自民、中国団体観光ビザ発給対象地域の拡大で提言、政府間交渉にも弾み

  • 2004年3月12日
 自由民主党政務調査会の観光特別委員会(委員長:二階俊博氏)、および訪日観光円滑化問題小委員会(委員長:中馬弘毅氏)は12日、「中国団体観光ビザを巡る諸問題についての提言」を策定した。これは中国団体観光ビザの発給対象地域を、現行の3地域に加え、中国側が要望する江蘇省、浙江省、山東省、遼寧省、天津市への拡大、および4省1市に拡大後の検証を経た上で早期に中国全土へ拡大することが趣旨。12日には幹事長、政調会長、総務会長の党3役に申し入れており、今週には官房長官をはじめ、関係省庁の外務省、法務省、国土交通省などに提言を提出する予定。小泉首相も11日、中国の団体観光ビザ拡大で関係省庁に早期実現の指示を出しており、今回の提言と合わせて政府間交渉の弾みとなりそうだ。拡大の時期に関して、二階氏は「楽観的には夏ごろ、慎重な見方では秋ごろ」と見通しを示したが、「出来るだけ早期に実現したい」との希望も表明した。
 今回の提言の背景は北京市、上海市、広東省の訪日団体観光ビザが2000年9月から発給を開始したものの、対象となる地域が拡大していないことから。拡大が進まない要因は、訪日中国人団体観光者のうち、約0.42%が行方不明となっていること。この状況に法務省、警察庁などが難色を示していた。事態の打開のため、昨年5月に当時の与党3党幹事長が中国政府にビザ発給の緩和条件として8項目の条件を示す書簡を中国側に示し、昨年7月に来日した中華人民共和国国家観光局局長の何光偉氏が4省1市の旅行自由化を示唆。現在まで、実務レベルでの協議が継続している。中馬氏は「小委員会の議論を通じて団体観光旅行についての理解を図った」と語り、難色を示していた外務省、法務省、警察庁の理解も深まったようだ。また、警察庁は在中国日本大使館に一等書記官、三等書記官を派遣し、実務レベルでの交渉を進めており、行方不明者が出ないよう厳格な仕組み作りを中国側に求めている。
 決定に至るまでには、8項目の中に含まれる指定旅行会社以外が取扱う旅行の防止策、失踪者が発生した場合の中国側旅行会社のペナルティ、日本/中国間で失踪者の情報を共有する体制が議論の焦点となるようだ。

▽中国の海外旅行市場へ注がれる熱い視線・・・
 2000年9月から2003年12月末までの団体観光ビザでの訪問者数は8万2418人。訪問者数も徐々に増加、00年から02年まで順に1062人、1万6758人、3万3485人で、昨年は約3万人強。現在のビザ発給対象地域の人口は1億1000万人で、拡大が議論される4省1市の5地域の人口は約2億6000万人と市場は大きく拡大する。中国の観光市場を巡っては、世界各国の熱い視線が注がれている。先ごろ開催された上海世界旅遊資源博覧会(WTF2004)ではオランダ皇室展覧集団が主催者に加わり、大々的なブースを出展。この他、イギリスはビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)の約3倍の出展面積であったほか、ギリシア、スペインのアンダルシア地方もブースを出すなど、ヨーロッパ勢の攻勢は強い。
 このような状況は、送客人数に絶対的な自信も持つ中国側と、失踪者を懸念する日本側との間で交渉が進まなかったことに影を落としていた。しかし、二階氏は「以前と比べて、両国とも相互の事情に対する理解が一段と深まっている」と語り、今後の交渉は「非常に楽観的に見ている」と述べる。国土交通省総合政策局観光部の金澤悟氏も焦点となる8項目に対して「中国側から(焦点となる)何項目かの明確な回答はない」と語るが、「中国側の協力を得ることで早期に実現するよう協議を進める」とコメントした。