星野リゾートが26年続々開業、「界」草津・宮島・蔵王、「OMO」横浜馬車道・横浜、奈良監獄も
OMO7横浜の1階OMOベース。旧市会棟本会議場にあった円形照明の要素を取り入れた
星野リゾートは2026年、7施設を新たに開業する。1月15日に「OMO5横浜馬車道」、4月21日に「OMO7横浜」、4月27日に国の重要文化財である旧奈良監獄を活用した「奈良監獄ミュージアム」を開業。6月をめどに宿泊施設「星のや 奈良監獄」もオープンする。6月7日には「界 草津」が開業する。
加えて夏には広島県初進出の「界 宮島」、秋には山形県に初進出し「界 蔵王」を開業する予定だ。
新規ホテルのうち「OMO5横浜馬車道」は、JR関内駅前の、村野藤吾氏設計の「旧横浜市庁舎」跡地にできる「BASEGATE横浜関内」内に位置。市庁舎時代のデザインを継承・再構築したデザインとし、OMOとしては初めてベーカリーを開業する。
旧奈良監獄表門
旧奈良監獄については「美しき監獄からの問いかけ」をコンセプトにしたミュージアムを開業。当時の状態を残した保存エリアと展示棟に加え、カフェやショップなどを併設する。10月22日に開催したオンラインプレス発表会で、代表の星野佳路氏は「国の重要文化財を税金ではなく、観光の収益で維持できないかという新しい取り組み」と意気込みを示した。
コンセプトについては、監獄の様子をただ紹介するだけでは物足りないという考えから内容をブラッシュアップして決定。星野氏が監獄での生活を学んだ際、仕事や日常生活のルーティーンを考えたときに「だんだん自分に本当の自由はあるんだろうかと思い始めた」といい、「来た人にも自分の生活の自由がどういうバランスであるべきなのか」を考えるきっかけを提供したいとした。
界 蔵王のルーフトップテラス(イメージ)
「界」ブランドのうち「界 草津」で草津温泉街に直結する宿泊者専用のトンネルを設置。連泊需要を考慮し、2泊目以降は宿泊料金を1泊目の約半額にしたほか、1泊目のみ夕食・朝食が付くプランなど、さまざまなプランを用意した。加えて敷地内に「蕎麦割烹SAI」も開業する。
この度初めて「界」ブランドでの進出が明らかになった「界 蔵王」では、蔵王のシンボル火口湖「御釜」から着想を得た、360度パノラマのルーフトップテラスを設置することを発表。客室数は全49室で、温泉の濃度が異なる3種類の湯船を用意する。
インバウンドは4000万人台で頭打ち?満足度の向上が重要
星野氏
プレス発表会では星野氏が日経平均株価が上昇するなか、現在の経済環境について「かつて体験したことのあるバブルなのでは」と言及。今後多くの施設の開業を控えることについて「『お前が一番バブルじゃないか』と感じることもある」としつつ「なぜ我々が開業を続けているかといえば、所有と開発を離れ、運営特化戦略で成長してきており、リスクを大幅に軽減しているため」と改めて自社戦略を示した。
加えて「運営が順調に利益を生み出すと、星野リゾート・リート投資法人のような長期投資家に買い取ってもらい、長期的な戦略で投資家と一緒に目標を統一して歩めている」と振り返り、「バブルかもしれないし、そうではないかもしれないが、リスクを最小限にしながらこの波を乗り切っていくことが大事」と訴えた。
また、インバウンドについては成長スピードが鈍化していることを指摘し「どこかで(伸びが)平らになっていくだろう」と予測。2025年の訪日外国人については4200万人から4300万人で収束する見通しを示した。同氏は「国は6000万人を目指しているが、感覚では4000万前後になるのでは。同じ島国のイギリスも大体その位」とし、インバウンドをブームで終わらせるのではなく、どうやって数字を維持していくのかを検討していく必要があるとした。
そのうえで、需要が落ち始める要因は顧客満足度の低下にあると指摘。「落ち始めるきっかけは大体、顧客満足度の低下なんです。満足度が下がると3~5年後に実数が落ち、落ち始めると止めるのは大変」と話し、空港の混雑、宿泊税の上昇などインバウンドの成長に水を差す要因があるなか、「インバウンドの満足度を一旦確保できる状態にしてから、次の高みを目指し、持続可能にしていかなければならない」と話した。