日ロ間の観光交流拡大へ、大統領来日で観光客増に向けビザ緩和か、安全策にも言及

  • 2005年11月22日
 プーチン・ロシア大統領の来日に伴い、第1回日露観光交流促進協議会が東京都内で開催された。これは両国の人的交流の拡大を目指し、政治、経済、文化の幅広い日露両国の促進を図るもの。ロシア側は来年中に観光プロモーションを目的とした日本事務所の開設を検討していることを明らかにしたほか、将来的には査証免除・緩和への方向性についても政府間で合意に至る模様だ。協議会は、第2回は来年モスクワで開催することについても一致したようだ。



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 今回のプーチン大統領の来日はロシア経済陣を帯同したもの。小泉首相との会談も21日に持たれたが、両首脳の会談の席上において日ロの観光交流における日ロ間の協力強化に関するプログラムについては、ロシア連邦観光局長官のストジャルコフスキー氏が重要項目として署名したという。今回の来日では両国政府間で12本の覚書等が交わされる模様。
 この12本に査証の簡素化についての書面もある模様で、観光客についてもビザの緩和が盛り込まれているようだ。ロシア側から大統領のイニシアチブの下、査証については観光客の増加も視野に日本側には前向きな策が今後、領事館レベルで交渉されそう。具体的には日本人の観光旅行について、ロシア側の指定旅行会社が取扱う団体観光については無査証とするなど、既に、中国の団体旅行者については対応をしており、日本人旅行者についてもいわゆる添乗員付きパッケージツアーで、このような対応が行われる。既に中国に対して実施している形式が日本についても適用されることが検討されるようだ。

 協議会では旅行者の安全や保護、また観光客の出入国での問題やマーケティングについてなど幅広い課題を検討。安全面では日本人がロシアへ訪問した際の安全確保について、旅行者の一団を警護する危機管理体制の導入についてロシア側が言及。このほか、日本側の指摘としてはホテルのキャパシティの問題、言語の問題。ホテルについては改善に向けた取り組み、言語についても英語の表示を行うなど、前向きな回答を得たようだ。
 このほか、ロシア側から旅行見本市インツアーへの出展要請があったほか、JATA世界旅行博での来年の出展規模を大きくすることにも言及。このほか、航空路については、現在の定期航空路以外に、全日空(NH)が運休するモスクワ便の復活についての意欲が示されたようだ。



 国土交通省総合観光政策審議官の柴田耕介氏は協議会の冒頭、「日露両国の交流は部分的に進んでいる分野もある。しかし、人的交流については極東ロシアと日本に頼る部分が多いのでは。プーチン大統領と小泉首相の会談を踏まえ、全日本、全ロシアでの交流へ結びつけ、われわれの努力すべき分野が明確になった」と協議会の意義を示した。このほか、柴田総政審は自信がロシアに二度ほど訪れたことを踏まえ、「ロシアには文化的、遺産も多く、上野で開かれているプーキシン美術館展にも訪れた。日本の観光客はこれまでに無く、観光だけでなく、文化や歴史にも興味を示している」と語り、「協議会を通じて日ロ間の観光交流拡大に向けた課題を共通認識し、取り組みたい」と意欲も述べた。
 また、ロシア連邦観光局長官のストジャルコフスキー氏もレセプションの席上で「率直、かつ友好的な雰囲気で議論ができたこと、短期間に日本側が多くのことを用意してくれた。今回の話合いが観光プログラムの基礎となる」と評価。文化や技術交流が盛んになることで観光にも貢献し、今後についても実りある協力に期待を示した。

 なお、日本とロシア間の交流は2000年から徐々に増加する基調。日本人のロシア訪問者数は2000年から2004年まで順に6万2600人、7万751人、7万3734人、8万6764人、9万2000人。また、ロシア人の日本訪問者数は順に3万2000人、3万4771人、3万7963人、4万4512人、5万6554人。昨年の両国の交流人口としては15万人弱だ。