ゴルフとリトリートを融合し“社交と共感の場”へ ― PGMホテルリゾート沖縄 荒井達也総支配人が語るビジョンと旅行会社への期待
荒井 旅行会社の皆さんには、当ホテルとPGM及びアコーディア・ゴルフが沖縄で展開する5つのゴルフ場を組み合わせた、付加価値の高い商品造成にぜひ取り組んでいただきたいと考えています。宿泊人数とゴルフプレー人数が一致しないケースなど、OTAでは対応が難しい領域こそ、旅行会社の専門性が活きる場面です。
加えて、旅行会社には“ラグジュアリコンシェルジュ”的な役割を担っていただきたいと思っています。リトリートやウェルビーイング体験を組み込んだ高付加価値のパッケージ、インセンティブ旅行での活用など、単なる宿泊販売にとどまらない、企画力と提案力が求められる時代です。当ホテルは、そうした提案を実現できる舞台を整えていますので、積極的に提案をしていただければと思います。
販売チャネルとしては、自社公式サイトを基軸にしつつ、旅行会社経由で全体の2割程度を確保したいと考えています。現実的にはOTAの比率が高くなるとは思いますが、そこに依存するだけでは差別化は難しい。旅行会社には“一気通貫の手配”と“付加価値のある提案”によって、独自の存在感を発揮していただきたいと思っております。
例えば、1室2名の宿泊に2ラウンドのゴルフ、夕食、空港送迎を組み合わせたパッケージ。ゴルフをされない同行者にはスパやウェルネスプログラムを組み込む。こうした複合的な商品造成は、OTAでは対応しきれない部分であり、旅行会社ならではの強みです。インセンティブ旅行やMICEにおいても、会議後にナイトゴルフやサウナを楽しむなど、非日常体験を組み込むことで、他にはない魅力を提供できると考えています。
シャンデリアバー
荒井 人財こそ、ホテルにとって最大の資産だと考えています。今回の開業にあたり、現時点で約200名全員と直接面接を行いました。中には、73歳のバーテンダーや72歳のバリスタもいますが、年齢が高いから多様性と言っているわけではありません。彼らはそれぞれ、自分のバーや会社を立ち上げ、定年後はカフェや焙煎所の運営など、人生の中で“やりたいこと”を実現してきた方々です。そのうえで、『最後にやり残したリゾートバイトを経験したい』という想いをもって、本土から沖縄へ移住し、新たな挑戦として当ホテルに加わってくれました。こうした背景を持つスタッフがいることで、チームに奥行きと深みが生まれます。単なる人員ではなく、それぞれの人生がホテルの空気を豊かにしてくれる。それが、私の人財に対する向き合い方です。
また、私は「離職率ゼロ」を目標に掲げています。ホテル業界では効率化やDXが注目されがちですが、本質的に求められているのは“人による差別化”だと考えています。バトラーをはじめとする、人ならではのサービスを通じて、情緒的な価値を提供することが、これからのホテルの競争力につながるはずです。従業員が満たされてこそ、お客様を満たすことができる。そうした考えのもと、現在はクロスメンター制度の導入を準備しています。部署の垣根を越えて相談できる環境や、横のつながりを育むことで、働く人の安心感や連帯感を高めていきたいと思っています。
私にとってスタッフは“選べる家族”。条件で集めたわけではなく、人のご縁で自ら選んで集まってくれました。互いを思いやり、支え合う風土を育むことで、働き続けたいと思える理由が生まれます。その積み重ねが、サービスの質を高める原動力になる。そうした人間関係の豊かさこそが、私の持つ人財観です。
荒井 ホテルやゴルフ場を、単なる宿泊・プレーの場にとどまらず、「社交の場」として機能させていきたいと考えています。まるでアイリッシュパブのように、お客様同士が自然に交流し、心地よくつながることのできる空間を育んでいきたいと思います。また、効率性と情緒的価値の両立という課題にも積極的に取り組みながら、日本を代表するラグジュアリゴルフリゾートとして進化し続けていきたいと考えております。
荒井 旅行会社の皆さんには、富裕層やリピーターのお客様に向けた“体験価値”の提案を、ぜひ強化していただきたいと思っています。価格だけで勝負する時代はとっくに終わり、これからは「何を感じられるか」「どんな時間を過ごせるか」が選ばれる理由になります。当ホテルは、その舞台を用意しています。ゴルフツーリズムの新しい可能性をともに切り拓き、日本を代表するリゾートを築いていきましょう。
また、ゼロからこの規模のホテルを構想し、準備段階から携われる機会は、そう多くはありません。私はこのチャンスを“責任ある光栄”と捉え、揺るがない姿勢でホテル運営に臨むとともに、日本を代表するラグジュアリゴルフリゾートの実現に向けて、覚悟を持って挑み続けます。

