日本なぜ重要視?スペイン政観ルイス新支局長が語る日本市場での戦略

  • 2025年11月5日

 9月1日付で駐日スペイン大使館観光部参事官兼スペイン政府観光局日本支局長にエンリケ・ルイス氏が着任した。ベルリン、ブラジル、シンガポール、ロンドンを経て東京が5つ目の赴任地となる。スペイン政府が掲げる「観光戦略2030」に基づき、日本市場をどう位置づけ、どのような戦略を描くのか。ルイス氏に今後の方針を聞いた。

エンリケ・ルイス氏
-まず、日本支局長としての着任にあたり、日本市場で最優先に取り組みたいことを教えてください。

エンリケ・ルイス氏(以下敬称略) 日本に着任できて大変うれしく思っております。日本は文化へのリスペクトが深く、旅行者として非常に高い評価を受けている市場です。スペインにとっても日本は重要なマーケットであり、私の任期中の最優先課題は、パンデミック前の水準に観光需要を戻すことです。

-具体的な数値目標はありますか。

ルイス 2019年にスペインを訪れた日本人観光客は約68万人でした。昨年(2024年)は41万人と、回復率は約6割です。2025年は44万3000人、前年から約8%増を目標にしています。消費額についても6%の増加を見込み、観光客数と支出額の両面で回復を図ります。最終的には任期の5年以内に2019年レベルに戻したいと考えています。

-スペインでは「観光戦略2030」を掲げていますが、その中で日本市場はどのように位置づけられているのでしょうか。

ルイス この戦略では「サステナブルツーリズム」を中核に据えています。特に課題となっているのがオーバーツーリズムです。観光客が夏季や特定都市に集中しているため、訪問地域の分散化を進めています。その中で、日本市場は非常に特別な位置づけにあります。

 日本人観光客はスペインにとってオフシーズンに訪れてくださることが多く、世界遺産や文化、ガストロノミーといったテーマへの関心が非常に高いのです。さらに、1人あたりの1日の消費額が他国の観光客に比べて格段に高く、経済的な貢献度も大きい。こうした特性から、日本市場は持続可能な観光の実現において理想的な存在であり、2030年戦略の推進に欠かせない重要なパートナーだと考えています。

-オーバーツーリズムについてはスペイン国内の観光集中に対する住民の抗議が報じられています。現状はいかがでしょうか。

ルイス 確かに夏季にバルセロナやマジョルカなどでデモが見られましたが、原因は住宅価格の上昇による住民の不安であり、観光客への敵意ではありません。デモは比較的平和的で、旅行者に大きな影響はありません。政府としても住民の声を踏まえ、オーバーツーリズム対策を政策に盛り込んでいます。