打ち出すことで、付加価値の高い旅行を提供する考えを示した。

 また、ニュージーランド政府観光局日本語版オフィシャルサイトの情報を、来年3月1日に大幅にリニューアルし、情報提供を強化する。具体的にはサイト内での動画情報の提供や、利用者が自分の好みに合わせた旅程が作れるなど、日本でも普及するインターネットによる情報提供を基盤とした利便性の向上を図る。

 なお、インタビューの一問一答は下記の通り。

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−着任して1ヶ月。日本の旅行業界の印象、今後の抱負を教えてください

ヒル:市場全体の環境、ニュージーランドドルが高い為替相場、航空座席など厳しい環境にありながら、がんばっている印象を受けている。
 着任して政府観光局スタッフには、仕事を楽しめる環境を作って行きたい。これは、各スタッフが楽しく仕事ができれば、旅行会社の方と接するときにも伝わる。良い波及効果が生まれるだろう。

 「ニュージーランド」としては多くの旅行業界、消費者に認識は高い。また、「豊かな自然がある」という認識もある。しかし、「何ができるのか」は、不十分だろう。これからは周遊型の旅行だけでなく、滞在型、体験型旅行として伝えていく必要がある。
 日本とニュージーランドの面積はほぼ同じ。例えば、4泊6日の周遊型旅行は北海道から沖縄までを旅行するようなもので、十分に楽しめるか、といえば、そうでない方もいるだろう。周遊型以外の旅行商品の造成を働きかけ、より満足度の高い旅行体験を提供する必要がある。

 ニュージーランドの課題の一つは、リピーターの増加がある。これから旅行会社に対して、ロングステイの提案をしていくことも考えている。一度でもニュージーランドを訪れたことがある人ならば、安全性、魅力などが訪れたことのない方よりも、よく分かっていただけるだろうし、旅行会社にとっても販売しやすいだろう。こうした点で協力を一段と進めたい。


−過去に25万人という日本人の訪問者数の目標を掲げていた。訪問者などの目標を教えてほしい

ヒル: この25万人という数字は精神的な目標。外的要因で大きく旅行市場の環境が激変する時代には、ボリュームよりも質を問いたい。特に、現在ニュージーランドを訪れていただいている16万人の滞在期間を長くしていくことも重視したい。
 私はニュージーランドの地方観光局やサプライヤーなどとのネットワークが強い。観光局は旅行会社の方たちとの結びつきがあり、現地と日本側をこれまで以上に近い関係にすることが出来る。また、ニュージーランド側は、日本のマーケット・トレンドを十分に理解できなかったこともあり、これまで以上に伝えていく必要がある。私はこうした役割を果たすことに自信がある。


−具体的なプロモーションの方向性について、これまでと違いはあるのか。

ヒル: 8街道のプロモーションは当面継続していく。このプロモーションは地方に「何が」あるかを分かりやすく伝えることができる。つまり、具体的には鯨街道や翡翠街道、ペンギン街道など、それぞれの地方の特色を伝えている。今後は、個別の街の名産や名物を開発する必要がある。「自然」だけでは観光客に訴求する魅力が十分ではなく、いわゆる「付加価値」が必要だ。ニュージーランドへの訪問を促すためには、この部分が求められているのではないだろうか。

 変わる点は、冬の6月末から8月について、今まで以上に注力したい。日本ではスキー人口が減少しているというが、ニュージーランドを訪れる日本人のスキーヤーは、日本での減少と比べ、なだらかな減少に留まっている。特に、学生やフリーターでも1ヶ月以上滞在し、スキーやスノーボードを楽しむ人たちを知っている。若い旅行者だけでなく、50代の方でも、冬のスポーツを楽しむ人たちがいる。
 おそらく、流行で楽しんだ人たちは減って、趣味として楽しむコアな層が残ったのだろう。こうしたニッチなマーケットに訴求することも重要な施策となってくる。こうした人たちには一般メディアよりも、コアなメディアで訴えていくことを考えたい。また、プロスキーヤー、レーシングチームなどの誘致も、検討に値するだろう。

 今後は、今までの周遊型と共に、SITへのアピールは重要になってくる。政府観光局としても同一のメッセージをマスに伝えることは楽だが、将来的にはコアなマーケットに訴えていくことで、多くのチャンスをつかみたい。


−個人的なニュージーランドの楽しみ方を教えてください

ヒル: 私個人的には、田舎が大好き。まわりに人が誰もいない場所でウォーキングし、キャンプをする。フライフィッシッング、バーベキューを楽しめば、全く違う世界に入ることができる。ドライブも好き。ニュージーランドは運転しやすい国だし、自然を楽しめる場所が夏のピーク時にも多く残されている。日本でも、自然を満喫したいですね。