JATA新春会見、価格依存から脱却で「変革の年」に ラーケーションのアウトバウンドへの波及効果に期待も
JATA髙橋広行会長
日本旅行業協会(JATA)は1月8日、新春記者会見を開催し、2026年を「変革の年」と位置付けた。価格競争から価値重視への転換を軸に、海外旅行市場の回復、訪日インバウンドの地方分散、国内旅行の需要平準化を進め、持続可能な観光の実現を目指す方針を示した。
会見では、髙橋広行会長が2025年の旅行市場を振り返り、訪日外国人旅行者数は過去最高を更新し、約4000万人規模に達する見通しであると説明した。一方で、海外旅行は前年比で回復基調にあるものの、2019年比では7割台にとどまり、依然として大きなの課題であるとした。国内旅行は宿泊者数こそ前年並みながら、万博効果や旅行単価の上昇により、消費額は増加する見込みとした。
2026年については、円安や物価高といった外部環境を前提に、「安いから行く旅」から「行く理由がある旅」への転換が不可欠と強調した。旅行会社には、単なる手配業務にとどまらず、体験価値を創出する企画力こそが競争力になるとし、価格依存から脱却したビジネスモデルへの変革を求めた。
政府施策との関係では、政権交代後に観光の存在感が低下しているとの見方がある中、総合経済対策や第5次観光立国推進基本計画の検討内容を踏まえれば、高付加価値化や地方分散、国内旅行活性化に向けた方針は引き続き明確であるとの認識を示した。特に、アウトバウンド拡大が計画の柱の一つとして位置付けられつつある点については、業界にとって大きな転機になると評価した。
海外旅行促進策では、パスポート発給手数料の引き下げが検討されている点を歓迎し、取得率が低迷する現状を踏まえれば、取得促進に直結する重要な施策であると述べた。一方、国際観光旅客税の引き上げについては、短期的には海外旅行回復の足かせとなる可能性を指摘しつつも、税収増によって生まれる観光財源を、アウトバウンド促進や若年層支援などに戦略的に活用することが重要だと強調した。
あわせて、2026年度の観光関連予算が大幅に拡充される見通しにも触れ、従来の500億円規模から1300億円規模へと拡大する可能性がある中で、アウトバウンド分野への配分増に期待を示した。確保される財源を実効性のある施策につなげるため、旅行業界としても具体的な提言を行っていく考え。
訪日インバウンドについては、東京、大阪、京都に集中する需要構造を改め、地方分散を進めることが喫緊の課題とした。新たな周遊ルートの開発や高付加価値旅行、観光DXの推進、地方空港の国際化を官民連携で進める必要性を訴えた。JATA会員に占めるインバウンド取扱比率は約6%にとどまっており、今後は会員各社が事業の柱の一つとして取り組む余地が大きいとした。
国内旅行では、人口減少を背景に需要拡大が見込みにくい中、平日休暇を活用する「ラーケーション」の普及や平日旅行促進策を通じ、需要の平準化と市場維持を図る考えを示した。近年は取得日数を拡大する自治体も増えており、平日にまとまった休暇を確保できれば、国内旅行に加え、海外旅行への活用も視野に入るとして、アウトバウンド回復への波及効果にも期待を示した。
人手不足への対応としては、採用や人材育成に加え、AIやDXを活用した業務効率化とビジネスモデル変革を進める必要性を強調した。JATAは2026年を、海外・訪日・国内の三市場をバランスよく成長させる節目の年と位置付け、官民一体で持続可能な観光を通じた日本経済と地域経済への貢献を目指すとしている。

