商品造成まで踏み込む“結果にコミットする研究機関”――ツーリズム総合研究所石原義郎氏が描く新しい観光支援の形

-アウトバウンドの回復や地方観光の活性化については、どのように取り組まれていますか。

石原 アウトバウンドでは、特に若年層へのアプローチが重要です。海外旅行の魅力を伝える情報発信や学生向けのプログラムづくりなどに取り組んでいきたいと考えています。このたび日本旅行作家協会の事務局運営を受託しましたが、これもその取り組みの一環となります。

 地方観光では、単なるPRではなく、地域の観光素材を掘り起こし、旅行会社が商品化できる形にブラッシュアップすることを重視しています。自治体やDMOと連携しながら、実際の送客まで実現しているケースもあります。さらに、観光庁の「サステナブル旅アワード」事務局を務めており、持続可能な観光の実践にも取り組んでいます。

-ツーリズム総合研究所として、今後どんな活動を計画していますか。

石原 まずは会員組織の拡充ですね。アカデミー会員、賛助会員、個人会員の3カテゴリーで構成する会員制度を12月から本格的にスタートします。旅行業界関連団体や企業、ツーリズム業界に関わる個人の方々に広くご参加いただき、業界横断的なネットワークを築いていく計画です。

 また、11月に「ツーリズム・ジャーナル(Tourism Journal)」を創刊しました。創刊号では、観光政策、双方向交流、若者の海外促進、地域共創など、幅広いテーマを取り上げています。ツーリズム業界の指針となるメディアを目指し、今後は月2回の発行を軸に、要人インタビュー、オピニオン、高付加価値旅行の紹介などを展開していきます。さらに、セミナーやシンポジウムも定期開催し、人材育成を強化します。

 そして「クオリティ・ツーリズム研究会」の立ち上げを通じて、高付加価値旅行を推進していきます。

-観光庁への提言は検討されていますか。

石原 はい。やはり総研としては提言活動も必要です。特に、今一番言いたいのは「流されるな」ということ。ポピュリズムに流されず、明確なビジョンを持つべきだと感じています。また、訪日6000万人という目標は良いと思いますが、持続可能な観光を本気で目指すなら、アウトバウンドの拡大にもきちんと予算をつけるべきです。

-最後に、旅行業界関係者へメッセージをお願いします。

石原 ツーリズムは、人々に感動と学びをもたらし、地域を元気にする産業です。だからこそ、今こそ「量から質への転換」と「三位一体の成長戦略」が求められています。

 私たちは「価値あるツーリズムの創造」という理念のもと、業界の皆さんとともに新たな時代を切り拓きたいと考えています。調査や研究で終わらせず、実際の送客と成果創出まで伴走する。それが私たちのコミットメントです。日本のツーリズムをもっと面白くするために、一緒に歩んでいきましょう。

-ありがとうございました。